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『コミュニカティブ・テスティングへの挑戦』

根岸雅史、東京都中学校英語教育研究会 編著

本体2,400円+税
B5 160ページ(リスニングテストCD付き)  
ISBN:978-4-385-36281-6

コミュニカティブな授業にはコミュニカティブなテストを! これからのテストには、現実の言語の使用場面を想定した「コミュニカティブ・テスティング」が必須。10年間の実践研究から良問を精選し紹介。

編著者紹介 目次 コミュニカティブテストをあなたの手で(本文より)
はじめに(本文より) おわりに(本文より) テストが変われば生徒が輝く(本文より)

編著者

根岸 雅史 (ねぎし まさし)

埼玉県生まれ。東京外国語大学外国語学部英米語学科卒業。東京学芸大学大学院修士課程教育学研究科英語教育専攻修了。レディング大学大学院修士課程言語学研究科応用言語学専攻修了。同大学より博士号取得。埼玉県立熊谷女子高等学校講師、小山工業高等専門学校講師を経て、現在、東京外国語大学大学院地域文化研究科言語教育学講座教授。主な著書に、『テストの作り方』(研究社出版)、『無責任なテストが「落ちこぼれ」を作る』(大修館書店)、『英語なるほどQ&A』(NHK出版)。専門は、英語教育学、特に、言語テスト。

東京都中学校英語教育研究会

調査部は、都中英研の組織の一部会で、発足当時は英語教育の調査研究が目的であったが、後に研究部と調査部に分かれたという経緯がある。調査部は主に学力の調査を担当し、50年間2・3年生を対象に、東京都全域において希望校にテストを実施してきた。問題内容は到達度を測る標準的な問題から、コミュニケーション能力を測るねらいの問題へとの変遷があった。その取り組みに対して、平成12年、語学教育研究所より「外国語教育研究奨励賞」を授与される。近年では、約1万人の生徒の参加がある。

例年、6月から始めて10回ほどの部会で問題作成検討を行い、10月にテストを実施している。その後、結果分析・報告書作成という活動を行っている。

HP: http://chueiken-tokyo.org/


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『コミュニカティブ・テスティングへの挑戦』 目次

 コミュニカティブテストをあなたの手で
 はじめに

 第1章 コミュニカティブ・テスティング以前

A テストの建設的な議論に向けて
B 「良いテスト」が備えるべき条件

 第2章 コミュニカティブ・テスティングとは?

A なぜコミュニカティブ・テスティングか?
B コミュニカティブ・テスティングが備えるべき要件

 第3章 コミュニカティブ・テスティングの実際

A リスニングのテスト
B リーディングのテスト
C ライティングのテスト
D 文法のテスト
E 語彙のテスト

 第4章 スピーキングのテストの実際

A 広まるスピーキング・テスト
B コミュニカティブなスピーキング・テストとは?
C スピーキング・テストの採点をどうするか
D スピーキングをどう測るか:スピーキング・テストのタイプ

 第5章 英語の定期試験作成のポイント

1 指導目標・到達目標を立てよう
2 まず設計図を作ろう
3 大問ごとに問題のタイトルを付けてみよう
4 解答の正誤に、タイトルに掲げた能力がかかわっているか確認しよう
5 ごった煮問題、特に総合問題はやめよう
6 十分な問題数を確保しよう
7 直接テストできるものがないか点検しよう
8 読解問題では、問題同士の依存がないか確認しよう
9 理解力を問う問題は、テキストなしで解答でないか確認しよう
10 問題の最終チェックをしよう

 第6章 都中英研英語コミュニケーションテストの分析結果

A 平成17年度都中英研英語コミュニケーションテスト 3年生
B テスト統計用語解説および分析結果
C テスト分析結果解説
D 過去の項目分析例(こういうテスト項目は問題だ―項目分析の結果から)

 参考文献
 おわりに
 テストが変われば生徒が輝く


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コミュニカティブテストをあなたの手で (本文より)

 東京都中学校英語教育研究会(通称:都中英研)では、昭和32年(1957)以来、英語教育の向上のために、英語学力調査を全都内の希望校に実施してきました。現在、「英語コミュニケーションテスト」と称する本テストは、テストを指導に生かし、授業を改善するために役立てることを基本方針としています。そのため、当初からリスニングテストを取り入れ、「語彙・文法、読む力、書く力、聞く力」の領域別に問題を作成し、改善点を明確に示しました。今日でこそ、観点別評価のために領域別問題の作成は当然と考えられますが、50年前の当時では画期的なことといえるでしょう。そのあとも言語活動に基盤におき、時代の先を見通した問題作成を目指して改善を重ね、平成12年度には語学教育研究所より「外国語教育研究奨励賞」が授与されました。年来の「コミュニカティブテストを目指しての取り組み」が全国的に評価されたことは、感謝とともに大きな誇りであります。

