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三省堂高校英語教育 2006年夏号
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センター試験の「分析と対応」

東京学芸大学附属高等学校 渡辺 聡

1 2006年度センター試験の分析と対応

1. 全体的な傾向

 今年のセンター試験にはリスニングが初めて導入されたが、筆記は出題構成・設問数・配点は昨年度と変わらず、影響はなかった。例年通り基本的な問題が多く難問はない。長文問題文の総語数も昨年度とほぼ同じである。全体として昨年度より易化し、平均点は昨年より約10点高くなった。しかし、例年同様、まぎらわしい設問選択肢がいくつかあるので油断は禁物である。

 コミュニケーション能力の問題としては、
第1問A:単語をきちんとしたアクセントで発話する能力
第1問B:会話の中で音声の強弱を判断する能力
第2問B:対話の流れを正確に読み取り、相手の意図している事柄を把握する能力
第5問 :会話の内容からわかる情報を的確に引き出す能力
が例年通り求められている。

 また読解力では、
第3問:文章の構成を論理的に思考する能力
第4問:図表をもとに文章を正確に読み取る能力
第6問:登場人物の心境も考えあわせ、物語の筋や流れを正確に追いながら長文を読み取る能力
が試される。いずれも文章の全体的な流れをつかんだ上で的確な情報を読み取る日頃の学習姿勢が問われる。

 長文問題の第4 問、第5 問、第6 問の総語数は昨年度とほぼ変わりない。素直で読みやすく、難易度はそれほど高くない。

2. 具体的内容分析

<第1問>

形式、配点ともに昨年度と変わらず。

A アクセント(4点)

 文脈の中で単語のアクセントを問う問題。品詞によりアクセントが異なる位置にある単語は出題されなかったが、昨年度は出題されなかった、いわゆるカタカナ英語が復活した。また、今年は全て3音節以上の語が問われている。アクセントのルール(-graph, -al, -logy のアクセントの位置)を知っていれば問題ないが、感覚で答えるのは危険である。

B 文中での単語の強勢(12点)

 会話(100語強)の流れと、前後の発言内容からポイントとなる語を判断する問題。下線部(1)のruined のような新情報を読み取る能力と、下線部(3)のTと前文のEverybody といった対照・対比されている事項を論理的に捉える能力が問われる。

<第2問>

形式、配点ともに昨年度と変わらず。

A 文法、語法、語彙(20点)

 文法、イディオム、構文、語彙能力を判断する問題。動詞の形を問う問題(have +O+過去分詞〔問4〕、allow +O+ to 不定詞〔問8〕)は引き続き出題されている。また、単語自体の定義問題はなくなり、語法やコロケーションの力を併せて要求する問題(come about〔問5〕、would rather〜〔問7〕等)が目立つ。実際のコミュニケーション活動において使われる基本的な慣用表現の知識が問われる。

B 対話文完成(6点)

 対話文を完成させる問題。発話数が4つに増えた。空所の直後のせりふを参考に、どのような意図のせりふかを考える。全体の文脈の流れをしっかりつかんだ上で会話特有の慣用表現(Here you go.〔問1〕、It just slipped my mind.〔問2〕等)も理解しておく必要がある。

C 語句整序(12点)

 各文の中に必ず含まれる文法項目(help +O+動詞の原形〔問1〕、関係代名詞what〔問2〕、are not permitted + to 不定詞〔問3〕)を使って意味の通った文を作る問題。文法とともに、「〜歳以下」〔問3〕といった、日頃普通に使っているフレーズを英語でどう表現するかにも常に関心を払っていたい。

<第3問>

形式、配点ともに昨年度と変わらず。本文の語数は昨年度より約50増加。

A 接続語補充(6点)

 文と文をつなぐ語(句)を選ぶ問題。今年は対比と追加を表す副詞句を埋める問題であった。空所の前後の文脈を把握し、順接や逆接、理由、譲歩、要約等のつながりを正しく理解し、論の展開がどのようになされているのかを正確に読み取る力が問われる。

B 文整序(10点)

 短いパッセージの中で文を適切な順に並べかえる問題。文章全体の流れ、特に空所の前後の文脈を理解してから解くことになる。選択肢の文中の代名詞や指示語(this shyness, this plan〔問2〕)が何を受けているか、接続を表す語句で話がどのように展開されているか(However〔問2〕)、また、冠詞や指示代名詞の使い分け(a more advanced system→The system→ a system like this〔問1〕)に気付くことが大きなポイントとなる。

C 適文補充(18点)

 冒頭に示された文を段落のどちらかの場所に一つずつあてはめる問題。選択肢の文中、及び挿入箇所前後の代名詞や指示語、接続する語(句)に気をつけ、論が正しく展開するよう当てはめてゆく。
[30] There is, however, also some data suggesting that genetics, family income, and even the parents’ level of education may play a part in how likely a child is to suffer from allergies.
のように、長さ、構文、単語レベルともに難易度が高い文を短時間で読み取り、その上この文が本文のどこに入るかも考え合わせなくてはいけない。「単語→文→段落→全体の構成」を捉えるためには、各文を読み取る力と大きな視野で流れを捉える力の両方が必要となる。

