フーンコラム 第19回 後関正明

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この優れもの―フラッシュカード再考

 先日,英語教師6年目になるC区のF先生と話す機会がありました。授業は順調にいっているようですが,「全体的に何となくマンネリズムにおちいっているんです」と言って浮かない顔をされていました。そこでいろいろ尋ねてみると,ひとつはフラッシュカード(注)の使い方に少し問題がありそうなことが分かってきました。言うなれば,使い方がありきたりで,そこにマンネリ化の原因がありそうなのです。

F先生 確かに,今までフラッシュカードの使い方が少しずさんでした。もっと考えててきぱきと…
 
そうですね。てきぱきとリズミカルに,と言いたいところですね。ただ,やはり教室の雰囲気とか生徒の表情などを観察しながら臨機応変に使い方を変えていく必要があります。バラエティに富んだ方法を身につけておけば応用範囲も広くなるというものです。
 
F先生 使い方で何か工夫すべきことはありますか。
 

まず確認なのですが,オーソドックスな使い方としては以下のようなものがあげられますよね。

  • カードの反転
  • 白紙のカードをかぶせたり取り除いたりする
  • 1枚終わったら生徒の机上に置いていき,それに当たった生徒はすばやく発音する
  • 生徒に先生役をさせる
  • 書いてある単語と裏の番号を覚えさせ,1ならplay,2ならstudyと言わせたり,書かせたりするなどのゲームをする

工夫のひとつとしては,上記のようなカード練習が終わった後,それを教卓の上に置かないで黒板の端に順序よく貼り付けておいたらどうでしょう。理解がゆっくりな生徒はそれを見て覚え,皆に追いつくことができますから。

また,カードの作り方も工夫次第で面白いものができます。形は一定でも色を変えるとか…。私は遊び心で,わざと小さいカードを紛れ込ませたり,突然,オレンジやブルーのカードを出し,生徒たちをハッとさせたりして,生徒と以下のような対話をしながら,コミュニケーションを図っていきます。

 Oh, this word is orange. Do you like this color, orange? ― Yes, I do.
 Do you like blue? ― No, I don’t.
 What color do you like? ― I like red.

他に,カードの裏面に日本語訳ではなく絵をかくというのもいいですね。絵は生徒が喜んで描きます。絵の下に自分のサインでもさせると大喜びです。「3単現」や「ing形」などを教える時には,マスキング法で一部を隠しておくとか,考えれば実にいろいろあります。

また,読みや発音練習の時に,列ごとに一人ひとり言わせたり,一列一斉に言わせたり,全体のコーラスで言わせたりしますが,最近は,コーラスの声が小さいのが気になりますね。特に,新出語の時は大きな声になるまで何度もやり直しをさせる必要があります。
 

F先生 実にいろいろな工夫のしようがあるのですね。
そうです。せっかく作った作品ですから十分に使いこなさないと損です。使っている間に,反応の早い子,遅い子,注意散漫な子などをよく観察しながら,積極的に生徒が喜んで参加するような雰囲気作りに努力してください。フラッシュカードは小道具としては本当に「優れもの」ですね。パワーポイントなどのいわゆるハイテク機器に比べると,一世代,遅れているように思われがちですが,どうしてどうしてその力健在なりです。
 
F先生 創意工夫というのは意外と足元に転がっているんですね。いろいろと気が付かないところを教えていただき,有難うございました。
 
はい,頑張ってください。

(注)フラッシュカードは上手に使えば,とても効果的な「優れもの」です。フラッシュカード(flash card(和製英語))のflashは「きらめき」「閃光」「ひらめき」「ニュース速報」(news flash)などの意味がありますね。ですから「閃光」のような「一瞬」を捕らえて生徒に見せ,発音させたり,意味を言わせたり,スペリングを言わせたりして生徒の「ひらめき」を引き出すところにその特徴があり,そこがまた板書と違うところなのです。誰が名付け親かは分かりませんが,「フラッシュカード」とはうまい表現ですね。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生

東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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