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フーンコラム 第13回 後関正明

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押してもだめなら引いてみな!

 4年目の女性の先生と10年目の男性の先生から,期せずして同じような質問が寄せられました。大きな悩みを抱えているようです。

Q今,2年生を3クラスと3年生の選択を2クラス教えています。2年生がひどくて毎日頭が痛いのです。昨日なんかはひどいなんていうもんじゃなかったです。

A…とおっしゃいますと?

Q一言で言うと授業にならないのです。恥をさらすようですが,始めの10分は席につかせるのに使います。言い換えると,全員が教室に入るまでに10分かかるわけです。それから「静かにしなさい」と何度かどなって,教科書,ノート類を机上に置くまでにさらに5分。要するに,喧騒からやっと静かになるまでに実に15分もかかってしまうのです。

Aそれからすぐ授業に入れますか?

Qはい。一応入れますが…。

A何ですか。まだ何か?

Qそうなんです。「そんなこと言われたって,おいらにはわかんねー」と教室のあっちこちから,やじが飛んでくるのです。すると,「そうだ,そうだ。」と同調するものが何人か必ず出てきます。そこでまた闘いが始まります。私は classroom English をできるだけ多く使っていますから,そのために反発がでるのかと思い,一部を日本語で言ってみましたが,やっぱり同じなのです。はっきり言って,英語教育以前の問題だと思われませんか?

Aうーん…。確かに1時間の授業のprocedureをきちんと構築して授業に臨むならば,半分近くは無駄になってしまうわけだから,英語教育以前の問題だと言われても仕方ないとは思いますが…。うーん(我ながらよくうなるなあ。それだけ問題がこの先生にとっては深刻なんだ)。私はね,この問題を2つの面から考えてみようと思います。1つ目は,生徒たちをなんとかして授業という「土俵」の上に乗せて,面白おかしく相撲を取らせることです。そのためには,先生は「呼び出し」と「行司」の役目を果たさなければなりません。「呼び出し」はこの時間の目標をきちんと述べ,「行司」は土俵上の起承転結を頭に入れてシラバスを構築し,状況を見ながらまさに相撲でいう行司の仕事をこなしていくわけですね。ときには行司差し違え(判断ミス)をしてしまうこともあるかもしれませんが…。

Q私は差し違えてばっかり…。だから進退伺いを出さないと…。

Aちょ,ちょっと待ってくださいよ。それは冗談でしょう?

Qいいえ,本気で考えたことも何度かあるんです。

Aでもね,せっかくあの難関を突破して先生になったのだから,そう簡単に辞めないでくださいね。私に言わせれば,悩める先生ほど真剣なのだから…。一旦,迷いが吹っ切れたらすごい力を発揮するものです。ところで,わき道にそれました。先ほど「土俵」の上に乗せて面白おかしく相撲を取らせると言いましたが,要するに,生徒の興味関心を惹きそうな話題を巧みにその日の題材に取り入れて生徒をうならせることがいちばんの薬なのです。

Qそれはわかりますが,具体的におっしゃいますと?

A例えば,2年の7課の“Ainu”では先生の北海道旅行の折に経験したことを織り交ぜて導入を図ればいいでしょう。その際,ありきたりの旅行記じゃだめですね。多少fictionも入れて,「すごかった」「面白かった」「こわかった」「感激した」から「泣いてしまった」「もう死ぬかと思った」などと言いながら生徒たちを引き込んでいくわけです。まあ,このあたりは日本語でもいいでしょうが,できれば英語を交えるといいと思います。とにかく,普段から使える教材を「鵜の目鷹の目」で探すことが必要です。別に「投げ込み教材」ほど大げさに考えなくてもいいのです。これを続けていけば,相手も人間ですから先生の授業や「人となり」を理解し,さらに協力してくれる生徒も少しずつ増えていくはずです。要は時間とノルマに追い立てられて(3時間だから仕方がないでしょうが)窮屈な思いをしながら授業をすると,自分に余裕がなくなり,生徒たちも消化不良をおこしてしまい,だんだん興味を無くしていきます。

Qそうですね。今までは余計なことをやっていると時間が足りなくなって教科書が終わらない…とばかり思っていました。

A「余計なこと」じゃないですよ。その中に生徒の心に残る大切なことが含まれていることがよくあるのです。

Q確かにそれは言えますが,教科書は終わらなくていいのですか?

Aその答えは先ほど述べた2つの面の2つ目になるのですが,先生自身が努力してできるところまでやってみる。それでやってみた結果,そのときは終わらなくてもいいと腹をくくることが必要です。2年の終わりに「比較」や「受身」が出てきますが,前から押せ押せでできなければ3年に持ち越したっていいじゃないですか。私はかつてそういうときがありました。3年になって気持ちも新たになり,授業を進めたことを覚えています。3年生は夏休みに補充授業をしたので遅れを取り戻せましたが…。
 でも,今はいろいろと制約があって思い通りにはいかない面もありますね。
 更に付け加えますとね,生徒たちと授業時以外で仲良くなることです。部活でも委員会活動でもOK。生徒たちの意外な一面が分かり,それが授業に大いに役立つことがあるものです。相手も先生のことが分かるので,授業の時にだんだん妨害しなくなります。

Q積極的に生徒と関ることが大切なんですね。

Aそうです。生徒たちはよく見ています。英語の先生は英語だけ教えていればいいというものではありません。もちろん先生も校内のいろいろな仕事に携わって忙しく教育活動に専念されていると思いますが,あと少し5分でも1分でも時間を割いて生徒たちと関りを持ってほしいと思っています。

Q愚痴を聞いていただいて有難うございました。また,力が湧いてきました。

Aもう,進退伺いなんか…。

Q…出しません。これからも,相談にのってください。

Aはい。いつでもどうぞ。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生

東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

フ〜ンコラム バックナンバー (第1回〜)

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