<第4問>(35点)

 図表読み取り読解。解答数、配点はともに昨年度と変わらず。本文の語数は昨年度より約50減少。図表を参考に、展開される論から的確な情報を得る力を問う問題。例年通り、3 〜4 項目が比較対照される説明文になっている。図表があるといっても、あくまでも本文を正確に読み取る力が基本となる。計算をして答えを導く問題は出題されていないが、図表読み取りの力は依然要求される。

<第5問>(32点)

 会話文読解。解答数、配点はともに昨年度と変わらず。話者の数は昨年に引き続き4人。

 空所補充〔問A〕は会話表現が入る場所を問う問題。各々のせりふの意図するところは何か(同意・反意、話の転換等)を読み取る。本文を一通り読んでから取り組んだ方がよいだろう。イラストを選ぶ問題〔問B・C〕では本文の途中で選んでしまうことのないように。話の展開次第では、ある一文だけで判断すると誤った答えを導いてしまう可能性も。ひとつひとつの事項を最後まで順を追って確認していく慎重さが要求される。

 内容一致問題〔問D〕では、本文を読み進めながら述べられている内容を正確につかむことが大切である。

<第6問>(45点)

 長文読解。解答数、配点はともに昨年度と変わらず。本文の総語数は昨年度より約30減少。物語文を読んで質問に答える問題〔問A〕と内容一致問題〔問B〕の2 種類。物語ではあるが、回想を含めた場面展開に注意する必要がある。

 登場人物の細かな心情が問われる(直接的には本文には書かれていない)ので、会話や話の展開からより深い読み方ができる力を養っておく必要がある。また、正解の選択肢は本文に載っていない単語(表現)で求められる場合も多いので、基本的な類義語力も必要とされる。

3. 昨年度通りの点

[1] マーク数及び配点
[2] その他第1問から第6問まで形式に大きな変化はない。
 

4. 昨年度と変化のあった点

[1] 語法問題(第2問A)が増加した。

 コミュニケーション能力重視の現れであろうフレーズ、コロケーション関連の知識が要求される問題が増加した(for the sake of〔問2〕、come about〔問5〕、it is convenient〔問6〕、would rather 〜〔問7〕、in the end〔問9〕、as far as〔問10〕等)。日頃から英英辞典を使い、英和や和英辞典ではわかりにくい英語特有のニュアンスの違い、また日本語では区別がなくても英語にはある類義語の違いについては、日頃から注意を払うことが重要である。

[2] 語の定義問題(第2問A)がなくなった。

[3] 対話文完成(第2 問B)の発話数が3 から4 に増加した。

 会話の流れを読み取る力がますます必要とされる。

5. 新傾向の点

行間を読む力を試す問題(第6 問A問2、問4、問5)が増加した。

 本文中で直接的には述べられていない内容、心情を読み取る力が試される。本文中の単語ばかりを追い求めていくだけでは正解にたどり着けない。「なぜそのような行動を取ったのか?」、「その時の心情は?」といった豊かな想像力を培っておく必要がある。

6. 日頃の学習で大切なこと

[1] 語と語のつながり(語法、Collocation)に関心を持つ。

 ある単語を頭に入れる際、その語とつながりがある英語特有の表現も一緒に身につけたい。そのためには英語にたくさん触れ、慣れることである。単語や語法をただ丸暗記するのではなく、易しい物語をたくさん読むもよし、歌や映画等で気に入った台詞を覚えるもよし。ある単語が出てきたら次にどういう語を伴うのか、に気をつける習慣を身に付けておきたい。

[2] ネイティヴの英語を聞き、口にする。

 リスニング試験対策のみならず、アクセント、文強勢、構文(主語と動詞の区切れ等)に注意を払って日頃から英語を聞き、音読をすることが大切である。能動的に音読をするためにはただ音をなぞるだけではく、内容を理解する必要があるし、何回も何回も繰りかえして読み込んでゆけば、なによりも、英語の音に対する興味、関心が必ずや増すはずである。

[3] 論理展開を重視した読解力を養う。

 どんな読み物でも最初に全部通して読み、論の展開がどのようになっているかをまず考える。センター試験では、難しい単語が使われていても、別の箇所で必ずその説明が異なる表現で述べられる。全体の論調を捉えてから各文の読み取りに入りたい。一部にこだわり過ぎて「木を見て森を見ず」にならぬよう大きな視野を養えば、それがより深い内容理解につながる。

[4] 読書を通じて豊かな想像力を育てる。

 物語を読む際に登場人物の心情もあわせて読み取ることを心掛ける。いまさらながら、これは本の本来の読み方、読書の喜びである。“英語長文の受験勉強”という狭い枠ではなく、読書の真の楽しみを享受したい。

7. 最後に

 センター試験は高校で学ぶべき基本的事項が身についているかどうかを試すものである。コミュニケーション能力と正確な読解力。この二つの力を育成することを指導の根底にしっかりと置きさえすれば、"センター試験対策"と特別に意識せずとも、生徒の英語力は確実に向上することになるであろう。

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