フーンコラム 第26回 後関正明

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パターン・プラクティスは必要ですか

M先生: パターン・プラクティスはどうしても必要でしょうか。
 
私: M先生はどう思われますか?パターン・プラクティスは「必要ない」と考えていらっしゃる?
 
M先生: いいえ,必要ないとは思っていません。しかし,どうもその作業は単調で生徒があきてしまうのです。私は,それよりもペアワークとかグループ活動をさせながら授業を進めていった方がいいと思っています。
 
私: 結論から言いますと,私は,パターン・プラクティスは絶対に必要だと思います。
M先生: どうしてですか。
 
私: パターン・プラクティスはいわゆる「文型練習」ですよね。英語は我々が日常使っている日本語とはまるで異なった言語体系である以上,文型とか発音などの基礎・基本はきちんと学んで身に付ける必要があります。そこで「文型練習」ですが,これを単なる機械的な「おうむ返し」の練習だと決めてかかるから無味乾燥なものになるし,生徒もあきてしまうのです。
 
M先生: では,どう考えればいいのですか。
 
私: そうですね。もともとこのパターン・プラクティスという活動は,本来オーラル・アプローチの考え方に基くもので,主に口頭練習のための指導技術なのです。ですから,授業の構築の面から考えると,導入部でのオーラル・イントロダクションと授業の中核をなす展開部での生徒対生徒のインタラクションへの橋渡しの役目をする活動と考えたらいいでしょう。そう考えると,この活動は導入の一部かもしれないし,また展開の一部と言えなくもないと思います。
 
M先生: うーん,そう考えるとそのパターン・プラクティスは重要な指導のひとこまと言えますし,とても大切な活動になりますね。
 
私: そうです。だからできるだけ機械的にならない方法をいろいろ工夫する必要があるのです。ともすると,このパターン・プラクティスは「ひと昔前の古いやり方」と言って関心を持たない先生が少なからずいます。研究授業など拝見すると,ペアワークやグループ活動ばかりに重点をおいて,(もちろんこれらの活動も大切なのですが,)授業の華々しさばかりが目立ってしまい,何がこの授業の焦点なのかがぼやけてしまいがちになることがよく見受けられます。ある研究授業のあと,生徒に「今日はどんな英文を覚えたの?」と聞いてみたことがありますが,その生徒は「何だっけなあ…」と考えてしまっていたこともありました。
 
M先生: 先生のおっしゃる意図はよく分かりました。では,具体的にどんなパターン・プラクティスがいいでしょうか。
 
私:

そうですね。例をニュークラウン1年・LESSON 8から取ってみましょう。ここは「進行形」がターゲット・センテンスのレッスンで,POINTの英文は,“She is working now.”です。私の目標はこの英文をクラス全員が「言えて」「意味がわかって」「書ける」ことです。しかも「この1時間内」にです。そして最終的にはクラスのどの生徒もこの文を「暗誦」できるように指導します。「この時間内」というのがミソです。そのために,私はこの文をコーラスでリピートさせたり,列ごとに前から後ろから,右から左から,あるいは斜めに言わせたり,とにかく個人,全員を織り交ぜて何十回と繰り返すわけです。これだけやっても5分とかかりません。
さらに,私が実際に動作をして,例えば“standing”“walking”“running”“speaking English”“sitting”“carrying the box”など,未習語もおりまぜながら,繰り返させます。

私: (椅子の上に立ちながら) I am standing on the chair.
生徒: (コーラスで) You are standing on the chair.
私: (大げさに走っている動作をしながら) I am running in the classroom.
生徒: (コーラスで) You are running in the classroom.
鈴木君: I am speaking English. (鈴木君が前に出て言います。)
生徒: (コーラスで) Mr Suzuki is speaking English. [He is speaking English.]
佐藤さん: I am carrying the box. (佐藤さんが前に出て動作をします。)
生徒: (コーラスで) Ms Sato is carrying the box. [She is carrying the box.]

コツは,このように変化をつけて活動させることです。この練習に慣れてくると,大変リズミカルにトントン進みます。ここでも,コーラスで言わせたり,列ごとに言わせたり,個人で言わせたりと,バラエティに富んだ指示を矢継ぎ早に出します。意味も分からずにただ繰り返している生徒もいるので,時には「どんな意味?」と尋ねることも必要ですね。また,実際に動作をするほかに“絵”を使ってもいいですね。絵を実際に生徒に描いてもらったりしても面白いです。
 

M先生: 考えればいろいろあるものですね。こういう訓練をしてから,LET’S COMMUNICATE 1に移るとペアワークやグループ活動がスムーズに行くんですね。
 
私: そうですね。やはり基礎・基本である「文型」をがっちりと固めておけば,その後の活動が効果的に行われ,習ったことがさらに身につくわけです。
 
M先生: そう思いどおりにいけばいいのですが…
 
私: 始めはともかく,慣れてくると必ずできます。要するに,これは先生自身の意気込みによるのではないでしょうか。先ほど述べたパターンのほかにも工夫次第で様々な形のものになります。
 
M先生: パターン・プラクティスが大切だということがよく分かりました。またいつかバラエティに富んだ方法を教えてください。有難うございました。
 
私: 応援しています。頑張ってください。
 

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生

東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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