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授業通信
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身近な題材を利用して教材に取り入れる工夫

山形県村山市立楯岡中学校
細梅 雅弘

生徒の興味を高める工夫
 生徒が興味を持って教科書教材に取り組むようにするには,どうすればよいのかという課題はいつもつきまとう。わたしは普段から、生徒が自分のものとして考えるにはどうすればよいのか、という視点で教材をみることにしている。そこで視点を異文化理解をふまえた教材分析におき、教科書教材に関連する題材を身近な地域社会から取り上げれば,生徒の授業に対する興味や関心が高まり,取り組む意欲にもつながると考えた。

■ 授業実践例
 NEW CROWN ENGLISH SERIES 3, Lesson 3, “Korea”の題材を通して,地域に見られる身近な題材も加味しながら題材を提示していこうと考えた。

1 題材の目標
(1) 韓国・朝鮮語の文字の由来や文の構造を知り,韓国と日本との文化(衣・食・住)の類似点や相違点について考える。

(2) 隣国文化圏として古くから日本と密接な関係を持つ韓国に興味を持たせ,日本と韓国の異なる文化についての対話を理解し,異なった価値を認め,将来的にも関係を深めたい国のひとつとしての意識を養う。(言語や文化についての知識・理解)

2 言語活動・コミュニケーションの目標
(1) 積極的に友だちから聞き取ろうとする態度を養う。(コミュニケーションへの関心・意欲・態度)

(2) 絵を見ながら,現在完了形の「完了」や「経験」に関する表現を用い,「たった今」「ちょうど」終わったことや、これまでやったことがある事柄について友だちと会話し,友だちと会話したことを整理して書くことができるようにする。(表現の能力)

(3) 教師の口頭導入や本文から,また,友だちとのコミュニケーション活動から,聞き取ったり,読み取ったりすることができるようにする。(理解の能力)

(4) 現在完了形を使用しての完了・経験を表す内容がわかり,コミュニケーション活動で生かすことができるようにする。

3 指導にあたって
 本題材は,日本に一番近い国であり,最近では海外旅行先としても日本からの旅行客が増加している「韓国」が題材になっている。本題材では,主人公の久美が韓国・朝鮮語に興味をもち,文を構成する主語,動詞,目的語という語順が日本語と同じであることに目を向けさせることから始まっている。韓国について本題材では,言葉と生活習慣の類似点と相違点を扱っている。

 言語の観点からは,ハングルを取り上げている。ハングルは、1443年に世宗大王が一般庶民が使用できるような言葉を学者に命じて創作させたものである。本題材でも図で説明されているように,ハングルは子音と母音から成り立っている。

 また生活習慣については、食文化の一部の箸の文化とサジの文化の相似について話題になっている。相違点については,この食文化のみに限定されてあり,さらには,日本文化と韓国文化のつながりや歴史的な問題までには言及していない。

 ここで,この単元の最終の課題を「戦後日本に来て楯岡に住んでいる韓国出身の人が,最初,日本に来たときどんな驚きや喜びを感じたかを読み取ろう」と設定し、教科書の内容をさらに発展させた形式をとった。本市では,隣人が外国の人であるというケースはまれであり,出身の多くはアジア地域の国出身である。たまたま韓国出身の方で,キムチ屋を開いている女性がいたので,生徒の身近な事例として取り上げさせてもらった。もちろん,彼女は地方都市の出身なために,事例が一般的であるかどうか分からないことをあらかじめ生徒に話をした。

 本時は,指導計画のまとめの時間として指導したものである。それゆえ,できる限り英語を使用しての授業となる。

4 本時
(1) ねらい 
 戦後日本に来て楯岡に住んでいる韓国出身の人が感じている日韓文化の違いや驚きを読み取ったり,聞き取ったりする。

(2) 授業のながれ

 (1) 韓国人の友だちを、楯岡で自分の推薦する場所に案内する活動の仕方を知らせる。

 (2) Resource Cardを基に,韓国人と日本人の役で友だちとペアでロールプレイさせる。ここでは、日本人役が自分が気に入っている楯岡の場所を韓国人役の人に案内する、という会話練習を行う。会話をさせる際に,あいさつは韓国語でおこなわせる等既習の韓国語を使用させることで,他の言語についても興味・関心を高めさせるようにした。

For Japanese  1. 出会いのあいさつを英語でしなさい。
 3. I' m fine. の後に,日本に滞在してどのくらいになるのかを How long 〜 ? を用いてたずねなさい。
 5. (来たばかりであることを聞き,)自分が案内する場所を Have you ever been to(visited) 〜 ? を用いてたずねなさい。
 7. Yes. → Let's go to ( 場所 ).
No. → 他の場所をもう一度
For Korean  2. あいさつの後に「こんにちは」を韓国語で言いなさい。
 4. For 1 month. / 1998.
 6. 自分の考えを Yes, I have. / No, I haven't. で答えなさい。
 8. 自分の好みでYes.と答えたら相手と出かけよう。

