![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||||||||||||||||||||||||||||||||
第18回と第19回の2回にわたり,渡邉時夫先生に,『英語ノート』(文部科学省)と他教材との併用についてまとめていただきます。 ※このコラムについてのご意見・ご感想をお受けいたしております。 渡邉時夫 (清泉女学院大学) 1. はじめに前回(第18回)は,『英語ノート』(文部科学省)を基本とし,さらに深めるために,あるいは中学校の英語科により有効に接続させるために,補助教材として『KIDS CROWN』(三省堂)を紹介し,その音声教材(CD)について述べました。 今回は『KIDS CROWN』を紹介する2回目として,場面を表した掛け図(ウォールチャート:パノラマのイラスト)を取り上げ,英語に親しむ活動について述べたいと思います。 2. 『KIDS CROWN』の掛け図とその活用について (1) 掛け図の工夫 『KIDS CROWN』シリーズの3コース(低学年用 プライマリーコース,中学年用 スタンダードコース,高学年用 アドバンストコース)の指導書すべてに,掛け図とCDがセットされています。掛け図は,各ユニットに配当された語彙や基本表現が提示されている1枚絵で,クイズやゲームといった,楽しく多彩な活動をすることができます。 前回お見せした『KIDS CROWN スタンダードコース』のUnit 5(What do you like?)の掛け図は,スーパーマーケットをコミュニケーションの場面として提示したものです。子どもたちが日常的に触れるたくさんの食べ物が並べてあります。また,河童,白雪姫,金太郎,ドラキュラなど馴染みのあるキャラクターがお客として登場しています。 (2) 掛け図の活用とその指導 そしてTPR(Total Physical Response Approach:全身反応教授法)を活用し,バラエティに富んだゲーム的な活動を取り入れることによって,楽しみながら新しい単語や英文に親しめます。 前回でふれたように,子どもたちは,先生やCDなどの英語を聞いて,(文法ではなく,文脈から)意味を予測し,理解するのが授業の流れになります。たっぷりと英語に慣れ,自分も発話してみたい,という気持ちが高まり,また発話の自信が湧いてきた頃を見計らって,簡単な英語表現を使ってみる,という授業の運びが望ましいと思います。 listen ⇒ think ⇒ understand ⇒ listen ⇒ talk 上図のようなサイクルを通して,英語を楽しみながら「コミュニケーションの素地」を築いていくことができます。 3. 掛け図を用いて英語に親しむ活動の紹介 (1) インプット量を増やすことができる @ まずゲームから入ります(TPR)。右上に6つの品物(fruits and vegetables)が円の中に描かれています。先生が,“I say a word. Please touch the picture.” と英語で指示を出します。(banana, apple, potato など誰もが知っているような品物から入る)。最初は,スピードを遅めに,次第に速度を高めゲーム性を強めます。 A 何回も繰り返したあと,“Now, I say a word. Please tell me the number.” と指示し,cucumber, carrot, banana, watermelon などに対して,子どもたちに,six, one, four, five などと数で答えさせます。たまに意図的に,掛け図に載っていない品物,例えば cherry, cabbage などを混ぜると一層おもしろくなります。 B 子どもたちが,音声に親しみ,発話のreadiness が高まった頃を見計らって,“This time, I say a number and so please tell me the word.” という指示を与えます。“One, three, six, …”などという指示に対し,子どもたちは,“Carrot, apple, cucumber, …” と,反応します。発音についても,じっくり親しんだあとの発話ですので,かなり上手にできることでしょう。 C 続いて掛け図全体に展開するスーパーマーケットの絵をさして,“Please look at the Panorama Picture. I say, “I like cucumbers very much.” Then, you will touch ‘Kappa.’ I say, “I like fish.” You will touch ‘a cat’. と導入すると,子どもたちは,“I like 〜” は,「〜が好きだ」を意味することが推測できます。この活動の過程がいわば最も大切な部分です。 D このへんで,Who am I? のゲームをするのもよいでしょう。先生の英語力もアップしますし,子どもたちが英語に触れ,考える機会ともなります。例えば,“I like rice balls very much. I am a very strong sumo wrestler.” に対して,子どもたちは「金太郎」と答えます。慣れてくると,子どもたちが提案者になって,“I like bananas very much.”(答えは,monkey)などと発問することも期待できるでしょう。 (2) 言語材料をスパイラルに提供している 『KIDS CROWN スタンダードコース』のUnit 5 では,スーパーマーケットを場面としてWhat do you like? を,『KIDS CROWN アドバンストコース』のUnit 3では,スポーツショップを場面としてWhat sports do you like? を再び取り上げています。 (3) 文化を体験的に学べる @ 掛け図を使って,タッチングゲームを行います。競技について,意外に知らないことが多く,このようなアクティビティによって,自然に学ぶことができるでしょう。 A 日本語で,さまざまなスポーツの発祥の地を教えてみましょう(soccer, baseball, rugby, American football, badminton, skiing, soft tennis, etc.)。次回からはスポーツ名から発祥の地を英語で答えさせることができます。 4. おわりに小学校を卒業するまでに,子どもたちは「コミュニケーションの素地」を養わなくてはなりません。「英語を繰り返し聞いて意味を理解」してから「発話する」という手順を踏むことが大切です。そのためには,先生自身が,子どもたちに分かってもらえるように英語を工夫して使うことが必要になってきます。『英語ノート』だけを教材として使っていると,英語使用の工夫は限られてくるかもしれません。『英語ノート』以外にも『KIDS CROWN』のような音声教材や掛け図が充実している教材などを開拓し,それらを有効に活用することによって,子どもたちは英語に対して興味・関心が高まり,中学校へ続く英語教育にも効果が期待できると思います。 次回は,教材選びについて,これまでたくさんの英語活動を経験されている先生にお伺いしたいと思います。 ![]() ![]() |
|