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三省堂高校英語教育 2004年春号
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巻頭エッセイ

心が動いたら始めよう


金 斗鉉
(きむ とうげん/イラストレーター)

 外でスケッチをしていると、ちびっこたちが集まってくる。「めちゃ、そっくりや!」「おじさん、絵うまいね! 絵かきになったほうがいいよ!」などアドヴァイス付きの褒めことばをもらうこともある。なかなかこれが楽しいのだ。「うちのお姉ちゃん怖いんだよ」と身の上話を始める幼稚園の女の子もいた。

 国が変わっても子どもたちは変わらない。マドリードの公園でスケッチをしているときもちびっこたちが4、5人近づいてきた。覚えたばかりのスペイン語を使ってみたかったので、一番小さい子に名前を聞いてみた。ところが返事はなく、少し離れたところで円陣を組んだのである。何やら相談をしている様子だった。しばらく経ってから戻ってきたちびは、「My name is....」と英語で自分の名前を教えてくれた。こっちはスペイン語で尋ねたのに、外国人には英語で答えるべきだと思ったらしい。何やら可愛く感じて、全員の似顔絵を描いてあげた。スケッチブックから1枚ずつ自分の似顔絵をもらうちびたちの口から出たことばは、今度は英語ではなく「Muchas gracias ムーチャス・グラシアス」とスペイン語でありがとうと言った。絵そのものはコミュニケーションではないが、絵を通していろんな出会いがある。

 僕は千葉県の中途失聴者、難聴者の高齢部の絵の教室を続けている。最初のころ、戸惑ったのが、僕がしゃべっているときにみんなが僕を見ていないことだった。手話通訳を見ているか、手話がわからない人はOHP(僕の話を要約筆記のボランティアの方が書いてスクリーンに映す)の画面を見ている。説明に熱が入り夢中になってしまうと要約筆記の人がついてこれず、半分も伝わらないこともあった。特に絵を説明することはたいへん難しいことで、たとえ意味を理解したとしても、それを自分で描く作業となるとすんなりとはいかない。しかし、この教室で僕が諦めず、繰り返し伝えようとしているテーマは「絵を上手に描こうとしないこと」なのである。何枚も描き続けると当然、個人差はあるが、上手くなる。上手くなることを楽しめばいいという人もいるだろうが、ほとんどの人は上手くなるという罠にはまり壁にぶち当たってしまうのである。

 僕は絵が描けない人はいないと思っている。この話をすると必ず首を傾ける人や反論をしてくる人がいる。もちろん、上手い絵はだれでも描ける訳ではない。しかし、下手な絵でもいい絵はある。これは多くの人がしぶしぶながら認める。ところが、いい絵という掴み所のないものよりはほとんどの人が上手い絵を描きたいと思うらしい。絵が描けたらいいなと思いながら、諦めてしまう原因なのだ。

 小さいころはほとんどの子どもが絵を描く。遊びとして描いていた子どもたちが絵が好きになるか苦手になるかの分かれ道は、小学校高学年あたりから中学の初めごろのようだ。自分が描きたい、表現したいと思うことから人の絵と比較したり、上手下手で絵を見るようになるのは仕方のないことかもしれないが、歯がゆいことである。

 絵を描くことは、手の訓練ではなくて、感じることが大事だと思う。そのためには何よりも絵を描くことを楽しむことである。楽しむコツは、自分の思うとおりに描けなくても、描いた絵の中から良さを発見すること。たとえ自分が描いた絵であっても、自分の意思だけを絵に押しつけることをやめて、ひとり歩きをする絵の声に耳を傾ける。そうすると絵とは何か、絵を楽しむこととは何かがわかるかもしれない。

 僕は英語について何もわからないが、上手になる前に楽しむことが大事なのは、絵と同じではないかと思う。


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