 さて今日、現場の先生方は授業でコミュニケーション活動を展開され、国際人としての態度や実践的なコミュニケーション能力の育成に日々努力されています。しかしながら、定期テスト問題が授業の変化に対応して適切に作成されているかとなると、はなはだ心許なくもあります。評価の材料は授業時の観察・実技・作品など多様ですが、集大成である定期テストが重要であることは、学習者・教授者にとっても変わりはありません。実際の問題が言語の知識理解・語彙・文法・読解・英作文などの形態であっても、これらを通してコミュニケーション能力を測るという意識が問題作成の基本になければなりません。そのためには、問題文が生きた言語としての英語の表現であることや、コミュニケーションの必然性のある場面であることが必要なのです。前後の文脈と関連のない文、言語を記号のように扱う技術的な問題は、コミュニカティブな授業とは相いれないものです。

 この矛盾に気づきながら、どのような視点でテスト問題作りをしたらよいのかを悩まれている先生方は多くおいでです。以前、都中英研の担当である調査部も同じ悩みを抱えました。それを改善するために調査部は、問題の場面は英語が使われる自然な状況だろうか、コミュニケーション能力を測る問題であろうかと、検討に検討を重ねました。ここ10年来検討した結果、問題作成上の考え方や理論が整理され、良問の事例の数々が蓄積されました。これらの実践を本としてまとめることで、「今」テスト作りに悩まれている先生方のお役に立てることができるならば、という願いが本書を公刊する大きな動機です。そのために、多忙な先生方がそのまますぐに使うことができるようにと工夫しました。さらに、本書を参考にして、先生方がよりコミュニカティブなテスト作りへ挑戦していただくことを強く願っております。

 最後に、ご指導を賜わりました東京外国語大学教授の根岸雅史先生、そして都中英研・調査部員の方々のご努力に心から御礼申し上げます。

東京都中学校英語教育研究会会長 備里川正人


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はじめに (本文より)

 それは、今から10年ほど前のことである。東京都の中英研調査部の先生方とのテスト作りに、私はアドバイザーとして、参加することになった。それまでは、若林俊輔先生、金谷憲先生、田辺洋二先生、羽鳥博愛先生といったそうそうたる先生方に、1年ごとにアドバイザーをお願いしていたそうだ。その後を引き継ぐのは、若輩者の私にはかなり荷が重かったが、先生方の熱意に押されて引き受けてしまった。だいぶ頼りないアドバイザーではあったと思うが、都中英研の先生方からすれば、私が若輩者であるだけに、意見や疑問点を率直にぶつけやすかったのかもしれない。

 私が関わり始めた頃は、まず、それぞれのテスティング・ポイントを明確にすること、テスト・デザインやテストのスペック(test specifications)を作ることなどを強調したように思う。これらの重要性を参加者の先生方に理解していただくのも、数年はかかった。しかし、これらがある程度理解されるようになると、今度はコミュニケーション能力を測る英語のテストを作りたいということになった。それまでは、都中英研のテストは「中英研調査問題」と呼んでいたが、このあたりから「都中英研英語コミュニケーションテスト」に名前も変えたように思う。

 なぜ「コミュニケーション能力」を測るテストになったのかは、明確には記憶していないが、テストとしてのある程度の体裁を整えたならば、次は、「コミュニカティブ・テスティング」という思いが私にあり、少し私から仕掛けたのかもしれない。しかし、都中英研の先生方は、この新たな挑戦に見事に挑んできてくれたように思う。

 では、私がなぜ「コミュニカティブ・テスティング」を仕掛けたのか、これには少し説明が必要である。私自身の言語テスト研究の対象には、クローズ・テストやその派生型であるC-Test、テストの項目分析、さらに、can-do statementsなど様々なものがある。ただ、アイテム・ライターとしての自分の重要な出発点となると英国でのコミュニカティブ・テスティング研究であったといってよいだろう。私が最初に英国に留学したときは、留学先のレディング大学はコミュニカティブ・ティーチングの総本山ともいえる場所であった。また、日本に帰ってからは、ケンブリッジ英検のPre-PET(今日のKETの前身)のキック・オフに携わり、アイテム・ライターとして初めてのトレーニングも受けた。こうした経験は、その後NHKの『リスニング・テスト』という番組や、ベネッセコーポレーションのGTEC for STUDENTSなどにもつながっている。

