『小学生の国語』基本情報 編集委員からのメッセージ

子どもの学びの過程に寄りそう
書写教科書であって欲しい

松本仁志 写真
松本仁志 広島大学大学院 教育学研究科 准教授

教科書の手本を見ながら子どもたちが半紙やプリントに練習している…。当たり前のような書写の授業風景だが、これだけでは個々の子どもに書写の学びが成立しているかどうかはわからない。

ある子どもは、手本の字形を見ているようで実は記号としての文字を見ているだけかも知れない。また、ある子どもは、手本を見ているようで実は給食のことを考えているかも知れない。

書写の授業では、まず「自分の文字をよりよいものにしたい」という動機づけが必要である。何のために書写を学んでいるのかが子どもに理解されていないと、機械的にただ書くだけの活動に終始する授業になってしまう。成果も実感できない。

その上で必要なのが、文字・文字群の形や書き方について考えながら書くことである。考えることをしないとこれまた機械的な模倣活動に陥ってしまう。考えながら書く習慣を身につけることは、TPOに合わせて書き方を判断する力の育成につながる。

書写の教科書は単なる手本集ではない。自分の文字をよりよいものにするために、どうしたらよいのかを考え、気づき、気づきを確かめながら書いて力にしていく。子どものこの学びの過程に、そっと寄りそって支援できるような書写の教科書であって欲しいと思う。