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三省堂高校英語教育 2002年秋号
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理想の教科書 『CROWN PLUS English Series Level 3』 

東京大学 山本史郎

[Level 3 の内容]
 では、すでにほぼ完成している Level 3 の内容をご紹介してみよう。
 まず、B5版200ページ強の本には、全体で15のレッスンが含まれている。各レッスンの長さは、だいたい1000〜1200語にそろえてある。そのうち、6つのレッスンは様々の本から採取したもの、残りは著者の一人である Brendan Wilson の書き下ろしとなっている。Level 3 は、文部科学省の指導要領で、英語T、英語Uで扱うことを求められている文法事項をすべてカバーしているが、まず各レッスン冒頭の見開き2ページで、未習のグラマーポイントを、5〜7項目学習する。3ページめから本文が始まり、見開きの左ページに本文が印刷され、右ページには主として、Expressions と、注釈が載せられている。Expressions は学習者に是非使いこなせるようになってほしい表現が挙げられている。また注釈は、固有名詞、高校生レベルでは覚えなくてもよい単語などのほかに、本文を読むにさいして、高校生レベルでは独力で解釈することが困難と思われるセンテンスなどにつけた。

 本文が終わると、内容の理解度をためす Comprehension Check、グラマーポイントを定着させるための Exercises、英語を書かせる Writing Practice、聞き取り練習である Listening Practice と続く。Listening Practice は本文の1部を抜粋したディクテーションや、本文に関連して書かれた英文を聞いて答える練習である。また Writing Practice は、本文の中から、2〜3つのセンテンスで構成される部分を選び出し、それと同じタイプの言い回しや、文章としての論理構成を持っている発展例を3つ練習する。学習者はあらかじめ、本文に出てくるものを暗記しておき、それを思い出しながら、練習問題に取り組むことが期待されている。やや大袈裟に言うなら、この練習は2つの思想に基づいている。その第1は、1つのセンテンスではなく、論理的にまとまった複数のセンテンスを記憶すること、そのリズムを体得することが、英語の真の実力の養成につながるということである。第2に、やみくもに暗記することはどんな語学の習得にも必要不可欠な努力だという考えである。

 Level 3 の内容についての以上の説明からお分かりいただけたことと思うが、CROWN PLUS English Series は、読解、文法、作文、聴解などを総合的に学べるよう構成された教科書である。しかも、文法をはじめとして、作文、聴解についても、読解のテクストから派生しているので、生徒が興味を持続させながら、多面的な能力を自然に身につけることができるように工夫されている。

[考える英語]
 しかしながら、やはり中心となるのは本文である。この本のテクストの特長を一言で言い表すなら、「考える英語」と言ってよいだろう。この場合、「考える英語」という表現には2つの意味が籠められている。

 1つは、単純にそのまま日本語に置き換えてもよく分からず、前後のセンテンスの中でどういう意味になるかを、考えなければならないような部分が含まれているという意味である。英語、日本語などを読んだり聴いたりすることにとどまらず、学問的活動の多くの部分にいたるまで、人間の知的活動はものごとを解釈するということに関わっている。有名な物理学者のファインマンは幼児のころ父親が自分を膝に抱き、大人の百科事典を読んでくれ、それを幼い自分に分かるよう、易しく言い換えてくれたという体験を語りながら、それがもとで、物理的現象を含めて世界の中の森羅万象について、常に解釈しようという自分の心の習慣が育ったと述べている。たとえ数行の英語であれ、表現を論理的に解釈し、前後と一貫する意味を心に作り上げようとする(つまり理解しようとする)活動はきわめて重要である。

 2つめは、内容そのものが知的刺激に満ちているということである。民主主義という思想の礎を築いたジェファソン、アメリカの人種差別の撤廃に功績があったキング牧師といった社会思想的なものから、ゼンメルヴァイスによる細菌の感染防止法の発見、映画の発明など科学史的なもの、地球環境問題、動物と人間における情報伝達、ポンペイの噴火と発掘、小説の1節(『ジキル博士とハイド氏』)など、きわめて幅の広い分野から、特定の思想に偏ることなく選ばれている。著者の1人である Brendan Wilson が半分以上のテキストを書いているが、同氏はオクスフォードの学位を持つ哲学者である。専門の著作のほか、哲学の入門書も出版しており、難しい内容を易しく語る名手である。時に繊細、時に骨太の議論を展開する Wilson の文章は、上に述べたようなまさに2つの意味で「考える英語」そのものであると言えよう。あえて、ここにわたしが夢に思い描いた教科書ができ上がったのだと言いたい。

[考える人間の育成]
 昨今の日本の社会では、あいかわらず政治家の腐敗や傲慢が横行しているばかりか、大企業などのモラルの欠如が大問題になっている。これらを単一の原因に帰することはできないが、まやかしの人物に票を投じたり、危機的な状況でモラルを忘れることは、それぞれの個人がしっかりしていないからだと言うことができよう。複雑になる一方の世界の中で、ものごとを自分で考え、独自に判断できるような、真に世界に通用する人間を作るのが、今日の日本の教育に課せられた大きな課題ではなかろうか。その意味で、特定の立場に基づく内容をおしつけることを厳に慎みながら、考える習慣をつけ、考える材料をあたえることのできる教材を提供することこそが、教科書執筆者の果たさねばならない重大な責務なのである。

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