 都中英研の先生方に「コミュニカティブ・テスティング」を仕掛けてみると、その反応は目を見張るものであった。「コミュニカティブ・テスティング」作りは、きわめて創造的な活動である。先生方は、ひとたび「コミュニカティブ・テスティング」という概念に触れると、さまざまなアイディアが湧いてきた。先生方が持ち寄った問題の中には、本当におもしろいなあと思えるものがたくさんあった。きっと普段の授業もユニークなアイディアであふれているのだろう。そのアイディアが、「コミュニカティブ・テスティング」という概念に触れ、テストへと姿を変えていったのかもしれない。

 私が都中英研のテスト作りに関わりだしてしばらくたち、これまでの問題をこのままにしておいてはもったいないと考えるようになった。何年か前から、先生方が集まるたびに、「何かにまとめたいね」という声が起こってきた。それがこの度、このような形で実を結んだのである。テストの実例は、実際に使ってもらってもいいし、また、それらのテストの背景にある考え方を知っていただき、自分のテスト作りに生かしてもらってもいいだろう。それぞれのテスト問題の選定および解説は、都中英研のベテランのメンバーにお願いして、全体の統一を図るために、根岸が加筆・修正した。なお、掲載しているテスト問題は、必要に応じて、テスト実施時のものに若干の修正を加えている。それぞれの担当は以下の通りである。

 第3章
A [2] リスニングのテストの実例   安原美代
B [2] リーディングのテストの実例  門松裕之
C [2] ライティングのテストの実例  本多敏幸
D [2] 文法のテストの実例   重松 靖
E [2] 語彙のテストの実例   重松 靖

 都中英研のテストにはスピーキング・テストが含まれていないために、これについては別に執筆をお願いした(スピーキング・テスト1・2・ 3・4・5…本多敏幸担当、6…門松裕之担当)。これらの具体的な問題のほかに、これまでにTeaching English Now(三省堂)などの雑誌に掲載していた原稿をもとに、言語テストの一般的な知識や定期テスト作りの原則についてもまとめてみた。また、毎年行っている統計的な分析は一見とっつきにくいのであるが、その読み方についても株式会社教育測定研究所の許可を得て「用語解説」を再録することができた。数字の苦手な方も、少しでも目を通していただければ、新しい発見もあるかもしれない。まだまだ不完全な私たちの「挑戦」であるが、今後のテスト作りの参考にしていただければ幸いである。

根岸雅史


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おわりに (本文より)

 コミュニカティブ・テスティングのメリットは、いくつか挙げることができるだろう。ひとつは、なんといっても生徒が「おもしろい」と思ってくれることである。それから、生徒が英語を実際に使っているような感覚をテストの中で経験できることだ。また、テスト結果が実際の言語使用の能力を反映していると考えられるということも大きい。

 ただ、コミュニカティブ・テスティングには、残された課題もある。それは、まずどこまでが私たちが見ようとしている「英語力」かという問題である。コミュニカティブ・テスティングでは、現実の生活におけるパフォーマンスを見ようとしている。しかし、それは「現実の生活」の中にあるわけであるから、「英語力」だけが独立して存在しているわけではない。「計算」したり、「(常識的に)判断」したりという、いわゆる狭い意味での「英語力」以外の能力が関わってくるのである。これらの能力も含めて「英語力」としてみるかどうかというと意見が分かれたりするかもしれない。また、これに関連して、コミュニカティブ・テスティングでは、信頼性が問題となることもある。いわゆる「英語力」以外の能力が関わってくると、テスト結果はやや不安定になる。さらに、コミュニカティブ・テスティングでは、指示文の中に、よく「あなたは〜しています」とか、「あなたは〜に来ています」などの文言が含まれることがある。しかし、このような自分の現実の役割とは異なった役割を演じることは、誰にとっても容易にできるわけではないだろう。

