フーンコラム 第26回 後関正明

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再び パターン・プラクティスは必要ですか

 

 昨年12月のこのコラムに「パターン・プラクティスは必要ですか」のタイトルでM先生とのQ and Aを載せたところ,数人の先生から同じような質問を頂きました。
 要約すると(1)パターン・プラクティスにはどうしてもなじめない。(2)1年生ならついてくるが,2年生の後半から飽きてくる。(3)3年生のパターン・プラクティスは1年生に比べるとやりにくい,どうしたらよいか,などです。

 そこで今月はそれらのご質問にお答えしながら「パターン・プラクティス」の効用について考えてみたいと思います。

 まず,(1)の質問に関してですが,その先生にお聞きしたところ,先生が中学生の時にパターン・プラクティス的な授業は受けなかったとのこと。さらに聞いてみると,グループ学習やペアワーク,ゲームなどもよくやった記憶があると言っていました。大学の教職課程では英語科教育法でパターン・プラクティス的なことは教わらなかったそうです。

●コメント
 私はよくパターン・プラクティスを授業に取り入れて,かなり念入りに授業の重要な要素として扱いました。生徒たちも1時間の授業が終わると「フーッ」と大きく息をしていました。疲れはしましたが,やはり大きな声を出して文型練習をしたり,お互いに発話したりして何かを身につけたと実感していたようでした。私も,授業の中でどうしても覚えて身につけなければならないものは,徹底的に「これでもか!」というほどしつっこくやらせました。もうこうなると「練習」ではなく「訓練」といったほうが適切かもしれません。このことは,私が中学生の時に受けた授業と大いに関係があるし,また教職課程の英語科教育法で習った指導法に負うところが極めて大きいと思っています。当時,私はパーマーのオーラルメソッド理論を原書で読み,それを徹底的に叩き込まれました。それが,(全てではありませんが)多くの点で,私の授業の基本になっているわけです。「そのやり方は古い」と言う意見もありますが,オーラルメソッドはいわゆる「不易流行」の「不易」の部分だと私は思っています。その「不易」の部分に「流行」を加味し,さらに教える先生の個性を植え付けていけばいいのではないかと思うのですが,どうでしょう。(オーラルメソッドは現在でも大切な理論であると荒木秀二氏はその著「中学校若手英語教師の指導テキスト」(明治図書)の中で述べておられます。)もう一つ大切な理論がフリーズのオーラル・アプローチ理論でパターン・プラクティス活動の拠りどころといえるものです。これらの理論を根拠に先生方が自分の考え方を加味したり,ほかの先生方の指導法を応用してみたりしながら自分の授業を創っていくことが大切なのです。

 次に,(2)と(3)の質問ですが,これらの質問は,2年の後半から3年にかけてのパターン・プラクティス活動は生徒を飽きさせるがどうしたらいいか,ということです。よく聞いてみると,この先生方は3年生にはパターン・プラクティスをほとんどやらずに授業をしているとのことでした。フラッシュカードやピクチャーカードを使って,基本文の導入をするそうですが,すぐに本文の説明に入ってしまうのです。よくあることですが,その間,生徒たちは発話する時間がほとんどない状態です。その後のグループ活動やペアワークに時間をかけても,基本がしっかり身についていなければ,効果は上がりません。生徒を飽きさせない工夫をいろいろとされているようですが,いまいち生徒がのってこないというわけです。

●コメント
 3年生といえども,2年生はもちろんパターン・プラクティス活動の基本は1年生のやり方と同じです。ただ,3年生ともなれば精神的にも身体的にも発達が著しいので,その点は教える側で考慮する必要があります。質問にもあったように3年生に「ばかばかしい」と思わせるような活動をしなければいいわけです。しかし,パターン・プラクティスというのは,もともと「口頭練習」のための指導技術ですから,何も工夫がなければ生徒にとっては「無味乾燥」な活動になってしまいます。

 例をNEW CROWN BOOK 3,LESSON 7「A Vulture and a Child」Section 2からとりましょう。

 ここはいわゆる「間接疑問」を教えるところです。基本文はI know why she is there.です。Why is she there? とI know why she is there.を対比させながら教える前に私はこの2文をまず覚えさせます。理屈の前に覚えこませるところが私のやり方です。

 次に82ページの「文法のまとめ」LESSON 7・2の例文を使いながらこれも覚えさせます。それから既習のwhy,what,who,when,where,howなどを使い,いろいろな間接疑問の形を提示し,口頭練習をさせます。その時に使う例文は生徒が興味を持ちそうなものを考えます。一例をあげると,本物まがいのゴムでできた「蛙」を手の中に隠し,I know what this is. Do you know what this is? --- Yes, it’s a frog. やI know why *Ms Sato went to Ginza yesterday.などを使います。(*佐藤先生は生徒の間で人気の先生)

 私は題材も考え,たまたまケニアに行った社会科の先生から現地の写真を借りて,それを生徒に見せながら,間接疑問を含む文を暗誦させました。その他,新聞,雑誌等を利用してもいいし,また,生徒に資料として集めさせると,興味を持っていろいろな記事や写真,または品物を持ってきてくれます。

 このようにいろいろと工夫をして生徒の興味・関心をひきつけることによってパターン・プラクティスも(いつもとは限りませんが)割合,新鮮な活動にもっていくことができるのです。英語の授業は,「アイデア勝負」とさえ言えるかもしれません。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生

東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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