前回(第87回)のフーンコラム「中学校・新学習指導要領全面実施元年を迎えて」の最後に,次回は「異文化理解にどう取り組むか」について述べると書きました。ですが平成24年度版NEW CROWN に新しく導入されたUSE Read の扱いについての質問が多く寄せられましたので,今回は予定を変更して主に長文読解をターゲットに,USE Read の意図,扱い方の具体例,訳出について述べたいと思います。(「異文化理解」は次回に掲載いたしますのでご了承ください。) 1. USE Read の目的 そこで1年生の後半から3年生の終わりまで,各レッスンのGETの後にUSE Readのパートを2ページないし4ページずつ設け,Reading を主体とした言語活動を通して内容を理解させるようにしました。つまり,ここでは生徒にひたすら「読むこと」に専念させたいのです。USE ReadをGETと同じように扱っていると必ず時間不足になり,学年末になっても教科書が終わらないということにもなりかねません。そうならないためにはReading以外の活動はあえて無視してもいいと思います。とにかく「読むこと」を徹底させたいですね。徹底的に「読む」といってもReadingにはいろいろな活動があります。 2. Readingの扱い方について しかし,入試の長文を読解するときに声に出して読むことはしませんし,新聞を声に出しながら読んだりはしません。「読む」活動は黙読して内容理解することが本来の姿です。そして,USE Readのねらいはこの黙読する力をブラッシュアップしていくことです。指導にあたっては,教科書中のPre-Reading,In-Reading,Post-Readingの指示や問いに答えていけばよいと思いますが,それぞれ位置づけを理解した上で取り組んでください。
それぞれのタスクを下記の点に留意しながら指導されるとよいと思います。
そしてsilent readingがひと区切りついたら次のようなactivityはどうでしょう。 例えば,3人一組になり次のようなactivityが考えられます。(A=英語話者,B=通訳,C=日本語話者と設定) Aが英語を読む(できれば暗唱して教科書を見ないで話す)。 ⇒B がそれを日本語に訳しC に伝える。 ⇒Cは聞いた日本語をもう一度繰り返して確認し,それについての質問文を日本語で作る。 ⇒Bはそれを英語に訳してA に伝える。 ⇒Aは英語で答える。 ⇒Bはさらにそれを日本語に訳してCに伝える。 これはかなり難しいactivity ですが,上位者は何とかやり遂げようとします。私はかつてこれと似たような「通訳ごっこ活動」をしました(フーンコラム第15回参照)。塾などで先回りをしてほとんど学習し終わった生徒たちにとってこの活動は有効です。なぜかと言うと塾ではこういう活動はほとんどしていませんから目新しいのです。しかし上記の例のようにすべてがうまく回転するとは限りませんね。静かに読む雰囲気を作れない教室もあるかと思います。そのときは一文ずつチェーンをつなげるように読ませます。よく聞いていないと隣や前後の生徒がどこまで読んだのか分かりません。集中力が不可欠ですから自然と静かになるわけです。 3. 訳出はどうするか とにかくUSE Read では,一気に読む習慣をつけることも目標の一つとし,多少分からないところがあっても後戻りすることなく先に進んでいくことが大切なのです。ひと言で言うならGETで「精読」,USE Readで「速読」といったところでしょうか。 4. 長文に慣れること 2 → 327語 つまり1420語の英文を50分間で読破し,設問に答えるわけです。(さらに各大問の設問中,英語の指示文などの語数は合計546語もあるのです。)仮に平均的な生徒で1分間に50語読めておよその意味が取れるとしても,1420語を読むには単純計算でも28分かかります。残り22分の試験時間で設問の英語を読んで解答もしなければならないわけですから,やはり受験生にとって長文読解問題は難しいといえるでしょう。 従って,平成24年度版NEW CROWN では,1年の後半から3年の終わりまでUSE Read という新しいページを設け,少しでも「長文」に慣れるように配慮しているわけです。USE Read をはじめ,教科書全体のレッスン構成が一新しましたので内容を再度吟味していただき,授業に臨んでいただければ幸いです。先生方のご健闘をお祈りいたします。 後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。 ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。 メールの場合は「問い合わせフォーム」へ |
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