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■特集■ 新しい英語教育 慶應義塾大学 はじめに―指導要領の改定を受けて 4技能の関係と実践的コミュニケーション
ここで、4技能とコミュニケーションの関係についての最も一般的な捉え方を図示すれば、次のような関係図がイメージされるのではないだろうか。矢印は、4技能(R=Reading, W=Writing, L=Listening, S=Speaking)がそれぞれ Communication を志向していることを表わす。つまり、このような捉え方においても、「コミュニケーションのための」という発想が全くないということではなく、4技能のそれぞれがコミュニケーションへの志向性を持っていると考えられる。
しかし、ここで少なくとも二つの問題がある。一つは、4技能がそれぞれ独立性を保ち、自律的な領域として捉えられていること、もう一つは、矢印の太さの違いによって示したように、Reading と Writing については、相対的にコミュニケーションへの志向性が希薄であるという点である。ここで図2を参照されたい。 図1との大きな違いは、4技能が関連づけられていること、そしてより重要な点は、Communication が Communicator となっていることである。コミュニケーション活動を行う際に、ともすれば忘れがちになるのは、コミュニケーション活動の主体の存在である。抽象的な概念としてのコミュニケーションではなく、伝えたいという願望を持った「表現者」としての生徒の存在である。これまでの英語教育、とりわけ英文読解を中心とする「英語I」「英語II」においては、学習者が往々にして受信する側に置かれることを、教師の側も生徒の側も当然のこととして受け入れてきた。こうした認識を改め、「表現者」あるいは「発信者」としての生徒の存在を認めることがこれからの英語教育の前提となる。 |
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