今日の社会は激しく変化を続け,複雑化の度合いを深めている。このような社会における「生きる力」をいかにして育むか。これが現在の学校教育に課された課題である。
社会がいかように変化しようとも,学校教育において基礎的な知識を伝授することの重要性は変わらない。だが,これからの時代は,それだけでは足りない。激しく変化を続ける社会においては,新たな知識が大きな意味を持ってくるからだ。今日と同じ明日が来るとは限らない。もはや,過去に伝授された知識のみで,さまざまな問題に対処できる時代ではなくなってしまったのである。
いま必要とされているのは,必要に応じて新たな知識を取得する力を育むこと。新たに取得した知識を,自分のこれまでの知識や経験と関連付けて活用する力を育むことである。つまり,「生きる力」という観点からすると,過去に習得した知識の量だけが「学力」なのではない。必要に応じて新たな知識を取得して活用する能力もまた「学力」なのである。ここで学力観の転換が必要になるということだ。
注意を要するのは,この新たな学力観においても知識の集積が軽視されているわけではないということだ。過去に集積した知識だけでは,変化に対応できないといっているのである。知識は多いに越したことはない。ただ,それだけに頼っているようでは,社会の変化に対応できないのである。
急激な変化を続ける社会においては,勉強は学校だけですればいいのではない。学校で勉強したことは,社会に出るころには役に立たなくなっているかもしれないからだ。だから,社会に出てからも学び続けなければならないのである。
いつでもどこでも「学び続ける人」になるためには,主体的で自立的に学ぶ姿勢が肝要である。「教師に言われたから勉強する」というのでは,とても学び続けることはできないだろう。このあたりから「教師中心から学習者中心へ」というような発想が出てくる。教師が上から教えこみ,上から考えさせるのではなく,子どもが自ら進んで学び,自ら進んで考えるようにしなければならないということである。