(1) 新たな気持ちでスタート
夏休み明けの最初の授業では、様々な工夫が考えられる。教科書から離れてゲーム的な楽しい活動をしたり、中学2、3年生であれば「夏休みの思い出」を話題にした表現活動をしたりすることも可能である。また、夏休みの宿題の確認や答え合わせ等を行うこともあるだろう。
いずれも大切なことではあるが、今後の授業をスムーズに進めるために、生徒の目をもう一度英語の教科書に向けさせ、7月までに学習した内容を簡単に振り返らせる必要がある。そして、「英語が苦手」と感じている生徒でも、新鮮な気持ちで、英語の学習に参加できるような工夫が、夏休み明けの最初の授業では大切だと考えている。
(2) 夏休み中は、英語の音声から遠ざかっている
私は、聞く、話す、発音等、音声の指導に十分時間をかけた上で、文字を書かせるように指導しているが、夏休みになると、生徒の音声に触れる時間は減る。休み中の宿題は、スピーチ原稿、文型や単語のドリル等、文字を書く宿題が多くなりがちである。音読の録音、ラジオの英語講座を聞く等、音声に関する宿題を課すこともあるが、夏休み中に、英語の音声に触れる機会、指導を受ける機会はあまりないと思われる。夏休み明けの授業は、あらためて「音声→文字」の順で学習することを示すよい機会だと考えている。
(3 )夏休み明けの授業で行う活動
以上の2点を踏まえ、夏休み明けの最初の授業では、4月〜7月の教科書の学習内容を用いて、次のような活動を行っている。
- 4月〜7月に扱った教科書のLessonの本文中のイラスト数点をコピーする。
- コピーしたイラストを1枚のハンドアウトに切り貼りしてまとめ、生徒に配布する。
(1年生のハンドアウトの一例)
- イラストの場面の英語を聞かせて(CDを聞かせるか、教師が読み上げる)、どの絵のことを言っているかを選ばせる。
(例)
Paul: Look at this flower. It’s beautiful.
Kumi: Stop!
- 生徒に、どの絵を選んだか答えさせる。
- 絵を見ながらその英文を言わせる。全員でくり返して練習したり、数名の生徒に個別に言わせたりする。 ※3. 4. 5. ではまだ文字は見せない。
- 生徒の学習状況によっては、語句や文の意味を日本語で簡単に補足説明する。
- 絵を見ながら、ノートに 5. の英文を書かせる。
生徒の学習状況によっては、単語を1〜2語示したり、文を空所補充形式にしたハンドアウトを配布してもよい。
- 教科書を開かせて、正解の文を確認させる。
- 時間に余裕があれば、練習した文から1、2文を選び、ディクテーション(もしくは部分ディクテーション)を行う。
(留意点)
3. のリスニングは簡単に答えることができるので、全員が活動に参加できる。 5. では、同じ文を列の全員の生徒に言わせるなどして、できるだけ多くの生徒に個別に口頭で発言する機会を与えることが大切である。口頭練習が不十分だと 7. で文を正確に書くことが難しくなる。
上記 1.〜9. の活動では、7月までに音読をした教科書の英文やイラストに触れるので、英語が苦手な生徒でも理解しやすい。また、英語をまず音声から学習し、その音声を頭の中に響かせながら文字で書いてみることで、「音声→文字」の指導手順をあらためて生徒に示すことができる。
引用文献:平成18年度版『NEW CROWN』 1年 (三省堂)
渓内 明 (たにうち あきら)
足立区立第十中学校教諭。ELEC同友会英語教育学会常任理事。東京都中学校英語教育研究会研究部部員。
公開授業や研究発表、ワークショップの講師を務めるなど、多方面で活躍している。
Copyright (C) SANSEIDO publishing co.,ltd.
All Rights Reserved. |