「たった17音で感動を凝縮するなんて技は、とても私にはできません」「俳句を作れるだけの鋭い感性は持ち合わせていません」「語彙が貧しいものですから」
俳句って楽しいですよ! とお勧めすると、だいたいこのような拒絶反応が返ってきます。
が、が、しかし、そんな皆さんも「句会ライブ」という俳句のゲームを一たび御一緒すると、さっきまでの言葉が嘘のように軽やかに「俳句」を作り、「句座」を楽しんで下さるようになります。「私のようなものに俳句が作れるなんて思ってもいませんでした!」
私が全国の学校を回って展開している「句会ライブ」は、俳句を使った言葉とコミュニケーションの授業です。日本語が話せる人なら誰でも5分で一句できるという技を一つレクチャーするだけで、大人でも子供でも魔法みたいにポイと一句できてしまいます。そしてその日のグランプリとなるべき一句を全員で決める議論は、笑いあり、涙あり、拍手あり! 気が付いてみれば、感動の2時間を共に過ごしていたということになるのです。
例えば、ほら、皆さんの頭上に広がっているのは夏空。「夏の空…」とつぶやけば、ちょうど5音。
夏の空 ○○○○○○○ ○○○○○
これでもう「俳句」という文学作品の約三分の一が出来上がっているのです。あとは、残りの7・5つまり12音分、なにかお話をすれば、ハイいっちょあがり! で「俳句」ができちゃうのです。このような仕組みが俳句の「型」であり、さりげないつぶやきを俳句に変えてしまうのが「季語」の力なのです。
この度の三省堂『小学生の国語 五年』の「句会を楽しむ」は、そんな「句会ライブ」の感動の一端を味わっていただければと意図した単元。
夏の空句会を楽しむ単元だ
先生と句会をするよ夏の空
「句会」の持つゲーム性は、子どもたちが「言葉」に興味を持ち始める動機づけとなります。「俳句」が伝統的に培ってきた様々な「型」は、自分の心を表現したくてもできない子どもたちに、表現技術をシステマチックに教える強力な手立てとなります。それもこれも「俳句」がたった17音の短詩型文学である強みなのです。
「まさか俳句でそんなことができるなんて?」とまだ疑っている貴方、ともかくも俳句の国の扉をほんの少し開けてみて下さい。大人も子どもも瞬く間に夢中になってしまう、思いもかけない言葉のワンダーランドがそこに広がっているのですから。