英語教師としての力量を高めたい。そんな教員のための自主研修ハンドブック。基本的な考え方を解説し、実例を多数紹介。さらに文献やウェブなどのリソースも収録。「英語力」と「授業力」を高める必携の書。
編著者
田邉 祐司 (たなべ ゆうじ)
1957年生まれ。高校、短大などを経て、現在、専修大学文学部英語英米文学科教授。早稲田大学大学院教育学研究科客員教授。博士(教育学)。著書には『英語音声学辞典』(共著、成美堂)、『NEW CROWN ENGLISH SERIES』(共著、三省堂)などがある。授業のモットーは「?→!」。
松畑 熙一 (まつはた きいち)
1940年生まれ。福岡教育大学、岡山大学を経て、現在、中国学園大学・中国短期大学学長。著書には、『英語は楽しく学ばせたい』(大修館書店)、『自ら学ぶ力を育てる英語授業』(研究社)、『英語教育人間学の展開』(開隆堂)などがある。学ぶ側の論理を大切にした英語教育を展開。
服部 孝彦 (はっとり たかひこ)
1952年生まれ。初等・中等・高等教育を日米両国で受ける。米国ケンタッキー州立ミュレー大学大学院客員教授などを経て、現在、大妻女子大学社会情報学部教授、同大学院社会情報研究科教授、早稲田大学非常勤講師。Ph.D. in English。著書には『私たちはいかにして英語を失うか』(アルク)他多数。授業のモットーは「情熱」。
坂本 万里 (さかもと まさと)
1958年生まれ。高校、神奈川県教育委員会指導主事を経て、現在、神奈川県立総合教育センター主幹兼研修指導主事兼指導主事。著書には『High School Life In Maryland』(共著、英進社)、『英語基礎演習 GATEWAYS TO ENGLISH』(英進社)などがある。モットーは「『本質』(essence)の成長を目指す」。
Browne, Charles (ブラウン、チャールズ)
1962年生まれ。熊本県教育委員会MEFおよびJET、ソニー株式会社企業内英語教育ディレクター、青山学院大学教授を経て、2007 年4月1日より、明治学院大学文学部教授。Ed.D. 著書にはNew Perspective in CALL for Second Language Classrooms(編著、Lawrence Erlbaum Associates), First Impact(共著、Longman)などがある。「知的な刺激のある」授業を心がける。
執筆者
- 上原 明子 (かんばる あきこ)
福岡県大野城市立大野南小学校教諭
- 藤井 佐代子 (ふじい さよこ)
岡山県岡山市立西小学校教諭
- 石田 隆 (いしだ たかし)
岡山県立岡山操山中学校教諭
- 臼井 治久 (うすい はるひさ)
千葉県南房総市教育委員会学校教育課主任指導主事
- 大牛 英則 (おおぎゅう ひでのり)
鳴門教育大学附属中学校教諭
- 巣守 敏史 (すもり としのり)
広島県北広島町立千代田中学校教諭(初任者研修拠点校指導教員として他に3校の兼務)
- 田島 郁夫 (たじま いくお)
北海道恵庭市立恵明中学校教頭
- 横山 一美 (よこやま かずみ)
山形県飯豊町立飯豊中学校教頭
- 佐合 弦一 (さあい げんいち)
元東京都立第五商業高等学校教諭
- 手塚 美雄 (てづか よしお)
山形県立米沢興譲館高等学校教頭
- 富永 裕子 (とみなが ゆうこ)
元順天中学校・高等学校教諭、東京大学大学院在学中
- Bergman, Kevin (バーグマン、ケヴィン)
武蔵高等学校教諭
- 大道 千穂 (おおみち ちほ)
青山学院大学専任講師
- 中村 香恵子 (なかむら かえこ)
北海道工業大学助教授
- 野口 正樹 (のぐち まさき)
沖縄国際大学助教授
- 高野 成彦 (たかの なりひこ)
目白大学非常勤講師
- 羽井佐 昭彦 (はいさ あきひこ)
千葉工業大学助教授
- 浦島 久 (うらしま ひさし)
ジョイ・イングリッシュ・アカデミー学院長
- 鈴木 敬子 (すずき けいこ)
静岡県総合教育センター指導主事
- 山根 敬二 (やまね けいじ)
山口県教育庁高校教育課指導主事
(所属はいずれも2007年3月現在)
『がんばろう! イングリッシュ・ティーチャーズ!』■目次
まえがき
第T章 学びに立ち向かう
1 自主研修の基本的な考え方
2 自主研修を阻むもの
Column 1 常時英心ということ
第U章 「英語運用能力」と「英語教授力」
1 英語教員の「英語運用能力」と「英語教授力」
2 授業に活かすための英語運用能力の育成
Column 2 プレゼンテーション・スキルを身につける
第V章 実践報告 ― がんばっている イングリッシュ・ティーチャーズ
