1 毛筆と硬筆の関連は,どのように考えられていますか。
学習指導要領には「毛筆を使用する書写の指導は硬筆による書写の能力の基礎を養うようにすること」という文言があります。『中学生の書写』はこれを踏まえて次のように単元を構成しました。
・各単元のまとめに,硬筆課題を用意しました。
単元内の各教材で習得した技能が硬筆に定着したことを,ここで確かめることができます。
また,手本を見ずに書く(実際には教科書の別ページに字形例を掲載しています)などの日常の書字場面に近い設定の課題を用意し,日常生活に生きる書写力となるよう工夫しています。
・各教材には,毛筆課題と充実した解説図版を用意しました。
各教材で取り組む毛筆課題には,毛筆学習による技能の習得がより確実なものとなるよう,解説図版を充実させました。技能の理解に役立つ朱墨図版や,毛筆課題を整えて書くために必要な既習事項を確認できる図版などを,大きく掲載しています。
また,毛筆課題と解説図版はそれのみで見開きを構成しています。毛筆課題に関連する内容にしぼって見開きを構成することで,生徒が集中して毛筆課題に取り組むことができるよう配慮しています。
2 「毛筆字形例」は,いつ使うのですか。
「毛筆字形例」は教材の一部です。授業で毛筆課題に取り組む際に使用します。すべて見開きで構成し,運筆や字形についての解説を字形例と同時に見られるように,大きく豊富に掲載しています。学習者は,学ぶべき内容(書写技能)を意識して,じっくり取り組むことができます。
3 毛筆教材ラインナップの特徴を教えてください。
難しい字を避け,一度に書く文字数も多くなりすぎないように設定しています。字形は穏健・中正な書きぶりです。中学生の書写教材として,ねらいを焦点化して取り組めるようにと考えました。
24年度『中学生の書写』 | 18~23年度『現代の書写』 | |
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一年 | 「和音」(楷) 「思いやり」(楷) 「自由」(行) 「元気」(行) 「未来」(行) 書き初め 「日進月歩」(行) 「輝く生命」(楷) |
「和音」(楷) 「進展」(楷) 「大きな白い鳥」(楷) 「元気」(行) 「未来」(行) 「清秋」(行) 書き初め 「日進月歩」(行) 「輝く生命」(楷) |
二・三年 | 「太陽」(行) 「温和」(行) 「紅花」(行) 「風の音を聞く」(行) 書き初め 「燃ゆる思い」(行) 「大望を抱く」(楷) 「春遠からじ」(行) 「江山景物新」(楷) |
「紅花」(行) 「未知へと歩む」(行) 「金色の丸い月」(行) 「開かれた社会」(行) 書き初め 「燃ゆる思い」(行) 「大望を抱く」(楷) 「春遠からじ」(行) 「江山景物新」(楷) |
(楷) 楷書教材
(行) 行書教材
4 漢字表はどのようなものが用意されていますか。
『中学生の書写 一年』では,小学校の6学年に配当されている1,006字について,硬筆による楷書と行書の表を用意しました。楷書は,小学校国語科書写用教科書『小学生の書写』と同じ執筆者ですので、小から中への接続がスムーズです。『中学生の書写 二・三年』では,上の1,006字以外の常用漢字について,硬筆による行書の表を用意しました。平成22年に告示された新しい「常用漢字表」に対応しています。
1 学習や生活に役立つ書写の学びのために,『中学生の書写』は何に重点を置いて編集されていますか。
学びの課程で「考える」ことを大切にしました。
生徒が字を書くときはいつでも,書写の授業で学んだことを思い出し,習得した技能を生かしてほしい。そのためには,自ら思考・判断しながら書く力を育む必要があると考え,学びの課程で「考える」機会を大切にしました。
2 学習や生活に役立つ書写の学びのために,『中学生の書写』はどのような工夫をしていますか。
『中学生の書写』は,「生徒のふだんの字が変わる」ことを目標とし,次の2つを柱に編集しました。
一つ目の柱|基礎・基本がしっかりと身につく構成
・単元名,教材名で学習のねらいをはっきり示し,学習の流れを一望できる紙面構成としました。
生徒は「何をどのように学ぶのか」という見通しをもって授業に臨み,的確な振り返りを行うことができます。また,各教材は,考える ⇒ 気づいたことを話し合う ⇒ 気づきを生かして書く ⇒ ねらいに照らして振り返る,という学習の流れで構成し,考える機会,判断して書く機会を保障しました。
・単元の最後には,単元で学習したことを硬筆で確かめる教材を用意しました。
単元の最後の「学習を生かそう」では,その単元で学習したことを硬筆で確かめます。この教材の課題の字形例は,あえて別のページに用意しました。そうすることで,生徒は「字形例を見ながら書く」のではなく「学んだことを思い出し,課題(文字)に当てはめながら書く」という状態に置かれることになります。日常的な字を書く場面により近い条件で書写技能の定着を確かめることを意図した,構成上の工夫の一つです。
二つ目の柱|学んだことが日常に生きる教材
・学習事項と日常生活をむすびつけるような教材を配置しました。
生徒が,ふだんの字を書く場面で,書写の時間に学んだ事を思い出し,生かしていけるよう,次のような点に配慮して教材,書式を選定しました。
1)相手や目的を意識して書く
2)効果的な書き方を工夫して書く
3)身のまわりの文字に関心をもち,それを生かして書く
3 『中学生の書写』は,中学校での書写学習のゴールをどのように考えていますか。
「生徒のふだんの字が変わる」ことと考えます。つまり,学習や生活のなかで,相手や目的に合わせて適切に判断し,書写技能を統合的に運用する力と習慣を身につけることです。
1 いわゆる「デジタル教科書」はあるのですか?
教科書準拠の指導用デジタル教材をご提供する予定です。プロジェクターでスクリーンに映したり,電子黒板や大型ディスプレイを使用したりして,普通の教室で活用できます。
主に次の2つの機能を,従来の板書と組み合わせて使うことで,今までの授業スタイルを変えず,より理解度を高めることができます。
・教科書の紙面をそのまま投影したり,一部分を拡大したりする。
・姿勢や執筆,基本点画の筆使いや教科書の毛筆課題の示範など,教科書に即した動画を再生する。
2 教科書の紙やインキは,どのようなものを使っていますか?
環境の保護,資源の節約のため,原料や製法に配慮した,環境にやさしい紙を使用しています。また食用の大豆からつくられる油のほか,非食用とされる植物由来の植物油,及びそれらを主体とする廃食用油をリサイクルした再生油を包含した,印刷インキ工業連合会認定の植物油インキを使用しています。
3 「拡大教科書」とは何ですか?
「拡大教科書」とは,弱視児童生徒のために検定済教科書の文字や図形を拡大等して複製し,図書として発行しているものです。
小社では,拡大教科書を文部科学省の教科用拡大図書標準規格に準じて本文の文字サイズが3種類になるよう作成いたします。