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東京都北区豊島北中学校 インターネットを授業に取り入れる
平成5年当時は、まだ「インターネット」という言葉すら一般に知られていない時代だった。しかも、インターネットに接続するいわゆる「プロバイダー」なるものの存在すら見つけるのが困難な時代でもあった。当時は「パソコン通信」という形での通信するメンバーの限られたネットワークの中だけでのメールのやりとりしかできなかったのである。唯一、国際協力推進協会が運営していた「アピックネット」の存在をパソコン雑誌で知った。アピックネットは登録ユーザーの希望をうけて通信相手を紹介することもおこなっていた。私は「これだ!」と思い、早速入会してイギリスはスコットランドのアバジーン・グラマー・スクール(Aberdeen Grammar School)を交流相手校として紹介してもらった。ここでインターネットをとりいれた交流が始まったのである。 イギリス・スコットランド、アバジーン・グラマー・スクール
メイルにはさらに日本の中学生が驚く内容が書かれてあった。それは、長崎のグラバー邸で有名なグラバー氏がなんとアバジーン出身であるというのである。日本での彼の評価を聞かせてほしいといわれたのである。アバジーンでは、彼の生家を記念館としたいというのである。日本の子どもたちは、早速、グラバー氏について図書室で調べてそれらを英語に翻訳してメールを送った。こうした子どもたちの意欲的で積極的な学習態度は、異文化との直接の対話がなければうまれてこないと感じた。やはり、相手がいて、はじめて真のコミュニケーションを図ろうとする気持ちが湧いてくるのだなということを実感した。 オハイオ州オルムステッド・フォールズ中学校
電子メール以外に、生徒がパソコンのグラフィックソフトを用いて描いた日本文化を伝える絵を交換し合った。「鯉のぼり」、「正月」、「お餅」のことなど日本の伝統的な行事を中心に絵で表現した。それにメッセージをつけて絵はがきを作成しそれらを電子メールで送った。これはデジタルの絵手紙のようなものである。子どもたちは改めて日本文化の良さを再認識する機会を得ると同時にオルムステッド・フォールズ中学校のホームページに子どもたちのそうした作品が掲載されたことで、日本の生徒は大いに喜び、成就感を味わうことができた。 交流を長続きさせる秘訣
またインターネットによるやりとりばかりでなく、ビデオレターも交換した。お互いの生徒が自分の学校の様子をビデオに撮り、それを航空便で送ったのである。グループごとに自己紹介したビデオを送ったところ、オルムステッド・フォールズからは、クラス全員で「Hello!」と彼らの笑顔と元気な声のビデオが届いて日本の中学生はさらに親近感を覚えたのである。 このように、様々な手段を用いて交流に変化を付け、幅の広いものとしてきた。最近では、Bill先生とインターネット電話を使って、国際電話をする実験をおこなった。これは無料で使えるもので、「Fire Talk」というソフトをパソコンにインストールしてマイクを使ってお互いに話をするのである。これならまさに、電話感覚で会話ができるのである。日本とオハイオ州の時差は14時間あるので、あらかじめメールで曜日と時間を決めておいた。次は授業の中で活用してみたい。 オルムステッド・フォールズの生徒たちは、ほとんどの家庭にインターネットが入っているので、各自が家からアクセスして「Fire Talk」で話をすることができるという。後述するメモリアル中学校のJoe先生とも、いずれ近い内にこの「Fire Talk」で音声によるコミュニケーション実験を行う予定である。3分10円の市内電話料金で、国際電話と同じ感覚で使えるのは素晴らしいことである。このソフトは、無料でダウンロードできるもので、利用するに当たっては、パソコンにインストールするときに登録が必要である。これは、メールで登録するのだが、パスワードとニックネームが自動的にメールで送られてくるのでそれを使って利用することができる。生徒のコミュニケーション能力を育てるにはまず、教師が自らが積極的にインターネットを活用してコミュニケーションをとることが必要であろう。 ニュージャージー州メモリアル中学校
また、メモリアル中学校の生徒たちは、英語の俳句をメールで送ってきてくれた。俳句といっても日本のように五七五ではない。いわゆる自由詩のようなものである。ただ、季節を表す単語や表現をとっているところが俳句といえるかもしれない。メモリアル中学校のJoe先生の話では、少ない単語を用いて、自分の見たものや感じたことをどのように表現させることができるか、表現力を高めるのに俳句は絶好の教材であるといっている。メモリアル中学校の生徒の俳句作品は、本校の文化祭の折りに、大きく拡大して廊下に掲示して日本の中学生にも紹介した。 インターネットと子どもたち
こうした意味からもインターネットは英語の授業を活性化させ、生きた英語を学ぶ場を子どもたちに与えてくれる素晴らしい道具となる。また、ネット上のエチケットを身につけさせる機会でもあり、相手の立場を理解し思いやる気持やお互いの文化を尊重する心なども育てる上でも絶好の場となる。このような素晴らしいインターネットという手段を、今後もますます英語の授業の中に取り入れて活用していきたい。 今後の展開
また教科書の題材をきっかけに、豊富なインターネット上の情報を利用して授業を展開することも大いに考えられるだろう。例えば、NEW CROWN 3年生のLesson 6、I Have a Dreamでは、インターネットでキング牧師に関する様々な情報を見つけることができる。(例えば、THE MARTIN LUTHER KING, JR. PAPERS PROJECT STANFORD UNIVERSITY が挙げられる。)教科書の題材を発展させていく調べ学習では、インターネット上の検索機能を大いに利用したい。 インターネットを利用した授業の展開は様々に考えられる。コンピュータの技術的な修得も平行して、フリーソフトやチャット、インターネット国際電話サービスなどを利用しながら、インターネットを意欲的に活用していってもらいたいというのが私の願いである。 (参考HP:豊島北中学校) |
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