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フーンコラム80回(2011年3月号) 後関正明

英語学習への興味を喚起する その4

これまで3回にわたって「英語学習への興味を喚起する」と題して述べてきました。1回目は題材から生徒の心をひきつける工夫,2回目は情意面から主として1年生を対象に話を進め,3回目は「中だるみの学年」といわれる2年生への働きかけについて述べてきました。*「その1」へ *「その2」へ *「その3」へ

先日,都内の何人かの先生方とお会いしたとき,今度は3年生について書いてくださいとのお願いがありました。そこで,今回はこの4月からの新しい3年生向けの話をしようと思います。

新たな気持ちで新3年生になった生徒たちは,これまでとは様子が違って見えると思います。中だるみの学年からの脱却,この先の進路へ向けての意識,最上級生としての自覚などから,授業全体に緊張感がみなぎってくるものです。英語学習も高校入試に備えて当然熱が入ります。3年生の4月はそんな雰囲気を利用して一気に英語学習への興味を喚起し,持続させる絶好のチャンスです。それでは,具体的にどんなことをしたらよいでしょうか。

例にNEW CROWN BOOK 3 LESSON 1 “Wonder Rings” を取り上げてみます。ここは紙を使った手品を友達に披露する課ですね。言語材料(文法)は「受け身形」の復習となっていますが,最初の時間ではあえて取り上げずにこの課の最後の時間に触れるようにして,もっぱら手品に集中するとよいでしょう。(受け身形という文法の説明に入るとどうしても10〜15分かかってしまい,しかも板書をノートさせたりしたら受け身形だけで20分はかかってしまいます。ですから,2年生で学習したことの復習でもあるこの課では,最後に触れるのがよいと思うわけです。)

まずオーラルイントロダクションですが,Teacher's Manual「解説・活用編」の例を基に生徒の実態に応じていろいろと変化させるとよいでしょう。以下,こんな具合です。

先生:I'm going to show you some magic tricks. Do you like magic tricks?

生徒:Yes, I do. I like magic tricks.

先生:OK.(2ページの絵を見せて)What does Ming have?

生徒:He has two papers.(文法としては正しくないがこのまま通過し,正しい言い方を教師がすぐ後で示す。)

先生:Yes. He has two strips of paper.(これを何回か繰り返し,生徒にコーラスでリピートさせたり,列ごとに言わせたりする。)

生徒:He has two strips of paper.

先生:Look at me. I have two strips of paper too. I'm going to make two rings with the paper. I paste them to each other like this. They're pasted at one point. Next I cut along the rings. What will happen to the rings?
OK. Look at this. This is a square. Next, your turn. Try it.

これはほんの一例ですが,こんなことを話しながら教師が手品を実践します。(失敗もご愛嬌。かえって生徒も喜びます。)次は生徒が作る番ですが,5〜6人のグループ活動で各自教え合ったり,助け合ったりしながら作らせます。ここで教え合い,学び合い,助け合いの心を育てます。教師は机間支援をしながら,できれば英語だけで指導します。出来上がったらグループごとに代表者を決め,前に出て教科書の本文をたよりに再度手品を実演させます。また,5ページの"SOUNDS"にある英文やそれを応用した文を使い,発音練習をさせたあとで発表させてもよいでしょう。

さらに,インターネットで「メビウスの輪」を検索すると実にいろいろな体験ができ,私たちが街で見かける会社のロゴやマーク,彫像などにも「メビウスの輪」が応用されて使われていることが分かります。これをプリントアウトして生徒たちに見せると彼らは「なるほど!」といって納得し,もっと「メビウスの輪」について調べてみたくなる生徒も出てくるはずです。

冒頭でも述べましたように,3年生の4月は教師にも生徒にも特別の緊張感があります。その緊張感があれば,文法指導中心のオーソドックスな英語指導を行っても,生徒は集中して授業に参加するかもしれません。しかし,そこで一歩立ち止まり,これからの1年間を見通して,生徒の緊張感を生かしつつ,同時にほぐしながら,これから一緒に学び,生活し合う生徒同士をつなぐことを目的とした授業を行ってみるのはいかがでしょうか。NEW CROWN の題材,“Wonder Rings”を使い,グループの輪を育み,『「英語の授業」は楽しい』から『「英語」は楽しい』と,英語学習に対する意欲と習慣が増せばしめたものです。頑張ってください。


後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。

ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。

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