 (3) セクション3の本文を友だちとペアでイントネーションに気をつけて音読させる。
   内容を復習する前段階として,音読をペアで行わせ,その際,キーワードとなることばを強調させることで,文化の違いを自然に意識させるようにした。

 C セクション3の内容について,日本と韓国の文化の類似点と相似点に関する教師の英問に英語で答えさせ確認させる。
   セクション3の韓国と日本の類似点や相似点について復習することで,韓国と日本との違いについて深く考えさせる糸口とした。

 D 楯岡に住んでいる,ある韓国人が来日したばかりの時に驚いた内容について,グループで読み取らせる。さらに,自分のカードを読み終えたら,他のグループに質問しに行き,さらに違う点を見つけさせる。

カード1
When Korean people take o-furo, there is only a shower at home. So there is no furo-oke. On the other hand, there are a shower and a furo-oke in Japan.
カード2
When Korean people eat dinner, there is only a big dish on the table. But there are many small dishes for the family in Japan.
カード3
When Korean people go shopping, there is no rice ball in Korea. In Japan there are many rice balls at the konbini.


質問事項  GROUP ( )

*友だちに次の文を使って尋ねなさい。
 What are the differences between Korea and Japan?
*次の文を使って,友だちから聞き取った文をまとめてみよう。
 When Korean people ( ),
    〜するとき
 in Korea there is (are)   .
 in Japan there is (are)    .

ここでカードが、生徒の身近に住む韓国出身でキムチ屋をしている店の方にインタビューをした内容であることを理解させた。またこの事例は,韓国の一般的な事例ではないかもしれないことも話した。英語での説明が多かったので,内容は簡単であるが,グループで協力しながら,読み取らせるようにした。また,自分のカードを読み終えた後,他のグループと識別するために3種類のカードを色別にした。

 E クラス全体で,自分が聞き取った内容について正しいかどうかを,表にしてまとめ確認をした。生徒が理解しやすいように,黒板に違いが分かるようにした表を掲示した。

 F 日本と韓国の文化について,英語で書かれてある文章の空所を補充させ,本時のまとめの活動にした。

   Meiling found that ( ) Japanese and Korea ( ) chopsticks, but Korean people usually use ( ) to eat rice. Meiling also understood that in Japan people bring bowls up to their ( ), but this is ( ).
   The woman of Kimuchi shop in Tateoka said, " When Korean people take o-furo, there is only a ( ) at home. So there is no furo-oke. On the other hand, there are a shower and a furo-oke in Japan."
  
"Korea" 授業案

■ コミュニケーション活動を活発にするその他の活動
1 授業を楽しく始めるためのウォーム・アップ活動(Communication Building)
 生徒のコミュニケーションの能力を高めるために,授業の始めにウォーム・アップ活動として Communication Building 活動を設定している。教師自作の B5判程度の簡単な会話を生徒がペアになり,授業の始めの5分から10分程度を次のようなサイクルで実施してきた。なお,この活動は,3年生の1学期で終了した。

COMMUNICATION BUILDING 3 (6)
(あなたこれ好きでしょう?)

  A: Why are you so sleepy?
  B: Because I like to (play TV games) and went to bed about midnight.

  A: You really like (TV games), don't you?
    (あなたは本当にテレビが好きなんですね。)

  B: Yes. I'm crazy about (TV games).
  A: We should play sometime.
  B: O.K.

2 自分の考えや意見をはっきり話をするためのウォーム・アップ活動
 どちらかと言えば,how to say については,生徒も努力をし,教師側としても指導しやすいのであるが,生徒の現状を考えると what to say に課題があるように思う。そこで,先の "Communication Building" で学んだ how to say の部分を生かして,授業の最初に, "One Minute Speech" と称して自分の考えを発表する時間を毎時間確保してきた。発表したことについては,まず,聞き手の生徒に発表者の評価をさせる。その後,質問か感想を英文で1分間ほどで作らせる。次に,そのできた英文を使って質問させ,発表者が質問に対して答えるということを、時間を決めて繰り返させる。その質問や感想を書いた評価カードは応答の後に発表者に届けられる。これをうれしそうに見ている生徒は多い。

3 フリー・トーキング
 "Communication Building" の活動は基本的には1週間単位で実施している。その評価の方法としては,1ヶ月ごとに,Free Talking と称して何分間ペアで会話ができたかで判断している。3年では,かなりの生徒が数分以上,時には10分以上も会話を継続できるようになっている。ただし,内容的なことに関しては,まだまだ不十分であり,会話のつながりに関しては,生徒に教えていく必要がある。 

4 メイキング・ダイアログ
 ダイアログを生徒に作らせるにあたって,これまで2つの方法で取り組んできた。
 (1) 2人の生徒が自由に話したいことを、決まった時間内にフリー・トーキングする。会話を終えた後にコミュニケーションした内容を記録し,ダイアログとして修正しまとめる。
 (2) あらかじめ与えられた絵について,どんなことを話しているかを想像しダイアログを作る。

 特に,(1)の活動については,生徒が語彙を増やしたり,表現を豊かにするためにするだけでなく,聞く力,話す力を総合的に伸ばす上でも有効であると考えた。


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