夏休み明けの9月初めにH市のN先生から「三単現」の指導についてのメールをいただきました。要約すると,次のような内容でした。 私は小規模校に勤務しています。1人で3学年を受け持ち,すでに4年が経ちました。各学年とも目玉となる文法事項の指導は大変なのですが,とりわけ1年生の三単現の指導には骨が折れます。今年もまたその時期がやってまいりました(NEW CROWNでは,Book 1のLesson 6 Assistance Dogsで三単現を学習します)。三単現の指導について,毎年悩むのですが,何かよい指導法はないものでしょうか。もちろん,Teacher’s Manualはよく読んでいます。しかし,とにかくなかなか定着しなくて困っています。 そこで,小生は次のような返事のメールを送りました。 確かに,三単現は日本人学習者には定着しにくい文法ですね。高2の生徒に英作文を教えたとき,三単現のsをおとす生徒が多いことに驚いた経験があります。こちらから指摘すれば,生徒たちはすぐ「ああ,そうだった」と言うのですが,それまでは気がついていません。三単現がしっかりと身についていないのですね。もっとも,「日常会話で三単現のsをおとしても,実際のコミュニケーションは成り立つので,それほど神経質になって教え込むこともない」という意見も一方ではありますが,まあ,それはさておき,私も苦労して三単現を教えた経験がありますので,その経験をもとに話してみましょう。 私は,三単現のsについては,パターンプラクティス的な練習を何回も繰り返し行うことで,定着を図りました。そして,「ほぼ定着したな」と思ったときに,改めて三単現のルールを日本語できちんと教えます。すると,生徒もすんなりとルールになじみます。三単現のルールをはじめに説明するよりも,とにかく三単現のsが使われている英文を何度も聞かせたり,発話させたりして,覚えさせることが先決だと思っています。 具体的には,次のように指導してみてはいかがでしょうか。 I like music.
この練習は40人学級でも15分もあればできます。 そして,先ほど練習した3文を基本にし,次のような練習に発展させます。
以上の過程では,とにかく口を動かし,大きな声で発音するように指導します。私は,三単現についての板書をノートに写させることは一切しませんでした。ただひたすら発話をするだけです。そして,このようなパターンプラクティスにも似た方法で,本文にある三単現の文もすべて言えるようにしてしまうのが,私のやり方のいわば「ミソ」です。そのあとに教科書を開かせ,本文に入るわけですが,ここまでで約30分が経っています。しかし,本文の大部分が発話できるようになっているので,あとの20分で十分本文を定着させることができます。 もちろん,題材内容も重要です。問題は,その説明をどこでどのようにするかですが,私の場合は,生徒を飽きさせないために,発話練習の途中で「介助犬」の話をはさみます。この段階では日本語で説明した方が,生徒は正確に理解すると思います。 とにかく,三単現は日本語にない文法なので,生徒は戸惑いがちです。しかし,密度の濃い練習を,あせらずじっくりと重ねることで,だんだんと身についていくと思います。頑張ってください。 このようにメールでお答えしたところ,さらにN先生から折り返しメールが入りました。来月は,その内容について書こうと思っています。楽しみにしていてください。 後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。 ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。 メールの場合は「問い合わせフォーム」へ |
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