学ぶ心の再生のために
体験談1 英語で考える習慣をつける(上原明子)
体験談2 志と情熱をもって指導力向上に向かう:
自主研修の内容と方法(藤井佐代子)
体験談3 英語教員としての力量の向上のために(石田隆)
体験談4 私と英語とのつきあい(臼井治久)
体験談5 仕事の増加にもめげず(大牛英則)
体験談6 英語教員として一念発起!(巣守敏史)
体験談7 英語教師の自らの学びを培う工夫(田島郁夫)
体験談8 教師が自分で学ぶということ(横山一美)
Column 3 On the Importance of Knowing
High Frequency Vocabulary
体験談9 米国大学院修士課程での自己研鑽(佐合弦一)
体験談10 田舎英語教師の自主研修(手塚美雄)
体験談11 Role Modelになることをめざして(富永裕子)
体験談12 The Naked Classroom(Kevin Bergman)
体験談13 学生に開かれる自主研修の道(大道千穂)
体験談14 私の自主研修:日々の授業を中心に(中村香恵子)
体験談15 資格主義から実力主義への架け橋(野口正樹)
体験談16 教育哲学による隘路からの脱出(高野成彦)
体験談17 人生の転機となったカナダへの大学院留学(羽井佐昭彦)
Column 4 和製英語
体験談18 会話力アップのための自主研修モデル(浦島久)
体験談19 実践の中で見出し,身につける(鈴木敬子)
体験談20 なまけ者英語学習法(山根敬二)
特別編 英語教師の知の水平線:自主研修の一例(田邉祐司)
Column 5 「日本人は自己表現力が弱い」のか?
第W章 Plan, Do, See
1 Plan:自主研修の計画立案
2 Do:計画の実施
Column 6 言語を忘れてしまう
3 See:計画の検証
4 おわりに
Column 7 On the Importance of “Coverage”
and Graded Reading Materials
第X章 英語教師のライブラリー:学びに立ち向かうためのガイド
1 学び続けようとする教師のためのブックガイド
Column 8 音読を語る
2 英語学習・英語教育関連ウェブサイトガイド
Column 9 記憶のための効果的な方法
第Y章 さらなる学びのために
1 学びの門戸は開かれる―教育大学院事情
2 アメリカの遠隔教育
あとがき
参考文献
はじめに
初めて教壇に立ったときには,誰しもがこれからの教員生活に期待をふくらませ,「よし,がんばろう!」と誓います。しかし,その決意もやがて揺らいでしまいます。英語教授力,運用能力に磨きをかけることの大切さは理解しています。学び続けることが生徒のためになることもわかっています。様々な思いが頭の中でうずまきながらも,押し寄せる日々のあれこれの中で,体も心も疲れ切って動かないのです。
教師は「教育のプロ」ですから,自らの学びに対しては,何をどうしたらよいのかの大方の見当はつくはずです。しかし皮肉なことに,そのプロが,自分の学びには一歩を踏み出せない,よしんば踏み出しても,それを続けられないといったケースが今,散見されるのです。
編者たちは英語指導者講座,集中研修やその他の教員研修などを通して,こうした先生方に出会ってきました。そのたびに問題の広がりと深さを痛感し,その改善を願って,2005年,文部科学省へと自主研修の提言を行いました。その内容を全面的に刷新し,新たな視点を加えたのが本書です。忙しい先生方が気軽に手にとり,読み進めることができるように,理論的な解説は極力避け,何よりも多くの体験談を前面に押し出すことにしました。これから教員を目指す方を含め,読者の皆さんが,究極的に忙しい現場にあって「学びに立ち向かう力」を手にした彼らのストーリーから何かを感じとられ,それぞれの自主研修への呼び水としていただければ,編者一同これに勝る喜びはありません。
忙しい中,玉稿をいただいた先生方には,編者一同心よりお礼を申し上げます。また,三省堂編集部の富岡次男氏,福本健太郎氏には,企画案の段階から実に献身的にサポートをしていただき,感謝の念に耐えません。編者一同,編集には万全を期したつもりですが,誤植・誤謬などがあれば,それらはすべて編者たちの責任であることを付記しておきます。
こうして一冊の本という形にまとめられた寄稿者,編者,そして編集者の思いが,やがて波紋のようにゆっくりと広がって,日本の英語教育を底辺から突き動かしていくことを祈ってやみません。
がんばろう! イングリッシュ・ティーチャーズ!
編著者代表 田邉祐司
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