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       まず,はじめに「PISA型読解力」の源となっている「PISA調査」とは,経済協力開発機構(OECD)によって実施されている国際的な「生徒の学習到達度調査」のことです。2006年度調査には,57か国・地域から約40万人の子ども(15歳)が参加しました。「PISA型読解力」とは,この「PISA調査」のうち,「読解力」分野で調査される力で,「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力」と定義づけられています。さらに,後半部の「書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力」は,次のように言いかえることができるでしょう。 
      
        - テキストに書かれた情報を得るだけではなく,評価したり,また,批評することを前提とした統合的な解釈力
 
        - テキストに基づいて,自分の考えを書いたり,話したりする表現力
 
       
       さて,この「PISA型読解力」をいかに身につけていくかが問題となるわけですが,英語科では,次のような形の力を身につけさせることで実現できるのではないでしょうか。 
      
        - 読みとる力:単語,連語,慣用句を理解し,基本文の構造(基本構文)に慣れ,身につけながら,テキストの内容を読みとる力
 
        - 考える力:基本構文を活用しながら,人物の動き,関係や場面,状況など,内容や題材について考える力
 
        - 表現する力:テキストの登場人物を英語で説明したり,出来事を紹介したり,題材について自分自身の感想を話したり,書いたりして表現する力
 
        - 応用する力:身についた英語の運用能力を具体的な実際場面で活用する力
 
       
       さらに,実際の英語の授業に落としこむと,これらの力を身につけるための指導として,次のようなことが考えられます。 
      
        - 読みとる力
 
          @ 黙読,音読によって,基本文の理解と暗誦をする。 
          A 基本文の理解をもとに,さらに複雑な文を理解する。 
        - 考える力
 
          @ 何のためにテキストを読むのかを考える。 
          A 題材では,何を伝えたいのか,訴えたいのかを考える。 
          B テキストを読んだあとに何を実践すればいいのかを考える。 
        - 表現する力
 
          @ 学習した題材について自分の意見や考えを書く。 
          A ペアやグループで自分の意見や考えを発表したり,話し合ったりする。 
        - 応用する力
 
          @ 学習して身についた表現力を実際場面で応用する。 
          A 応用の結果を評価(教師からの評価,および自己評価)し,次の学習につなげる。 
       
       これらの「観点」をふまえ,教科書の言語材料や題材に応じ,どう料理して授業の流れをつくるかが,我々,英語教師に課せられた命題だと思いますが,こう考えてみますと,従来から我々が実際に取り組んできた英語の授業のあり方と,「PISA型読解力」を取り入れた授業とでは,180度転換した差はないように思えます。これまでの「聞く」「話す」「読む」「書く」という4技能の養成という視点に加え,さらに「考える」「応用する」という視点を意識した授業プロセスを構築してみてはいかがでしょうか。 
       
        
       後関 正明 (ごせき まさあき) 先生 
        東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。 
       
       フ〜ンコラムバックナンバー (第1回〜62回) 
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