フーンコラム 第17回 後関正明

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家庭学習はどうしても必要ですか?

 最近,家庭学習についての質問がありました。この家庭学習の問題は古くて新しい問題ですね。特に,週5日制とか週3時間,クラスサイズ,習熟度別などの今日の制度とは切っても切れない関係にあると思うのですが,どうでしょうか。以下,A区立三中のB先生からの質問です。(本人はボヤキだとおっしゃっていますが…)

Q もう1年生も終わりだというのに,このごろ宿題をさっぱりやってこない子が多くなって困っています。2年生になったらどうしようと思うとちょっと。ただでさえ2年生は中だるみの学年で家庭学習だの宿題だのと言ってもやってこない生徒が多いので,来年度のことを考えると憂鬱になります。いっそのこと「宿題なし」そして「家庭学習なし」とすればかえってサッパリするとは思うのですが。
A ウーン。サッパリしたい気持ちも分かるけど,私としては「宿題なし」は問題ありだと思いますね。
Q ええ,私も本音は「宿題あり」「家庭学習必要」派なんですよ。でも理論的に(と言うと大げさですが)筋道立てて説得するのが難しいので,ついつい何となく「大事だからやってきなさい。」などと言うことになってしまうわけです。すると,ひどいときにはクラスの半分以上やってこないで,平気な顔をしています。何か罰を与えようと思ってもいろいろとうるさいし,イライラはつのるばかりです。私のやり方が悪いのでしょうか。
A 悪いわけではないでしょうが,もうちょっと宿題そのものについて考えたほうがいいかもしれませんね。先生方の中には宿題や家庭学習を簡単に考えている方が意外と多いのです。例えば,自分の授業の時間内でできなかった事柄や消化不良だなと思っていることなどを宿題にして,「あとは自分でやりなさい」と言うだけで,生徒に任せてしまうとか。
Q ありますね。でもそういうことでもいいと思うんですけど…。
A ときにはいいかもしれませんが,それが続くと生徒はやってきません。何故かと言うと生徒の大半はやり方が分からないのです。そもそも宿題というのは習ったところを定着させるための具体的な「方策」だと私は思っています。ですから復習が主になりますが,生徒にただ復習をやれとか予習をやって来いと言ってもなかなかできるものではありません。そこで具体的に学習の方法・手立てや目標・目的などを時には微に入り細にわたり説明して,宿題そのものを理解させてから「やってきなさい。」と言うわけです。そうするうちに慣れてくると必ずやってくるし,それが習慣になると今度は「予習」さえもやってくるようになります。
Q なるほど。ただ,私も宿題については,かなり丁寧に説明をしているつもりなのですが,それでもやってこない「つわもの」がいるんです。
A そうとうな猛者ですね。
Q いいえ,見た目はそんな「猛者」じゃないんです。かわいい子なんですよ。(笑)
A それは,宿題の「評価」に関係していると思います。やはり,生徒は自分でやってきたものにはそれなりの正当な「評価」がほしいと思っているんですよ。早い話が先生に褒められたいのです。ですから,そういう猛者がたまたま宿題をやってきたら意識的に褒めて皆に見せるとか,まとめてプリントして発表するとか。あの手この手でやる気を出させ,次の授業や宿題への「動機付け」とするわけです。宿題を含めた家庭学習の苦労に対して「よくやった」と認め,褒めてくれる人,あるいは先生がいなければ「動機」は消滅してしまいます。「動機」が消滅してしまったら誰がなんと言おうと英語嫌いになること必定です。あとは評価に要する時間の問題です。これも工夫次第で生み出せます。ただ最近は3学年にまたがって授業を持っていたり,それに習熟度別とか選択教科の英語を持ったりして超忙しいので,そんなに簡単にうまくいくとは思いませんが。
Q そうですね。ただ,出来ない出来ないと言っていては,らちがあかない感じなので出来るだけ頑張ってやってみます。やっぱり宿題を出したら,必ず「認める」,「褒める」という作業が大切なんですね。改めて言われてみると,私のやり方に手ぬるいところが少しあったように思えます。
A ご理解いただけたでしょうか。
Q はい。また明日から「つわもの」や「猛者」たちとなかよくやっていきます。
A

頑張ってください。そして「これぞ宿題の基本」,または「これぞ家庭学習の真髄」といったものを具体的に作って生徒に与えてみてください。

Q 有難うございました。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生

東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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