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先週A区の研修会で,B先生から次のような悩み相談がありました。 今,1年生を4クラスと2年生の少人数授業を2クラス担当していて,特に,1年生で苦労しています。と言いますのも,うちの中学校には,区内の11の小学校から入学してくるのですが,新入生の様子を見ていると,小学校での外国語活動に,ずいぶん「ばらつき」があるようなのです。ばらつき自体は,ある程度,しかたがないと思うのですが,問題は,英語に対する興味に差があることです。英語が「好き」と言う生徒も多いのですが,1学期も終わらないうちから「嫌い」と言う生徒がいて,悩みの種です。どうすれば,英語が嫌いな生徒を好きにすることができるでしょうか。何かよいヒントがあったら教えていただきたいのですが…。 私は,次のようなお返事をしました。 まず,先生の生徒に対する真摯な姿勢に感心しました。(教師として当然のこととおっしゃるかもしれませんが)何とかして英語を好きにさせようと努力している姿は,実に尊いものです。私は,生徒を思うそういう気持ちが,生徒の変容を促す根幹だと思っています。教育の基本となる先生の思いを大事にしていただき,私から,具体的なヒントを申し上げたいと思います。 私は,生徒の興味を促すもっともよい方法は「題材」をうまく使うことだと思っています。英語に興味を示さない,または興味を失いつつある生徒に聞いてみますと,その原因は,@ 面倒な文法ばかりで面白くない,A 単語を覚えるのがつらい,B 英語を読めない,C 英文の意味がなかなかつかめない,D やたら暗記させられる,E 小学校のうちから嫌いなど,多岐にわたっていますが,まずは,題材内容を軸として,興味を失いつつある生徒の興味を再び喚起することから始めてはいかがでしょうか。少々脱線気味になり,また,社会科の授業に見えてしまうようなこともあるかもしれませんが,それでも生徒が興味を覚え,じっと聞く姿勢が芽生えてくればしめたものです。 平成18年度版 NEW CROWN 1 Lesson 5 "My Friends in Okinawa"を例にとってみます。ここで沖縄が扱われているいちばんの意図は,(沖縄県以外の日本人にとっては)「『内なる異文化』を知り,理解し,それを『英語を用いて紹介する』(日本文化の発信)という発想です(沖縄県の方にとっては,「自文化」ということになります)。そのような発想がレッスン全体の根底にあり,Section 1で,沖縄の民謡や踊りを通して地域の文化について考え,Section 2で,沖縄の自然の素晴らしさを学び,Section 3で,それまでのまとめをします。教師用指導書には,それぞれの題材について解説があるので参考になります。 生徒の興味はさまざまですので,さらに別の観点から興味をひきつけようとすれば,沖縄の自然について,例えば「青い海」や「白い砂浜」の写真を手はじめに,「珊瑚礁」,「熱帯魚の群れ」,「固有の植物や動物」などの写真を,ご自身で集めて説明したり(英語を少し交えた日本語による説明で大丈夫),班ごとに,沖縄についての調べ学習をして,発表したりする機会を作るのもよいでしょう。そのとき,先生も一緒に発表すれば,クラスは盛り上がると思います。英語に興味を示さなくなってきた生徒を発表者に選ぶのも,一つの方法です。とりわけ写真は,「自然保護」や「失われた自然」という観点から,珊瑚礁が死んで白化現象を起こしているもの(美しい珊瑚が死んでしまい,まるで白骨が散らばっているようで恐ろしい)などを見せると,どうして珊瑚が死ぬのか,白化現象を起こしたら周囲の海はどう変わってしまうのかなどの課題を発見することができます。そして,生徒の「課題解決能力」を刺激し,「では,どうすればよいのか」と考えることになるので,よりいっそう生徒の興味を喚起することができると思います。 私がこれだけ「題材」にこだわるのは,やはり,題材を通じて生徒に興味を持たせる活動を無視しては,中学校における英語教育は成り立たないと思うからです。そんなところから,「言葉を使えるようになろう」という思いがつのり,言葉に対する興味,さらには,英語学習全般に対する興味がわいてくるのではないでしょうか。このほか,達成感を味わったり,よい意味で競争したり,お互いに協力したりなど,「情意面」から興味を喚起することも大事です。具体的な方法については,次回に譲ろうと思います。 |