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まもなく完全実施になる小学校外国語活動をどのように進めていけばよいのか,前回に続き,評価について,渡邉時夫先生にご指導いただきたいと思います。 ※このコラムについてのご意見・ご感想をお受けいたしております。 渡邉時夫 (清泉女学院大学) 1.はじめに前回(第22回)は,学習指導要領と評価の関係についてまとめました。今回は,長野県のある小学校が実施した研究授業を例に取り上げ,単位時間内における評価の実際について述べます。 2.授業の具体(授業の流れと内容)長野県の公立小学校(以下,A校)の「外国語活動」で行われた授業の流れとその内容を下記にまとめます。その前に,A校の状況についてご説明しておきます。 A校は,短大や大学がそれぞれ複数ある大きな都市にある学校のひとつで,市の方針で2年前から高学年は年間35時間を目標に「外国語活動」を実施しています。教材は,『英語ノート』(文部科学省)だけでなく,自主教材も使用しています。 市内にはA校を含め50校以上の小学校がありますが,小学校に配置されたALTは極端に少なく,子どもたちがALTと触れ合う機会は,年間に1〜2度程度だといわれています。市の教育委員会は,市内の英語教育専門の大学教員と正式に協定を結び,組織的に大学教員の指導を受けています。今回の授業も,大学教員の指導の下で実施されたものです。 ■授業の流れとその内容■ (『授業者作成指導案』より) (1) 日時:平成23年1月12日(水) (2) 対象:6年生(35名) (3) 単元:「干支について考えてみよう」 (4) 授業者:担任による単独授業 (5) 本時の主眼:新しい年を迎えたばかりの子どもたちが,英語で十二支の名前に親しみ,干支の由来や干支にまつわる日本人の生活習慣(文化)について考える。 (6) 指導上の留意点(「外国語活動」の目標に照らして): @ listening before speakingの原則―話すことを最初から強要せず,英語のinputを多用し「英語を聞いてわかる」授業を展開する。 A 1. 干支が中国から伝わったこと,2. 中国も現在なお干支が生活に生きていること,3. 十二支の「いのしし」は,中国では「ぶた」であること,などに気づかせる。 B 十二支の絵を用いたゲームを楽しみながらグループ学習を行い,全員がコミュニケーション活動に直接参加することを目指す。 C 自分の干支を意識し,英語のヒントを手がかりに先生の干支を当てる活動を行う。 D 授業全体を通して,「考える力」及び「気づきの力」の育成を図る。 (7) 授業過程の概要(手順や発話など) @ 十二支の順に沿って12の動物の絵を黒板に貼付する(それぞれの絵の下に1,2などの数字を書く。⇒ How many pictures are there? 英語で1〜12を数える。⇒ 次のアクティビティーにつながっていく。) A I say an animal. Please tell me the number of the animal.(cow ⇒ two / snake ⇒ six など,モデルを示す ⇒ 速度を変えるなどして,ゲーム性を高め,何度も繰り返す) B (子どもたちが先生の英語になじんだころに)This time, I say a number and you say the animal, please.(three ⇒ tiger / four ⇒ rabbit など。snake, sheep, boar など耳慣れない動物は,特に何度も取り上げる。) C 4名ずつのグループを9つ作る。各グループに用意した十二支の絵を1組と,12マスを描いた用紙(A3サイズ)1枚を配布する。
D I say an animal. Please choose the animal and put it on the right box. Are you ready? (No. 1, cow ⇒1のマスに「牛」の絵を置く。/ No. 2, dragon ⇒ 「竜」の絵を2のマスに置く。 ※十二支の絵が置き終わるまで繰り返す。) E Now, what is the animal of this year?(ヒントとして,黒板に「2011」と書く ※2011年の干支は「うさぎ」) F 「2011」を中心に,左に「2010」,右に「2012」と書いて,next year, last yearの干支を聞く。 G What is your animal?(子どもたちの干支を聞く。) H Can you guess at my animal?(3ヒントゲームとして,考えさせる。) I This is the last question.(干支の由来を考えさせる。 ※世界地図を用意しておく。) J 中国でも現在,日本同様十二支の習慣があるが,日本と違う点がある,という話をする(「いのしし」ではなく「ぶた」を使っていること,など)。 3.評価の試みについて上記の授業を行ったあとの,教師による自己評価と子どもたちの評価をまとめてみます。 (1) 教員(担任)による自己評価 【注1】 学習指導要領の目標を大切にする。@ 特にわかりやすいinputを多量に,A 言葉や文化の扱いを大切にする,B グループ学習などを活用し,積極性を高め,発話の機会を多くする。 【注2】 評価の標記法を単純化する。(評価基準:◎…満足,○…ほぼ満足,△…改善が必要)
(2) 子どもたちの自己評価 ※ 評価用紙(「振り返り」)を配布し,3つの観点から文章表現と3段階の基準で評価させた。
<実際に子供たちに配布される「振り返り」用紙>
4.評価の効果について教師による自己評価と子どもたちの評価を比較検討すると,授業の質的向上に役立ちそうな面が見えてきます。子どもたちだけに「振り返り」をさせる教員が多いように思いますが,教員も自己評価し,子どもたちの「振り返り」と比較・対照することにより,下記のような効果が得られると思います。 @ 子どもが「だんだんわかってきた」のは,教師が工夫して与えたinputの効果かもしれませんし,A 他面,「わからないときもあった」のは,教師の英語による指示や例のあげ方などが不適切だったためかもしれません。B 自己評価と子どもたちの「振り返り」を継続的に活用すれば,教師の授業力の向上と,子どもたちの自信や満足度を高めることに大いに役立つだろうと思います。 そして,C 子どもたちに与える観点としては,「良かった点はありますか」など,肯定的な表現を使うことが大切です。 なお,D 子どもたちの表現の中に,毎回,「楽しかった」,「勉強になった」などという単純な表現ばかり目立つクラスが少なくありません。惰性に陥らず常に創造性に富み「考える子ども」を育てたいですね。 5.おわりに今回は,単位時間内(あるひとつの授業)の評価について具体的に述べましたが,次回は,学期,または1年を通しての評価の取り組みについて,具体例をあげながら考えてみたいと思います。
次回は,渡邉時夫先生に,学期,または1年を通しての評価の取り組みについて,ご指導いただきたいと思います。 ![]() ![]() |
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