 「コミュニカティブ・テスティング」における問題作りは、クリエイティブな作業である。そして、この作業を成功させるには、日々のさまざまな努力が重要である。まず、良いタスクを思いつくには、「生徒は英語でどんなタスクをしているか」ということを常に意識していなければならない。また、生徒が英語で何らかのタスクを遂行する可能性の低さを考えれば、「日本語」でどんな言語活動をしているかということも視野に入れておくべきだろう。その意味では、生徒の「生活全般」にアンテナを張っておく必要がある。

 また、本当の意味でのおもしろい、コミュニカティブな問題を作るためには、問題作成者としての教師自身が、日常的に英語をコミュニケーションのために使っている必要がある。英語の授業のためでなく、自分自身のために、英語を読んだり、聞いたり、話したり、書いたりしていることが重要である。英語のレシピを読んで実際に料理をしたとか、誰かに手紙を書いて返事をもらったというような経験が大事なのである。さもなければ、本物らしい英語を書いたり話したりすることはできないだろう。また、良いタスクも思いつかない。

 都中英研の「英語コミュニケーションテスト」は、「コミュニカティブ・テスティング」として完成したわけではない。まだまだ挑戦は続くのである。そのために、本書のタイトルは「コミュニカティブ・テスティングへの挑戦」とした。今後の私たちの挑戦を見守っていただければ幸いである。

2007年3月
根岸雅史


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テストが変われば生徒が輝く (本文より)

 定期テストの答案を返却するときに、ある生徒に「先生のテストは、おもしろいよ。英語を使っているなって感じがする」と言われたことがあります。その生徒の顔に明るさと意欲を感じることができました。授業を反映するテスト、そしてテストを生かす授業、いわゆる指導と評価の一体化を目指してこそテストの意義があります。例えば、授業で力を入れて指導したことをテストではあまり出題せず、問題集にあるような問題ばかりでは、生徒は授業を軽視するようになるでしょう。授業は基礎基本としての知識の定着や技能の習熟と、コミュニケーションへの意欲や表現力・思考力の育成をねらいとします。テストも同様です。学習者が授業での活動を熱心にやっていたから、この問題は解けたんだ、という自信を持てる問題を作ることが、教授者の義務ではないでしょうか。「テストと授業は表裏一体」と考えるとき、テスト作りは生徒と先生との心のコミュニケーションの場となり、信頼関係もさらに深められます。

 都中英研の問題作成の歴史でも、過去の問題を踏襲しマンネリ化した時期がありました。しかし言語活動中心の授業が主流になっていく中、授業と問題にずれが出て、その矛盾への強い危機感が生じました。そして平成6年より調査部では問題改革を始めたのです。大学から故若林俊輔先生、金谷憲先生、故田辺洋二先生、羽鳥博愛先生、根岸雅史先生を講師にお呼びし、理論と実践の両面からの改善にご指導をいただきました。特に平成10年度から根岸雅史先生には理論的にも、問題作成段階でも具体的なご指導をいただきました。今日の問題作成マニュアルが整い、コミュニカティブテストへの変身ができたことは、部員の熱意と工夫の上に、先生のご指導があったからです。言葉では言い尽くせないほどの感謝を捧げたいと思います。

 一人でも多くの現場の先生方に、本書を活用し、コミュニカティブなテスト作りに挑戦していただきたいと願っています。テスト作りを少し視点を変えることで、また、ねらいをコミュニケーションに明確におくことで、先生方のテストが変わります。テストが変われば、生徒の授業への取り組みが変わります。スパイラル効果です。より良い授業作りのため、英語教育向上のために、テストが生きることが本書の究極の目的です。

 毎年、都中英研は問題作成に奮闘しています。調査部員の熱い思いと革新的な工夫が、本書に紹介できた良問事例を生み、コミュニカティブ・テスティングの流れを支えてくれていることを報告します。これからも全員が「コミュニケーション能力を育み、授業を生かすテスト」という基本に心をひとつにして、問題作りをさらに改善・発展させるよう願っています。

 最後に本書を刊行するに当たり、根岸雅史先生はじめ都中英研・調査部員、特に廣田幸男、安原美代、重松靖、門松裕之、本多敏幸、および三省堂の富岡次男氏、藤田理子氏の各諸氏のご尽力をいただきましたことに深く感謝申し上げます。

 さらに、都中英研・調査部の英語コミュニケーションテストの実施をご希望される方は、下記にご連絡ください。都内はもちろん、他県からでも参加できます。

[東京都中学校英語教育研究会] E-mail: webmaster@chueiken-tokyo.org
東京都中学校英語教育研究会調査部担当副会長 山本展子


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