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フーンコラム79回(2011年1月号) 後関正明

英語学習への興味を喚起する その3

これまで2回にわたって『英語学習への興味を喚起する』と題して,「題材に関する興味」から「ことばに関する興味」,「英語に関する興味」への発展の過程と,加えて「情意面での動機づけ」についてお話しました。すると,何人かの先生から,「興味深く読みました。学年別にどのような方策をとったらいいか,具体的に例示してもらえませんか」とのご要望がありました。そこで,今回は2年生の例を示したいと思います(前々回の第77回では,1年生の例を示しました)。*第77回へ *第78回へ

2年生という学年は1年生と比べ,学力差がはっきり現れてくる時期です。それに加え,思春期特有の不安定な心理状態から,授業への反発が加わり,授業に集中せず騒がしくなる生徒が増えたり,やる気のない生徒が多く見受けられたりするようになることもあります。そうした教室の雰囲気が多くの生徒に伝播し,英語に興味をもたせることへの障害になることも少なくないでしょう。しかしながら,2年生の3学期は,中だるみしがちな2年生からいよいよ最上級生になることを見据えつつ,学年を締めくくるという大切な時期でもあります。非常に難しい時期であるとは思いますが,題材をもとに生徒に興味をもたせる,もしくは,生徒同士で話し合わせるなど,協力させて興味をもたせるというような観点から,一つひとつの授業に取り組んでみてはいかがでしょうか。以下に,小生の経験をもとに,少しアレンジを加えたものをお示しします。

例として,NEW CROWN BOOK 2 の最終課,LESSON 8“Landmines and Children”を取り上げましょう。この課は,わずか3ページの英文のなかに実に深い内容がつまっています。Teacher's Manualの「A 解説・活用編」を参照しますと,指導の際に役立つ基本的な「背景的知識」が詳しく記されています。教科書71ページの世界地図の解説をはじめ,「地雷とは何か」,「地雷の歴史」,「地雷の現状」,「地雷除去の現状」などに関する解説です。少し読んで生徒に話して聞かせるだけで,生徒は地雷の恐ろしさを感じることと思いますが,教科書に同年代以下の子どもの写真がのっていることから,さらに生徒の興味をひくことと思います。「地雷」ということばを初めて聞く生徒もいるはずですが,人を殺傷する恐ろしい兵器が,カンボジアの子どもたちの家のすぐそばに埋められていることを知って,ショックを受ける生徒は多いでしょう(小生が教えたときは,教室内がシーンと凍りついていました)。カンボジアには,文字が読めずに地雷を踏んで負傷してしまう子どもたちがたくさんいます。日本人の栗本さんは,楽しいポスターを作ったりして,カンボジアの子どもたちが文字を覚えられるように支援しているのです。

このような深い内容のレッスンですので,3〜5時間かけてレッスン全体の読みと説明を一通り終えたあと,以下のような課題を出し,グループごとに話し合わせてみてはいかがでしょうか。

課題

  • 地雷は何のために作られるのでしょうか。
  • 世界にはどれくらいの地雷があり,どこの国に多く存在するでしょうか。
  • 地雷の被害はどのようなもので,なぜ起きてしまうのでしょうか。
  • 地雷の被害をなくすために,私たちはどんなことができるでしょうか。
  • 地雷の被害を受けてしまった人に対して私たちは何かできることがあるでしょうか。

上記の課題について,話し合いを1時間かけて行ったあと,各グループで話し合ったことを発表させます(日本語でよい)。発表に対しては,各グループに必ず1回は質問させます。発表グループが質問に答えられないときは,教師が支援します。さらに難しい話に発展した場合は,教師も含めて全員の宿題にしましょう。

普通ですとここまででLESSON 8の本文を終了し,USE IT 8に移ってしまうところですが,再びLESSON 8の本文に戻ります。題材内容をこれまで以上に深く読み取ることができることを実感できますし,繰り返し学習することによって文法や表現が身につくからです。まず,音読から始め,再度,本文に慣れさせながら,読みを深めていくとよいでしょう。手順は以下のとおりです。

(1)RepeatやShadowing(教師やCDのあとについて音読)

(2)Read & Look up

(3)ペアで対話練習(Section 2,3の健とエマの会話文を使用)

(4)ペアで通訳ごっこ(一人が英語を音読し,もう一人が日本語に訳す)

(5)Picture Description(ピクチャーカードについて,英語で説明する)

(6)文法(受身形)の説明(確認のために簡単に触れる)

(7)76ページのTHINK ABOUT IT(「このレッスンであなたが地雷について学んだことを書いてみよう。」というタスク)

少し手間はかかりますが,きめの細かい授業計画を立てて授業に臨めば,教室の雰囲気が変っていく確かな感触が得られるでしょう。生徒の興味と関心を再び喚起し,そのことがさらに3年生に進級する自覚をもつきっかけになればうれしく思います。参考にしてみてください。


後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。

ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。

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