三省堂 英語ホーム > 高等学校英語 > 『三省堂高校英語教育』 > 2004年 夏号 授業実践レポート 4(2) | ||||||||||||||||
3. 各レッスンの相乗効果 Les 1 New Friendsは、高校生活のスタートにふさわしい内容である。ペアワークやグループワークを通じて英語による自己紹介は、教室を楽しいコミュニケーションの場にしてくれる。また、教室の後ろに掲示した自己紹介文は、生徒同士の<人の輪>を広げるのに役立った。Les 2 Free Timeは学校生活にも慣れてきた頃、クラスメートとの親睦を深め、円満な人間関係をつくる意味で好個な題材である。生徒を飽きさせないようにするために、ゲーム感覚のインタビュー活動を取り入れると活発な意見交換ができた。Les 3 TV Programsでは、発展的活動として日本で発刊されている英字新聞のテレビ番組を利用して代表生徒にプレゼンテーションさせたが、なかなか好評で、ロング・ホームルームの時間でも継続していた。Les 4 Our Schoolは、自分の学校について英語で説明できるようになることが目標であるが、生徒たちはプレゼンテーション用に作ったSummaryをスピーチ・コンテストやオープンキャンパスの学校紹介で利用していた。Les 5 Weatherは、英語Tと連携してインターネットや英字新聞の天気情報を読み取る練習を実践した。天気に関する基本的な表現を身につけさせれば必要な情報をすぐに検索できるようになり、メディア英語への動機づけになったようである。Les 6 Sportsではいくつかの種目を設定し、生徒の興味・関心の有無によってグループ分けしてから授業を展開すると全体指導の効果が出た。また、野球、バスケット、アイスホッケー、フットボールなどアメリカの代表的なスポーツにも触れ、文化的差異についても討論した。英語Tとの連携では英字新聞のスポーツ欄読解も試みたが、時事英語独自の表現にかなり関心をもったようである。Les 7 Telling the Wayはインフォメーション・ギャップを用いた展開にふさわしいものである。「道案内」することによって、積極的に情報を発信しようとする態度を身につけるだけでなく、STEP英検や模試のリスニング対策にもなった。Listen&Talk2のラジオ番組の英語ニュースを聴くところではメディア英語への意欲が高まり、なかには英語ニュースを聴くことを日課とする生徒もでてきた。Les 8 Kyotoでは2でも言及したように、地元京都における日本文化を再認識させてくれた。英語による日本文化の発信が叫ばれる昨今、発展的学習として各自にテーマを与え、文集にしていこうという取り組みも構想されている。Les 9 Shoppingは日常生活に直結しているせいか、買い物をする場面での決まり文句を整理すれば、スムーズに授業が進んだ。短期留学を経験したある生徒は、テキストに出てくる会話の定型表現が役に立ったと言っていた。Les 10 Restaurantでは、英語圏の丁寧さの概念に戸惑いを感じつつも日本との比較をおこない、異文化理解に努めるだけでなく、料理、飲み物、デザートなどのカタカナ英語を正しい英語で身につけようとする姿勢が見られた。Les 11 Telephone Callは電話口での基本的な表現の習熟に加えて、音声だけを頼りに話し手の発する情報を理解することを目標にしたが、ABのペアをつくり、電話をかける側と受ける側に分かれておこなうROLE PLAYは好評であった。Les 12 Making a Planでは社会生活を営む上でappointmentという行為がコミュニケーションの基礎技術であることを学ぶことができる。Les 13 Foreign Countriesは、「行ってみたい国はどこで、その理由はなぜか」を英語で表現し、外国の文化、習慣などに関する理解を深め、地域研究へアプローチすることによって、「総合的な学習」と隣接できるのが特筆すべき点である。 4. 英語Tとのリンク 英語TとOCTの「相互乗り入れ」で活用したいものを次のようにまとめることができる。文法事項はあまり多くないが、準動詞、アスペクト、関係詞、仮定法など重要項目が取り上げられている。
内容面では次のようにリンクすることができる。
5. おわりに 「英語が使える日本人」の育成には、授業時間の絶対的不足から、可能な限り英語で授業をおこなうことが有益なことは言うまでもないが、ネイティブ教員と文法とコミュニケーションの<交流>についてさらに議論し、ツールとしての英語を生徒に身につけさせるシラバスをデザインすることが必要不可欠である。オールイングリッシュの風潮の中、筆者自身が英語で授業をする場合、つい文法やテキスト内容に関して「一方的な」レクチャーになってしまい、「生徒が主役」ということを忘れてしまうことが多い。生徒と同じ目線で「英語を使ってあるトピックについてキャッチボール」できるようにならなければならないと自戒しつつ、「実践的コミュニケーション」能力を育むメソッドを開発していきたいと思う。
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