フーンコラム 第51回 後関正明

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第51回 英語科と他教科との連携を考えてみましょう

 今月は,都内S区の中高一貫校(私立)で中学校3年生を受けもつT先生より,メールでご質問をいただきました。趣旨は「英語科と他教科との連携」についてでした。すなわち,学習指導の中で,教科書の題材によっては,他教科と連携して教えることで題材についての理解が深まり,さらには英語そのものの理解も平行して深まるのではないかと考えているが,さて具体的にどうするか,どんなことから始めたらいいかということでした。

 確かに,現状は教科書を進めるのに精一杯で,他教科の先生方と連携したいと思っても余裕がなかったり,双方の進度の関係で指導内容が一致しなかったりで,なかなか思い通りにはいかないかもしれません。しかし,たとえば,学年会などで指導内容を示しあったり,また,自校の教育計画の一覧表を見たりして,なるべく共通項を見出すようにすれば,1年間に少なくとも2〜3回は連携できると思います。場合によっては,他教科の時間に英語でやった題材についてちょっとふれてもらうだけでも,生徒にとっては大きな刺激になるでしょう。

 具体的にNEW CROWNを例にとり,私の経験も交えながら,どのような課で連携が図れるかを示してみましょう(スペースの関係で2年生のみにしぼりました)。

@理科的な題材…私が教鞭をとっていたころの版(平成9年度版)の2年生5課にRain Forestsという課がありました。この課は,熱帯雨林をはじめ,地球上の多くの森林が伐採され,それが原因で地球環境はどうなっていくのか,どのような影響があるのかということについて学ぶ課でした(ちなみに文法項目はThere構文でした)。場所はマレーシアのサラワク熱帯雨林です。そこでは大木がむやみに切り倒されたりして森林がどんどん減少しているのですが,最近では,森林伐採により,沿岸の漁業などにも影響が広がったり,また,温室効果ガスによる地球温暖化問題が深刻化したりしています。私がこの課を教えたときは,理科の時間に,東南アジアや南アメリカの熱帯雨林が人類の生活にどのような影響を及ぼしているかということについて科学的に説明してもらいました。そして,地球全体に広がる被害状況にもふれてもらい,英語教科書のわずか3ページの記述をかなり専門的に深めて生徒の興味関心を高めてもらいました。理科の先生のそのような話はたとえ10分間であっても説得力があったようでした。

A社会科的な題材…現行版(平成18年度版)の2年生8課にLandmines and Childrenという課があります。この課は,カンボジアにおける地雷の問題を通じて戦争と平和について考えると同時に,私たち日本人が国際的な援助をするにはどうしたらいいかを考える課です(ちなみにここの文法は「受け身」です)。長く内戦が続いたカンボジアでは,国土のいたるところに地雷が埋められており,今でも死者や負傷者があとを絶ちません。英語の時間では,今述べたことくらいしか説明できません。それ以上に説明が長くなると,まさに社会科の授業になってしまいます。そこで,さらにこの問題の核心にふれるには,社会科の時間に特別に時間を割いてもらい,専門的な見地から10分ほど説明してもらうとよいでしょう。生徒の題材に対する理解が深まると思われます。

B国語科と関連する題材…現行版(平成18年度版)の2年生4課にAinuという課があります。ここでは,失われつつあるアイヌ語と日本語との関係を国語科の立場から国語の先生に少しでも解説してもらうと,アイヌ語についての知識が深まり,ことばの大切さが理解できると思います。確かに,TMをフル活用すればアイヌについてはだいたいの説明はできると思います(たとえば,アイヌの伝統的な踊りや音楽のことや,現在,地名で用いられている市町村の名前(札幌,稚内,千歳など)がアイヌ語に由来していることなどです)。しかしながら,国語を教える先生であれば言語感覚が鋭いと思われるので,特に,結びの英文They think that the life of a people is in its language. When a language disappears, the culture also dies out.では,さらにことばの本質について語ってくれることでしょう。余談になりますが,私も旧版(平成9年度版)でLanguage ─ Life of a Peopleを教えたとき,滅びゆくウェールズ語についての説明をしました。英語とウェールズ語との関係はちょうど日本語とアイヌ語の関係と似ていて,熱っぽく語ったのを覚えています。その課の結びの英文はLanguage is the life of the people who use it.でした。

 以上,各教科との連携について話してきましたが,ここで紹介したもの以外に,題材によっては,美術科や技術家庭科などの教科に共通する題材もあります。しかし,ただ連携といっても簡単にできるものではありません。やはり,普段から他教科の先生方とコミュニケーションを密にしておくことが大切なのではないでしょうか。T先生のご健闘を願っております。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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