『小学生の国語』基本情報 編集委員からのメッセージ

声を届ける,目で届ける,しぐさで届ける

高橋俊三 写真
高橋俊三 前群馬大学教授

教師の発問に応えて手を挙げる小学生の手は,ぴんと伸びて可愛い。肘も手首も指も一直線。指先の一本一本が教師に向ってエネルギーを発し,指が掌が腕が,「当ててーッ」と叫んでいる。全員を当ててやりたくなる。

目は。その目にもエネルギーが込められている。情熱的だ。彼らは,全身で応えているのだ。

勿論,コミュニケーションの重要手段は言葉だけれど,言葉だけが相手に伝わっていくのではない。とは言ったものの,伝わっていくのは,はたして言葉だろうか。そうではない。「声」なのだ。言葉は声に乗せられ,目で押され,体に担われて,相手に届けられるのだ。言語コミュニケーションを支える非言語コミュニケーションがあることを,特に小学生を相手にする教師は忘れないようにしよう。

言った言わないが問題なのではない。相手に届けられたか届いたかが問題なのだ。相手の声を受けとめたか否かが問題なのだ。きちんと伝えるには,論理的に整えて話すことと同時に,相手にきちんと届けるという心構えが大切だ。

子どもたちの言語生活が,豊かに育っていくように,力を尽くしたい。