三省堂高校英語教育 2006年夏号
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「『EXCEED English Series I New Edition』理念と改訂のポイント」桜美林大学 森住 衛

はじめに

 EXCEED English Seriesも第二巡目を迎えました。英語T,U, Writing, Reading の4 種類を順次改訂してきていますが、この度、英語Tの改訂新版を上梓する段となりました。この間、EXCEEDに温かいご支援をいただきましたことに、本誌上を借りまして、改めて御礼申し上げます。

 今回の英語Tの改訂のポイントは、@本課やReading の一部差し替え、A Listening の強化、の2点に集約されます。小論では、この2つの趣旨と具体的な内容の紹介をしますが、その前に、EXCEED全体としてどのような理念で編集してきたかを確認させていただきます。すでに4年前の本誌でも述べたことですが、本誌の読者には、今回新しくEXCEED を使用する先生方もいると思われるからです。

EXCEED の理念

 EXCEED English Seriesの編集を手がけたのは1998年でしたが、当初からの編集に臨む基本的な姿勢は「骨太な本物を追求したい」です。骨太の中心に位置するのは、人格形成と恒久平和です。ことばを使えるということも究極的には人格の陶冶です。また、コミュニケーションの最終的な目的は世界の平和です。この理念を教科書に具現するために、まず心がけましたのは、題材をしっかりしたものにすること、言語観や文化観を大切にすることでした。特に、言語観に関しては、英語T だけでなく、英語U やReadingの教科書も冒頭の第1課にことばの社会性にかかわるものを出しています。本改訂版の第1課は、前の版と同じですが、世界のいろいろな言語を紹介しながら、日本でも多言語社会の様相を呈しはじめていることを取り上げています。

 もう1つの特徴は、文法をきちんと身につけさせるための工夫をしたということです。このために、高校では本格的に試みられてこなかった「1 セクション1 文法項目」を徹底しています。これは、学習する側の受け入れやすさ、学びやすさを配慮し、文型や文法を「少しずつ着実に」身につけられるようにしたものです。さらに、新出文法項目には、類似の文法をその前のセクションで復習・確認してから入るようにしています。たとえば、過去完了の導入の課ですと、セクション1・2で現在完了を出し、セクション3から過去完了となります。未来を表す受け身の場合は、前のセクションで普通の受け身形や未来のwill が本文の中で使われているということです。ここまでの工夫はあまり類をみないと自負しています。

改訂のポイント [1] 本課などの新教材

 改訂版の英語Tの本課とReading は以下のようになりました。太字の4つの教材が新しいものです。

第1課 Languages in the World
     日本も多言語社会

第2課 Life in Alaska
     人間も動物も植物も……

第3課 Tsugaru-jamisen and the Yoshida Brothers
     吉田兄弟がめざしているもの

Reading 1 On a Stormy Night
         嵐の夜にヤギとオオカミが同じ小屋に避難した……

第4課 What’s in a Name?
     たかが名前、されど名前

第5課 A Runner against Landmines
     地雷をなくすためにできること

第6課 The Wonders of Saturn’s Rings
     土星の環はどうしてできたのか

第7課 A Bridge between Japan and Laos
     日本とラオスをつなぐ高校生たち

第8課 A Message from Forty Years Ago
     40年前の警鐘をどう受け止めるか

Reading 2 A Service of Love
         愛は惜しみなく与う

 ご覧のように第6 課と第7 課、Reading 1、Reading 2を差し替えました。旧版は、それぞれ「科学の実験」「星の王子様」「赤毛のアン」「運動靴と赤い金魚」からの題材でしたが、アンケート調査によりますと、生徒へのインパクトがもう一つ足りなかったようです。新版では、第6課は、同じく「科学もの」ですが、土星の環の謎に関するものにしました。これまでのEXCEED にはなかった宇宙に関する話題です。第7課は、高校の生徒会が株式会社を設立し、地域や外国と連携を組んでいる高知商業高校に取材したものです。Reading 1は『嵐の夜に』に変えました。ある嵐の夜に山小屋に避難したヤギとオオカミが、暗闇の中で互いに敵とも知らず、友情を感じていくというスリルに満ちた話です。Reading2はO. ヘンリーの短編A Service of Love を取り上げました。若い夫婦が画家と声楽家になるという互いの夢を実現させるために‘white lie’ をつき合うという「純愛もの」です。

改訂のポイント [2] Listening の強化

 もう一つの変更は、本課の間に入れていた4技能の組み合わせの活動を再構築したことです。全体を[For Speaking]と[For Listening]の2つに統合しました。[For Speaking]は従来の[Listen and Speak]です。これはタイトルを変えただけで、内容は変わっていません。[For Listening]は、従来の[Listen and Write]と[Write and Speak]をListening 中心の活動に切り替えたものです。Listening Strategy を取り込んで、Listening のこれまでの手薄な部分を強化しました。形式や内容も、以下のように、大学入試センター試験のListening 試験にも対応できるようにしています。

Listening Strategy 1  絵や図表を見て聞き取る(L.1〜L.6)
Listening Strategy 2  推測しながら聞き取る(L.7〜L.10)
Listening Strategy 3  必要な情報を聞き取る(L.11〜L.18)
Listening Strategy 4  話の展開を聞き取る(L.19〜L.25)

 この改訂は、私たちの事前の調査では大方のみなさんに歓迎されていますが、中には、従来の[Listen and Write]と[Write and Speak]の活動を惜しむ声もありました。たとえば、writing の活動が無くなったのは残念だというご意見です。その通りですが、writing は本課の〈It’s Up to You〉やWriting の教科書の方に委ねましたので、ご了解ください。

おわりに

 その他の改訂として、冒頭のグラビアでは各課の写真を取り込み、そこに本文からの文を1つ引用して掲載しました。たとえば、第1 課はEach language is the heart of its speakers.、第2課は、They(=Eskimos and polar bears) live together in the cycle of life and death. 等です。この部分はEXCEED の題材中心主義の中身を凝縮したような部分ですが、各課の導入やまとめに使っていただければと願っています。

 今回の改訂にあたっては、高校現場の先生方のご意見を聞く機会を持ちました。その中の1つに、EXCEEDは題材がよいので、どのレベルにも使えるというご意見がありました。曰く、――私たちの高校にはいろいろな生徒がいるが、いわゆる「特進」クラスと「やり直し」クラスの両方でEXCEED を使っている。題材がしっかりしているので、特進クラスではいくらでも深められる。やり直しクラスで浅く取り上げても、それなりの内容がある――というのです。この発言には、生徒には本来は上も下もないということが感じられて、心を打たれました。教科書に必要なのは、どの生徒にも必要な骨太で本物のメッセージであり、わかりやすさ・使いやすさであると思います。今回の改訂でこの目的にさらに近づくことができればと願っています。


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