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三省堂高校英語教育 2005年夏号
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SELHiからの報告

富山県立富山南高等学校
仲井美喜子

 富山南高等学校は平成15年にSELHi(Super English Language High School)の指定を受けた、2期生34件35校のうちの1校である。本校は2・3年生対象に国際コースが開設されていることを除けば、標準的な普通科単独校である。指定を受けてから2年間、本校がどのようにSELHi研究課題に取り組んできたかを報告する。

 本校は当初の計画では、これまでの国際コースなどで実施していた行事を中心にして、英検受験や他の教育機関との連携、IT機器の利用などを取り上げていた。しかし指定後に、この計画ではSELHiの目的に十分適応できないことや、運用面での困難さが明らかになった。また、SELHi各校は先進的英語教育の研究を進め、数値的な評価で成果を示していくことが期待されていることがわかった。そこで計画の全面的見直しが急務となり、本校としての方針を話し合って、次の4項目を計画の柱とした。

  1. SELHiの研究対象を全校生徒として、全生徒の英語運用能力の向上を図る。
  2. 学習指導要領の趣旨とするところに従って、英語で授業を行い、普遍的な英語教育の実践として全国に発信する。
  3. 実践的コミュニケーション能力の育成が、真の英語力定着につながり、大学入試等にも十分対応できることを示す。
  4. 個々の行事や事業を、生徒のモティベーションを高める場とするだけでなく、習得した4技能の運用の場、またその評価の場として明確に位置づける。

 さらに、「国際社会で活躍する人材を育てるための英語運用能力を高める方法の研究」という当初の研究開発課題のもとに、「自分の考えを明確に持ち、それを英語で正しく表現できる生徒を育てる」を学校全体の目標として、学年ごとに具体的な内容と到達目標を決めた。そして、4技能の向上をどのように測るかについて、教科内の話し合いが続いた。SELHi初年度は、「何がSELHiなのか」「どうすればSELHiとして評価されるのか」、光を求めての暗中模索の一年であったと言える。

 SELHiであるなしに関わらず、英語教育で最も重要なことは授業の内容改善と充実である。ALTとのTeam Teaching以外の授業も英語で行うということは、SELHi指定を受けて初めて実施することになったが、これは教師のみならず生徒にも画期的な出来事であった。英語を苦手とする生徒の中には「ますますわからなくなる」との不安の声もあったが、次第に受け入れるようになっていった。音読を重視して授業を進め、ペアワークやグループワークを取り入れながら4技能の向上を目指す授業を工夫した。音読練習や発表などを重ねる中で、生徒たちにはコミュニケーションの力が着実についていったと思われる*)。  「自分の意見を明確に持ち」、それをなるべく正しく「(英語で)表現」しようとする意欲の向上は、他教科の授業や各種コンクールなどの大会、諸行事の実施においても、波及して見られるようになった。

 4技能についての独自の評価方法・基準作りは当初から大きな課題となっており、毎週の部会で話し合いが続いた。1年目で評価方法を模索し試行して、2年目でようやく形になってきた。ライティングについては自由英作文の評価方法を作成して、継続して実施している。また英作文に役立つ30の構文を精選して生徒に示し、演習によって定着を図っている。リーディングでは「大学入試センター試験第6問」で定期的にデータ分析しながら、速読や多読の成果を測っている。スピーキングは音読重視の授業の実践として、インタビューを含めた音読テストを定期的に実施している。リスニングはスラッシュ・リーディングなどの練習を生かして、授業や家庭学習課題でディクテーションを取り入れている。まだデータで実証するに至っていないものもあるが、4技能をいかに伸ばすか、という課題は日々の授業計画に確実に反映している。

 SELHi指定の2年間を振り返ると、さまざまな迷いや困難があった。英語科がチームとして取り組む体制を作り、日々の授業や学級活動・分掌の仕事などに追われる中で計画を進めるということは、物理的にも精神的にも大きな負担となった。また計画推進に当たっては、学校という組織の中で、一教科のプロジェクトが一人歩きすることはできない。特に本校は全校生徒をSELHi対象とするため、評価テストの実施や行事など、他教科や学年の理解と協力が不可欠である。2年目に企画した公開授業「SELHi中間発表会」も、学校全体の協力があってこそ、実現することができた。

 「英語で授業を行い、普遍的な英語教育の実践として全国に発信する」ことを課題の一つとして掲げて2年目、公開授業をしないわけにはいかない、という流れの中で、校長、管理職はじめ全職員の、多方面での協力があった。当日は県外SELHi校の先生方も含めて、県内の中学・高校、大学等から150名ほどの参加者を迎えた。開会式後の国際コース2年生の英語朗読劇「ノアの箱舟」披露、公開授業での生徒のコミュニカティブな活動など、指導に当たった我々の努力の成果として、高い評価を得ることができた。不安と緊張の中で実施した行事ではあったが、これを機に生徒たちの授業に臨む態度や参加の様子が目に見えて向上した。また教員にとっても、公開授業に向けて互いに授業を参観し意見を出し合い、改善の工夫をしたことは、その後の授業実践に大いに役立っている。

 SELHi指定3年目(最終年度)を迎えた今、継続的な取り組みや未解決の課題、なお取り組むべき問題など、なすべきことは山積している。研究課題の成果に焦る一方で、本当に大切なことはそれぞれの授業の取り組みであるのに、その周辺で手を煩わせすぎてはいないか、という不安がある。もっと生徒と向き合う余裕がほしい、というジレンマもある。しかし、SELHi指定によって得られたものは多くある。それはSELHi予算で揃えた多読ライブラリーや研修図書といった、物的な収穫だけではない。教科部会でテーマや研究方法について話し合いや議論を進める中で培われたチームワーク、困難を乗り越えて実践した行事、冷や汗を流しながら改善を重ねてきた授業、運営指導委員そして文部科学省やSELHi企画評議会議協力者の先生方からの助言や激励、他のSELHi校の先生方との出会い、そして行事や授業を通して見える生徒の変容、さらに普通の学校の教師や生徒が発信できる英語教育の取り組みがあるのだという自負など、報われたことは多い。幾度も直面した問題や克服すべき課題など「影の部分」があってこそ、「光の部分」が見えてきたのだと信じたい。3年間の研究成果として何をどう示していけるかは、これからの大きな課題になるが、教科のチームワークと多くの人の協力を支えとして、取り組んでいきたい。そして3年間の指定が終了しても、これまでの授業実践や研究を続けていけるかどうかに、このSELHi指定の成否がかかっているのだと思う。

*)前年度の教科書採択時に、改訂された『CROWN English SeriesT』を知り、SELHi指定と同時に使用することができたのは幸いであった。オーラルコミュニケーションを重視して内容的にも優れた教材であること、さらにTeacher's Book や教師用指導書、資料集などが充実していることなど、英語で行う授業に最適の教科書であることがわかった。

SELHiとは

 文部科学省は平成14年度から、学習指導要領の枠を超え、英語や理数系に特化した教育を行う高等学校を重点支援する「スーパーハイスクール」事業を進めている。

 「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」(SELHi)とは、「英語教育に重点を置いたカリキュラムの開発、一部の教科を英語によって行う教育、大学や海外姉妹校との効果的な連携方策など、英語教育に関する研究開発を行う学校」のこと。指定期間は3年間で、初年度は18校が指定された。  文科省はさらに平成14年7月「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」を策定。先進的な英語教育の推進が一層図られることになり、15年度の指定校は初年度の18校から、約2倍の35校となった。


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