「リーディング」教材から「オーラルコミュニケーション」活動への展開を目指した、高校教室用テキスト。日本の高校生の視点から題材を精選し、英文を読むことを通して既習の文法・表現を復習し、最終的には題材について自分の意見をまとめ発表させる。これら作業を通して、ライティングの学習領域にも連関させる。4色カラー版。

●著者紹介
内田 雅克
早稲田大学高等学院英語科教諭
東京大学大学院博士前期課程修了
Arizona State University 客員研究員
著書 『忘れてしまった高校の英語を復習する本』 (中経出版)
ハリエット・ギブス(Harriet Gibbs)
早稲田大学高等学院英語科教諭
オクスフォード大学修士号取得
英文校閲 『忘れてしまった高校の英語を復習する本』 (中経出版)

●はじめに
■テキストのねらい■■■
本テキストは,さまざまなトピックを論理的に考え,それを知的(正しい)英語で表現する力を養うことを目的にしています。このテキストを手にする学習者の多くは,日本語を母語とし,日本文化の中で生活しているでしょう。しかし周知のように,言語や文化の異なる人たちとのコミュニケーションが不可欠の時代になっています。英語が共通語としての役割を担っていることも事実です。そこで,わたしたちは「英語」をコミュニケーションのための「共通語」として学習する立場にあるわけです。それは英語を母語とする人たちの真似をすることではありません。ネイティブのように発音する,ジェスチャーをする,くだけた英語をペラペラとしゃべる…,それが「かっこいい」のでしょうか。わたしたちは「共通語」としての英語を学習して身につけているのです。多少の訛りがあってもいいでしょう。シャイな話し方でもいいでしょう。ペラペラと話せなくてもいいでしょう。正しい英語を聞いて理解し,正しい英語を用いて,自分の考えをしっかり表現できる力を身につけることが何より大切なことではないでしょうか。
このような目的のために,このテキストは以下のような「合体」を試みました。
文法力・読解力+ コミュニケーション能力
「文法」というと最近はすっかり悪者・嫌われ者のイメージが強いようです。本当にそうなのでしょうか。朝から夜まで,その言語の中に生きていれば,文法を意識することは少ないでしょう(それでも‘正しい’言語を身につけるためには,文法は必要です。私たちも学校で国文法を学習しましたね)。しかし,第二言語として学習する際には,体系的に整理された文法は学習を効率的にしてくれるものであり,正しい目標言語の習得に貢献してくれるものです。文法学習に終始してしまうことが問題なのです。文法はあくまで効率的な学習の手段であり,そしてそれを「使う」という意識が求められます。そこでこのテキストでは,おそらくみなさんの多くが学習してきたであろう文法事項を確認できるようになっています。自分の理解を確認し,さらにそれらを用いた表現を自分の考えや意見を作成する段階で積極的に使って欲しいのです。そのことによって,これまでの文法学習が生きてくるはずです。
「講読」についても同様のことが言えます。読解力をつけるために,「講読」の授業では日本語を用いた理解確認,文法的な解説,表現を覚えることなどが中心になるでしょう。それも非常に大切なことです。このテキストでは,その確かな読解力の上に,「読んだ」内容に関して「考え」さらに「自分の意見を述べる」段階にまで学習を発展させていきます。
英語+ 社会科
近年,イマージョン・プログラムという,他教科を英語で教えるという方法がとられるようになってきています。コンテクストの中で習得目標の言語に少しでも多く接するということは,有効な手段でしょう。このテキストでは,現代社会のさまざまな(なるべく高校生,大学生が興味や関心を持てるようなものを選んでいます)事象,問題を取り上げています。そうした問題に対して,情報を収集したり,自分の意見を構築したりする部分は社会科の活動に含まれるでしょう。教科の境界を越えて,英語を「手段」として捉えた学習姿勢を身につけていきます。
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