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第8回は,これまでの先生方のご提言を受けて,本コラム主宰の渡邉時夫先生が,わかりやすい英語を話す工夫の1つとして,MERRIER Approach を紹介します。 ※このコラムについてのご意見・ご感想をお受けいたしております。 渡邉時夫(清泉女学院大学) 1. はじめに小学校の「外国語活動」の目標は,「コミュニケーション能力の素地を養う」ことです。「素地を養う」の中身は,コミュニケーションを図ろうとする積極性や初歩的な英語を発話しようとする態度を支援することなどが考えられますが,最も大切な部分は,子どもたちがALTやHRTの話す英語を聞いて,その内容をtop-down的におおむね理解する力を養うことだと思います。 この基本的な考え方に基づき,英語のシャワーを浴びせようと努力しているALTやHRTも大勢いらっしゃることでしょう。このこと自体は大変歓迎すべきことと思います。ただ,子どもたちが,はじめて出会う英語という言語を聞いて,話し手のメッセージを理解するということは,決して容易なこととは言えません。ALTやHRTの話す英語を子どもたちが理解できず,戸惑ったり,授業に乗ってこなかったりする場合も少なくないはずです。例えばそのようなときに,HRTがALTに,“Please use easy English.” “Please speak slowly.” などと話してお願いしても,ALTはどうしたらよいか見当もつかず,困ってしまうかもしれません。 実は,HRTもALTも,子どもたちにわかりやすい英語を話す工夫をする必要があるのです。今回はその方法のひとつとしてMERRIER Approachを紹介したいと思います。この方法は,小学生だけでなく,中学生や高校生を教える際にも大変有効だと高く評価されています。英語をtop-down的に理解させる際に役立つ方法なので,お勧めいたします。 2. MERRIER Approach の勧め‘MERRIER’ は,下記7つの単語(話す視点)のイニシャルを結んで編み出した名称です。それぞれについて具体例を挙げながら紹介していきましょう。 Mime, Example, Redundancy, Repetition, Interaction, Expansion, Reward Mime (or Model) Example (a) 具体例の列挙 (b)「抽象のはしご」を下る 海外で,現地の人と話していますと,よく“Where do you live in Japan?” と聞かれます。そのときに,“I live very far from Tokyo.” と答えたとしたらどうでしょう。抽象度が高く,「抽象のはしご」の上段にいることになります。相手は私の町(長野県小諸市)が日本のどのあたりにあるのか分りません。そこで,“I live about 200 km away from Tokyo.” とか “It takes about two hours by super-express train from Tokyo to my town.” と説明すると,次第に具体化し,私の町の地理的な位置が一層明確になってきます。その外国の人が軽井沢や上田を訪ねた経験のある人でしたら,“My town is between Karuizawa and Ueda.” と言えばますます理解が深まると思います。「抽象のはしご」を,どんどん下っていくことになります。 次にもう少し複雑な内容についての例を挙げましょう。 日本の自然の美しさを紹介するときに,“Japan is a beautiful country.” と言っただけでは,表面的な意味は分かってもらえても,日本の自然の様子を真に理解していただけないかもしれません。その場合,例えば次のように「抽象のはしご」をどんどん下りて,相手ができるだけ具体的にイメージ化できるように説明したらいかがでしょう。 “We have many trees everywhere in Japan. Go to Hokkaido in spring, and you will find a lot of mountains. They are very green. Go to Nagano, and you will find a lot of mountains. There are many green trees in the mountains, too. (日本地図を指差しながら)Every place from Hokkaido to Okinawa has many green trees. Go to those places in autumn. The mountains are very colorful. They are red and yellow. Japan is a beautiful country.” (最後に,最初の文Japan is a beautiful country. にもどると,「抽象のはしご」を上り下りしたことになります。このように,「上り下り」することをとおして,英語を聞いて意味をなんとなく理解する力が育っていくのです。) Redundancy Repetition Interaction (a) Interaction の基本的な考え方 (b) TPR(Total Physical Response)を使い,全身を使っての活動 “Today we are going to draw pictures. So, go to your locker and get your crayons. But today we will use only three colors, red, blue, and yellow. Please get only three colors. Are you ready?” (c) 「正確さ」よりも「口のすべり」を大切に Expansion What is the season in Australia now? と問いかけると,子どもたちは,“Summer.” のよう1語で答えたりします。時によっては,“Yes, it is summer in Australia now.” などと拡張してやることもExpansion のひとつです。 Reward 3. おわりにMERRIER Approach を活用すると,子どもたちの理解度が高まり,当然ながら,外国語活動が一層楽しいものになるでしょう。また,MERRIER Approach を日常的に活用している先生は,英語の使い方が上達するだけでなく,子どもたちに考えさせながら授業を進めるコツも身についていくようです。ALTにもこのアプローチをご紹介いただき,外国語活動の目標達成に向け,頑張っていきましょう。 次回は,外国語活動を行う際に,担任の先生が身につけておきたい力「授業力」について,これまでたくさんの英語活動を経験されている先生にお伺いしたいと思います。 ![]() ![]() |
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