過去20年間の「入試問題の本文そのまま」を頻度別に四つに分類し、頻出用語を実践的な形で知ることができるだけでなく、志望大学に応じた効率のよい学習ができます。また、難解な言葉には意味を分かりやすい説明を加えていますので、効果的な学習効果が得られる最適の学習書に編集しています。

●本書の特色
- 主要大学の過去20年間に出題された「入試問題の本文そのまま」ですので、実際の入試問題や頻出用語をつかむことができます。
- 設問すべてを難易度別に四つに分け、志望大学に応じた効率のよい学習効果が期待できます。
- 教科書と併用して学習すれば、定期テストレベルの基本的な用語から、入試問題のポイントまでつかめます。
- 受験生が手薄になりがちな近代史・現代史が充実しています。

●はしがき
世界史の入試問題の出題方法にはいくつかあり、大学によりその傾向が異なることはご存知のことでしょう。では、空所(空欄)補充・文章選択・正誤・論述とさまざまな方法があるなかで、一体、受験生諸君はどの方法に慣れておかなければならないのでしょうか。
たしかに、早慶上智・立教・青山学院・南山・関関同立といった世界史難関大学の場合、文章選択や正誤問題が合格の決め手になることは各々の過去問をみれば一目瞭然です。また、国公立大学の二次試験では、大半が論述問題です。しかし、そのことだけにとらわれて、その対策のみに走った場合、はたして最良の結果を出すことができるのでしょうか。それはいささか疑問です。
私の入試問題についての長年にわたる研究や、数多くの生徒の声をまとめ合わせた結果から言えることは、
- 全入試問題の約50%が“空所補充問題”であり、とくに中堅校〜短大に至るおもな私立大学は、その70%近くが“空所補充問題”です。
- ほとんどの大学の合格最低ラインは約65〜70%(学校や年度によって、多少変化しますが)ですので、(1)のことを考慮に入れると、“空所補充問題”だけを確実に得点していけば、たとえ、その他の問題が3割程度の出来であったとしても、世界史としての合格ラインは越えます。
- 文章選択・正誤・論述問題については、過去の受験生たちがよくこんなことを言っていました。『やはり、知識量がものを言うよな! 結局、文章選択問題も正誤問題も、文章中の単語がキーになるのがほとんどだし、論述問題に至っては、いくら文章構成力があったって、単語を知らなけりゃ、まったく手がつかないしな!』
そのとおりなのです。結論を言えば、すべての出題方法の基礎に『知識』があり、それを増やす方法としては、“空所補充”的学習法が必要なのです。
予備校での私の授業は、『速効のパーフェクト板書』を完成させていく形で進めています。まず、黒板一面に空所を施せるような形の未完成な『速効のパーフェクト板書』を書き、解説しながら空所を埋めていきます。それを、わが生徒は書き写して、自らの学習の際、“空所補充”をすることによって、知識を増加させているのです。その方法で皆を合格に導いています。畏れながら、分かりやすく、覚えやすい講義として、定評をいただいております。
さて、以上のことから、“空所補充”の必要性は分かっていただいたと思いますが、では、これをどのようにわが知識として保存していけばよいのかが問題となってくるのです。
つまるところ、繰り返しという努力に勝るものはないのですが、それでは脳がありません。そこで、本書が登場するわけなのです。
世界史入試問題には出題パターンがあります。それは、『一つの用語をまったく同じ文章中の空欄補充として、さまざまな大学で出題している』のです。
例えば、その一例を挙げてみましょう!(すべて同じ年の入試です)
(1) イギリス外相[ ]はユダヤ財閥の資金援助を得るため、シオニストたちにユダヤ人国家の建設を(関西学院―商)
(2) イギリス外相[ ]は、シオニスト連盟のロスチャイルド卿に宛てた書簡という形式で、戦後、パレスチナを(学習院―文)
(3) [ ]:彼は、パレスチナ問題でユダヤ人に第一次世界大戦後の建国を約束した。(学習院―経)
(4) 他方では[ ]によって出された宣言によって、パレスチナにユダヤ人の「民族的郷土」の建設を約束(青山学院―法)
答えは、すべて「バルフォア」です。
以上のように、たった1年の試験問題のなかでも、似通ったパターン(というよりは、ほぼ同じパターン)で出題されていることが明らかだと思います。このことは、世界史のあらゆる用語についても言えます。そのすべての出題パターンを網羅できれば、入試に出題される知識の9割以上を押さえることができるのです。残りの1割は、たしかに過去に出題されていますが、やや出題者の趣味的知識色が濃く、極端なことを言えば、もう二度と出題されないようなものもあり、合否とはまったく関係のないものと思ってよいでしょう。
また、さっきの例をふたたび見てみましょう。
答えの「バルフォア」はイギリスの外務大臣として有名ですが、教科書・用語集・参考書では「バルフォア宣言」で掲載されており、受験生のなかには人物名であることを見逃してしまい、宣言名としてだけで覚えてしまう人が多く、そうなると、これらの問題には答えられなくなってしまいます。
このように、入試に出るパターンで、必要なものをどれだけ確実に覚えられるかが問題なのであり、前述したような「パターン」で覚えることができれば、入試に直結した暗記法となり、かならずやその効果は、入試本番にあらわれることでしょう!
さらに、本書のねらいはもう一つあるのです。
世界史選択者にとっての最大の悩みは、他の教科よりも、広い分野で、かつ、数多くの用語を覚えなければいけないということでしょう。しかし、現実には、そこまで覚えるための時間はなく、また、なかには“こんなに覚える能力はない”とあきらめてしまう人が多いと思います。しかし、それは間違いです。たしかに、世界史難関上位校を受ける人はすべてを覚えなければなりませんが、中堅校・女子大・短大・センターをねらっている人にとっては、必要もない用語があるということです。つまり、大学によって、必要・不必要の区別を付けられれば、効率のよい受験勉強になることでしょう。
よって、本書では、過去20年間の全国主要大学の入試での出題率と、今後の出題予想を考慮して、必要頻度を掲載することで、あらゆるレベルで受験生に対応できるような構成にしています。
さあ、この本をおおいに活用し、受験の勝利者になりましょう!
最後に、本書で受験を勝ち取り、もし私の名前を覚えていたならば、本書を手に『これで合格しました!』と言っていただければ、私にとって、最高の喜びであります。君の『この言葉』と『喜びの笑顔』を待ち望んでいます。
2008年 初夏
佐藤 幸夫 |