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今月は先月の第59回フーンコラムのつづきを書きます。 前回の私の返信につづき,再度N先生からの折り返しメールがきました。 ご指導ありがとうございました。今まで私がしてきた指導と違うのでびっくりしました。私の授業では,三単現の英文などを板書して文法の説明をし,そのあとにそれらをノートに写させていました。そのことに,かなり時間をとりました。ゆっくり書く生徒もいますから。ですから,口頭練習する時間があまりとれなかったのです。先生の方法ですと,個人で発話する回数はどのくらいだったでしょうか。かなり多いと思うのですが,生徒は飽きてきませんか。授業中に板書を写させることはなかったのですか。それから,疑問文などの指導はどのようになさいましたか。密度の濃い練習をさせるとおっしゃいましたが,具体的にどんなふうにするのですか。お伺いできれば幸いです。 小生は返信をしました。 まず,個人で発話する回数について言えば,最低5回は行います。多いときには10回を超えます。皆の前で発話することに慣れれば,生徒は発話に自信を持つようになります。それが,徐々にできるようになっていくのですから,張り合いがあり,飽きることはなかったように思います。板書をノートに写させることは,毎時間はしません。ただし,各レッスンの最後に,文法のまとめのようなものを板書し,ノートに書かせました。ノートに写すのは,結構時間がかかるので,その時間があったら,生徒に1回でも多くの発話をさせて授業の効率を上げたいと考えていたわけです。密度の濃い授業とは,その時間で生徒に何を身につけてほしいかを教師が目標として定め,それを徹底して教え,それに生徒が呼応して集中力を切らさずに練習を続ける授業だと思います。当時,何人かの生徒たちは「英語の時間が終わるとずいぶん疲れる」と言っていましたが,「大きな声で発話するのでストレス解消になる」と笑いながら語ってくれる生徒もいました。 次に疑問文の指導です。NEW CROWNでは,三単現の疑問文の初出は,1年生Lesson 6 Section Aですね。私でしたら,三単現の疑問文に入る前に,Lesson 3 Section A(二人称の疑問文)にいったん戻り,復習がてら,次の文を,全体→グループ→ペア→個人の順で読み,暗唱させます。 Do you practice football every day? No, I do not. I practice it every weekend. 復習ですから,この作業は暗誦を含めて10分もあればできます。その後,Lesson 6 Section Aに戻り,肯定文のKoji plays tennis.を,全体でchorusしてから,疑問文 Does Koji play tennis ?のセンテンス・カードを黒板に貼りつけ,Doesとplayにアンダーラインを引きます。次に,応答文 Yes, he does. No, he does not.のセンテンス・カードを貼りつけ,簡単に意味内容のみ説明します。 さあ,ここから生徒の発話が始まります。全員もれなく個人読みができるようになるまで,前回のように次のような順序で練習し,最後は暗誦までもっていくわけです。
次に3人1組のトリオを作り,1人をKojiに見立て(または実名でもいいのですが),しぐさのまね→質問→返答をさせます。 [生徒 A](テニスラケットを振るまねをする。) *生徒Aによるしぐさのものまねを英語で表そうとすれば,もちろん,“Is Koji playing Tennis?”などと,「現在進行形」を使うのが正確かもしれませんが,ここでは,しぐさによって,その習慣を表しているくらいに考え,練習させるとよいでしょう(もちろん,混乱を避けるため,生徒にはそのようなことは言う必要はないですが)。 いろいろなスポーツのしぐさを使ってこの練習をとにかく全員にやらせます。時間があれば,2〜3のトリオを前に出し,対話させます。ここまでで25分くらいかかります。対話がしっかりできていれば,教科書にある本文の読みと理解は早くできると思いますが,もし50分の授業内でできないようでしたら,Section Aを2時間に分けて,2時間目に本文の理解と定着を図るワークシートやUSE ITをやらせてもよいと思います。 TMにも書いてありますが,三単現は日本語にない概念なので,1年生には難しいのは当然です。したがって,性急に定着を求めないで「卒業するまでに何とか定着すれば上々」くらいの気持ちで指導してください。私の場合,三単現の指導の直後にあるテストについても,なるべく三単現の知識をばかりを問うような問いは配点を低くしました。そして,三単現の指導後も,スパイラル方式で,終始さりげなく言語活動中に三単現を取り上げることが大切です。 毎日,3学年分の教科書と付属教材を駆使し,小テストやまとめのワークシート,それに加えて自己評価表までを作成するという,目の回るような忙しさの中,よく頑張っていらっしゃいますね。感服しています。さらに,毎日の生活指導や部活動など,学校の仕事は本当に限りがありません。どうぞお体を大切になさってください。また,いつでもお返事お待ちしております。
後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。 ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。 Copyright (C) SANSEIDO publishing co.,ltd. All Rights Reserved. |