フーンコラム72回(2009年11月号) 後関正明

接触節の指導

先日,東京都にいらして5年目の若手教員,M先生から次のようなメールをいただきました。

私は,今NEW CROWNで3年生を教えていますが,Lesson 5の“Places to Go, Things to Do”の教え方が難しく,悩みました。特に,Section 3の接触節の指導に悩みました。どうにか説明して切り抜けましたが,生徒たちが,皆,確実に理解していたかどうか自信がもてません。今後も,接触節をどう説明しようかと迷っています。何か効果的な方法があったらご教示ください。

私はさっそく次のようなお返事を差し上げました。

確かに,接触節は,難しい文法項目です。しかし,教師が最初から難しいと思っていると,つい文法の説明ばかりに力が入り過ぎ,コミュニケーション活動などやそのための基礎練習にかける時間が少なくなってしまいます。そうなると,生徒に余計な負担ばかりかけることになりかねないので,気をつけたいところです。

まず,文法の説明に入る前には,社会科の先生から借りてきたアジアの掛け地図(実は,これが他教科の先生とのコミュニケーションを成立させる上で大切なことです)やピクチャーカードを使いながら,内容についてのオーラル・インタラクションなどから入るとよいでしょう。

さて,M先生がおっしゃるように,接触節はLesson 5 Section 3の学習事項ですが,Section 1では,"horses running in races."のような「動詞の-ing形をあとに置いて説明する言い方」,Section 2では,"the wonders created by nature."のような「過去分詞を使って後ろから説明する言い方」を学習しています。そこで,教科書p. 89(付録)にある「説明を加えるときのいろいろな言い方」を活用しながら,英語で,「もの」を説明するときには,「説明を加える文」が「もの」の後ろにも来ることを再確認します。そして,Section 3のポイント文"The place I want to visit is Korea."や,本文中の"So, there are many things I want to do."も,同じような構造(名詞←修飾句)になっていることを説明します。次に,ポイント文"The place I want to visit is Korea."を板書します。The placeはどんなところかというと,「私が訪ねたい」ところです。「私が訪ねたい」という説明の部分が,ひとまとまりでThe placeの後ろにあることに気付かせ,次のような矢印を引きます。

The place I want to visit ….

「私が訪ねたい場所」は「韓国」なので,"is Korea"が続くと,簡単に説明を加えます。

The place I want to visit is Korea.

このような「説明」だけでは不十分ですから,Check Itを使って基礎練習し,練習した文を板書します。

The city I want to visit is Sydney.
The place I want to visit is the Lake District.
The country I want to visit is Mongolia.

さらには,オーラル・インタラクションで使用した「掛け地図」を利用すれば,「訪れたい国や場所」を,アジアのいろいろな国や地域から選んで言わせることができます。これらの文について,クラスの全員がすらすらと言えるように,chorus reading,buzz reading,group reading, pair reading,individual readingと続けて練習します。途中でslow learnerの生徒に意味を言わせるなどして,きちんと理解できているかの確認をして,授業の終わりには,ほぼ全員が板書の文を1つは暗誦し,暗写できるように指導します。しっかりやれば,必ずここまでできるようになります。

ちなみに,私は,「接触節」という文法用語は使いませんでした。私が説明で使った用語はせいぜい「現在分詞」と「過去分詞」くらいのものでしたし,文法をまとめるときにも,難しい文法用語を板書することは避けたほうが賢明でしょう。

繰り返しになりますが,ほかの文法項目と同様に,「接触節」についても,文法の説明はなるべく短く簡単に済ませ,意味内容を確かめながら,暗誦してしまうほど英語の文を何度も言わせることに時間をさくことが大切です。暗写にまでもっていければ,コミュニケーション活動の中でも十分に使えるでしょう。何度も何度も同じパターンの文を聞いて声に出し,書くことで,「理屈」ではなく,まず,「英語そのもの」を通して型を覚えさせ,生徒に自信をつけさせることから始めてみてはいかがでしょうか。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。

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