東京学芸大学附属高等学校 渡辺 聡
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1. 試行テストと比較して
前年度に行われた試行テストと比べると全体的に平易であった。読み上げ速度は試行テストで150〜190WPM、今年度のセンター試験では130〜150WPM。内容も日常的で分かりやすいものとなったため、平均点も試行テストより約6点あがって36.25(50点満点)となった。出題形式、配点はともに試行テストと同じである。
2. 具体的内容分析
<第1問>対話ビジュアル(12点)
2人の対話を聞き、イラスト、数字、語句を選択する
各対話の語数:20〜30語前後
イラストや数字を見ながら放送を聞く。最初のせりふで状況を大まかに把握し、求められる情報を的確に探し出す。キーワードは2番目〜4番目のせりふに出てくる。対話に出てくる語(句)や数字が全て答えになるとは限らないし、言い換えて出てくる表現にも注意が必要である。
<第2問>対話応答補充(14点)
対話を聞き、最後の発言に対する相手の応答を選択する
各対話の語数:20語前後
[問9]
Man: I didn’t see you at the meeting last night.
Woman: Meeting? Oh, I totally forgot about it.
選択肢
@ Oh, I’m so glad you went.
AOh, you never knew about it?
B Well, you didn’t miss much.
CWho canceled the meeting?
相手の言った事への自然な反応を考える。普通の会話はいつも相手への質問で終わる訳ではないように、相手の応答の前の台詞が必ずしも質問形になっていない場合もあることを覚えておく。状況を理解し、積極的なコミュニケーション能力を図る姿勢が求められる。
<第3問A>対話内容Q&A(6点)
対話を聞き、その内容についての質問を読み、答えを選択する
各対話の語数:40〜50語前後
5W1Hで始まる質問の答えを対話から探す。対話を最後まで聞き、状況の変化をきちんととらえる。質問文から事前に登場人物の名前等を頭に入れ、最初のせりふで場面が想像できるようになりたい。〔問14〕のように、busesという1語を聞き逃すと答えがわからない場合もある。
<第3問B>対話ビジュアル(6点)
対話を聞き、その内容からわかることを表の空所に埋める
対話の語数:約150語
聞き得た情報を表に順に当てはめてゆく。選択肢そのままの語が読まれるのでわかりやすいであろう。情報は時間の推移順に出てくるが、最初に出てきた情報が状況により変化する場合もあるので、最後まで聞き通して確認する慎重さが欲しい。
<第4問A>Short Passage 内容Q&A(6点)
Short Passageを聞き、その内容についての質問を読み、答えを選択する
せりふの語数:約90語
質問文から推測した状況をもとに、出てきた情報を一つひとつ積み重ねてゆき、求められる情報の所在を明らかにする。but など論理の展開に重要な鍵となる接続語(句)に注意する。100語弱のまとまった量を、ポイントを絞って聞くことに慣れておきたい。
<第4問B>放送番組内容Q&A(6点)
放送番組を聞き、その内容についての質問を読み、答えを選択する
放送番組の語数:約150語
質問文でどれだけの状況想定ができるかがポイント。あとは話の流れに沿って順に問題にあたってゆく。読み上げ文のthere was not one, but two powerful stormsをA second hurricane〔問24〕と言い換えた表現が理解できるか。1回目と2回目の読み上げの間に約40秒のポーズがあるが、できれば情報が出揃った段階で、各問の答えに目星をつけておきたい。
3. 対応のポイント
[1] 聞く前に状況・場面を想像する
事前に問題指示文、選択肢、イラスト等に目を通しておき、内容を推測しておく。聞く前の精神的なプレッシャーをできるだけ少なくすることも正しい聞き取りへの第1歩である。
[2] 会話特有の表現に慣れる
話の展開がつかめれば自然に聞くことができるが、Sure, but it depends.〔第2問問12〕のような会話特有の表現や、How about one of these?〔第1問問4〕、Where to ?〔第1問問6〕のように、主語や動詞が省略される表現に慣れておくことも必要である。
[3] 対話の展開をつかむ
最後の発言に対する相手の応答を考える場合(第2問)、答えとなる情報はそのまま与えられている訳ではない。それまでの話の流れを理解し、これからどのような展開になるのかを推測する能力が求められる。また、その他の問題でも、途中で展開が変わり、最初に出てきた情報が最後まで同じとは限らない。最後まで慎重に状況を確認したい。
[4] 疑問詞には細心の注意を払う
質問は最初の語が一番大切である。質問が口答でなされる場合(第2問)、質問の最初に出てくる語(be 動詞、DoやDid 等、疑問詞)をきちんと聞き取らなくてはならない。集中力を切らさないことである。
[5] 語句の言い換えに気付く
答えは必ずしもそのまま読まれるとは限らない。the majority が選択肢ではmost〜となる〔第1問問6〕ように、別の表現で言い換える可能性があることも頭に入れておく必要がある。常識や自分の知識を総動員して内容把握に努める
題材は主に、受験生の日常生活で起こり得る事柄である。聞いて理解できなかった場合でも知識を頼りに、耳に残った音や話の雰囲気で推測、判断する力が欲しい。
[6] 全部きちんと聞き取れなくてもよしとする
筆記試験で本文を一字一句完璧に理解する必要がないのはリスニングにおいても当てはまる。理解できなかった箇所はそのまま流し、次の箇所の聞き取りに集中する。心の余裕も必要である。
4. 日頃の学習で大切なこと
[1] 英語の音を聞くことを習慣にする
「継続は力なり」とある通り、1 日5 分間でも英語を聞き続けることが大切である。センター試験ではナチュラルスピードよりも若干遅く話され、英語独特のリエーゾンもあまりない。英語の音やリズムを継続的に耳に入れておけばリスニングの力は確実に向上する。
[2] 聞いた音を真似して声に出す
リスニング力をつけるには、聞いた音を頭の中で論理的に組み立て直す作業が必要である。その訓練のためには、耳に入ってきた音を実際に口にしてみる。最初はただの口真似にしかすぎなくとも、慣れるにしたがって徐々に内容が頭の中に入ってゆくのが実感できるであろう。
[3] 語彙を増やし、読解力をつける
リスニングと読解力とは直接関係がないように思えるかもしれないが、知らない単語は聞き取ることができないし、ある程度の量を聞き取るためには論理の構成をつかむ力が必要とされる。読解力があれば論の展開を推測したりポイントをつかむことも容易になる。
( I 2006年度センター試験の分析と対応)
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