このページを閉じる |
1.はじめに 新小学校学習指導要領(2008年3月8日告示)の外国語活動の目標は「コミュニケーション能力の素地を養う」ですが,その中に「外国語の音声やリズムなどに慣れ親しむとともに,日本語との違いを知り,言葉の面白さや豊かさに気付くこと」とあります。様々な活動を通じて,日本と外国の生活,習慣,行事の違いを知ると同時に,日本語と英語の音,リズム,言葉の違いに気づくことで,児童の興味や関心は広がります。小学校の英語活動は,心や体が柔軟な児童が「英語の音感」を身につける最良の機会だと言えるでしょう。 2.英語の音感をつけるために 「英語の音感」を身につけるためには,英語活動は常に「音」で始まり,「音」と共に進めるべきです。繰り返し聞いて,口にすることで,英語の音やリズム,イントネーションが「音感」として身につきます。中学校で本格的に単語のつづりや文法を学習する際も,この「音感」が大いに役立ちます。小学校の英語活動では,英語独特の音とリズムに慣れるため,児童にはなるべくたくさんの音のインプットとアウトプットの機会を与えてあげたいです。そこで英語の音を楽しみながら「音感」を身につける方法の1つにチャンツがあります。 3.チャンツを使った英語活動 チャンツの利点は次の5点です。
チャンツはメロディーがないので,児童はリズムや個々の音をより強く意識し,言えるようになります。模造紙などにイラストとともに英文を書き,児童はこの模造紙を見ながらチャンツを言います。低,中学年であればイラストを見ながらチャンツを言い,高学年になると,次第に文字を目で追う児童も出てきます。「音」→「文字」→「読み」の流れをスムーズにするために,ぜひ中学校以降,小学校で取り扱った教材(歌,チャンツ,絵本)を「読み」の学習用教材として取り上げ,「聞く」と「読む」をつなげる機会を作ってほしいと思います。 ここでいくつかチャンツをご紹介しましょう。 (1) アルファベットチャンツ (太字・下線の部分を,リズムをつけて強く読む) The
Alphabet Chant アルファベットには「エイ」という「名前」と,「アー」という「音」があることに気づくチャンツです。子音の無声音など英語特有の音に気づかせるチャンツでもあり,授業前のウォームアップの活動に適しています。カリキュラムのテーマに合わせて「動物チャンツ」,「野菜くだものチャンツ」など様々な26単語のアルファベットチャンツが作れます。 (2) 縄跳びチャンツ Jump
Rope Chant 体を動かしながら楽しめるチャンツです。体育の時間との連動で,アルファベット26文字の最後まで跳べるか挑戦します。また他にも校庭に出てクラス全員でできる大縄跳びのチャンツもあります。 (3) リズムが良く,自然と単語が言えるようになるチャンツ Twelve
Months 月や曜日の名前は,小学生のうちから言い慣れておくと,中学校に入ってからつづりを覚えるのも楽になります。何度か練習して言い慣れたら,今度はクラス全員が協力して,1つのチャンツを言います。最初の2行は全員で,残りの月は誕生月の児童だけが,大きな声で言います。流れが途切れず,全員がリズムに乗って言えたらとても盛り上がります。 (4) ゲームをする時に使えるチャンツ Roll
the Dice ゲームでさいころを振る前に,「誰の番?」「私よ」と会話チャンツを入れると,速度を落とさず,リズム良く会話のキャッチボールをする「音感」がつきます。
4.おわりに 英語学習経験が2年の小学5年生の児童を観察していた時のことです。音で聞いたチャンツを,イラストを参考にして言えるようになっていましたが,「読み」の指導は受けていませんでした。その児童は初めて見るチャンツの英文を手にして「読んでみようか」と言いました。しかし,未習の単語が多かったので,1つ1つの単語の読みをあきらめ,そのかわりに, da-da-da-da,
da-da-da-da, da-da-da-da
ダダダダ…と言い出しました。それはいつものチャンツの速度を落とさず,リズムとアクセントをつけた「読み」でした。児童が英文を読もうとすると,それまで自然だったリズム,速度,そして発音までが不自然になることが多く,せっかくついた「音感」が忘れられてしまいます。楽しかった「音」の習得体験をいかに中学校以降の「読み,書き,文法」の学習体験につなげるかを真剣に研究しなくては,と強く思ったエピソードの1つです。 下 薫(しも かおる) Copyright (C) SANSEIDO publishing co.,ltd. All Rights Reserved. |