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Life in Alaska(平成15年度版三省堂高等学校英語教科書EXCEED English Series I Lesson 2) 1.EXCEED English Series 採用の経緯本校では,平成15年度よりEXCEED Iを採用しています。以後,学年が進むにつれてEXCEED II,EXCEED Readingと使用しています。本年度の1年生も改訂版のEXCEED I を利用して授業を進めています。採用当初は,県内の他校の先生方から「勝山高校は思い切った教科書採用をしたね」と言われたものです。それは,「EXCEEDは他の普通科高校が採用している教科書に比べ,使用されている言語材料や英文の量などが軽いのに大丈夫か?」という意味でした。 しかし,本校がEXCEEDを採用した理由はまさにそこにありました。中学校の英語を終えて高校に入学したばかりの生徒が,難解な文法をたたき込まれ,未習語彙が多く並ぶ長文を読解(というよりは解読)することを求められることによって,早い段階で英語離れが起こります。本校では,@中学英語と高校英語の橋渡し(=Bridging)を,Aいわゆる訳読方式による読解や文法の習得のみに偏らない英語力養成を,との考えに立ったとき,EXCEEDが格好の教科書であるとの結論に至ったのです。 2.Life in Alaska の授業実践さて,本稿執筆の直前に行った実践例を紹介します。扱ったのはEXCEED I Lesson 2のLife in Alaskaです。
こんな行動力のあった星野氏をどう思うか,もし自分が同じような状況にあったとき村長に手紙を書こうという発想が浮かぶだろうか,またその発想を行動に移すことができるだろうか。Section1を読み終わってそんな問いかけをすると,生徒たちは星野道夫とはどんな人物なのか,そして,彼が長年生活したアラスカとはどんなところなのかと思いを巡らせます。ペアまたはグループで話し合いをさせれば,ちょっとしたbrainstorming にもなります。 Section 2ではアラスカの気候が紹介されています。生徒には“We can't live without snow.”に続く老人のせりふを言わせてみます。“You are the old man. You are now talking with Mr. Hoshino. How would you say the words? Imagine the situation and try to perform.”と言うといろいろ工夫を凝らして言ってくれます。もちろん,普段は音読やシャドーイングの練習もさせてはいますが,このように本文中のせりふを場面を想像しながら言わせてみると,ひと味違った練習になると思います。このような活動は,生徒にとってはもはや「練習のための音読」ではなく,イマジネーションを働かせて楽しみながらできる「スピーキング」に近い活動の一つだと思います。グループ内で各自発表させ,the best speakerを決めさせれば,相互評価にもなります。 また,教科書のp.21(改訂版)に写真がありますが,その中に3頭のシロクマが同じ方向を向いて写っているものがあります。その写真のシロクマ1頭ずつに吹き出しをつけたものを印刷して生徒に配りました。そして,“What are they looking at? What are they talking about with each other? Make your own story about this picture.”と指示をして,自由に対話を作らせてみたところ,次のような作品ができあがりました。
@では,「アラスカにスーパーなんてあるの?」というオチがつけられていて,笑いを誘います。Aでは,Section 3の内容が盛り込まれていて,授業で読んだことがアウトプットにつながっていることが窺えます。B,Cには,星野道夫さんが登場していて,生徒が本文との関連を意識しながらも,creativityを発揮しています。私は,これらの作品(もちろん吹き出しに手書きのままのもの)を何点か印刷して生徒に配り,“Which do you like best? Talk in your group and choose the best one. You need to give a reason why you chose it.”と投げかけます。 上の@〜Cをご覧になってお気づきの通り,これらの作品には文法等の誤りが含まれています。しかし,私はあえてその誤りを指摘することはせずに,このようなグループワークをさせました。すると,生徒の関心は自ずと,表現の正確さではなく,対話の内容,とくにoriginalityやcreativityといった「おもしろさ」に向けられていきます。このように,生徒が自分のアイデアを自由に表現し,それをまわりの生徒が評価するという活動が,これからの英語指導には重要な役割を果たすのではないでしょうか。 3.3年次における取り組み昨年の3年生に対してですが,次のようなことを行いました。THE DAILY YOMIURIの“Featuring Translations”に「写真家・星野道夫さんの死 妻は受け入れた」(読売新聞2006年4月23日付)の翻訳が掲載されているのを見つけました。当時,3年生に新聞記事を読ませることを実践していたので,“Do you remember Hoshino Michio?” “Do you know he was killed?” “Who do you think killed Mr. Hoshino?” “Where do you think he was killed?” “Do you know if he had a family?”などと質問を投げかけ,簡単なbrainstormingをしてからその記事を読ませました。一文ずつを日本語訳するなどという,野暮なことはしません。brainstormingで自分が考えたことが当たっているかどうかを確認させ,さらに星野氏の夫人の思いを読みとらせました。全文の意味は,読売新聞の日本語記事があるのですから,それを配布すればすべて解決です。 本校では2年生から3年生にかけてparagraph writingやessay writingを行っています。この記事を読んだあとも,“What I've learned from the article about Mr. Hoshino and his wife.”というタイトルで書いた作品をグループ内で回し読みをしました。また,数点を印刷して配ったりして,読者を意識したライティングに取り組ませています。このように,1年次に読んだレッスンが3年次になってまた使える,ということもあるのです。‘Life in Alaska’はこれからも生徒の心に残り続けるレッスンの一つであることを期待したいと思います。 4.考査問題の展開例最後に,考査問題について触れます。本校ではオーラルコミュニケーションはもちろん,英語 Iでも定期考査の時にリスニングテストを行っています。以下は,今年度1学期の中間考査で,実際に出題したリスニングテストのスクリプトです。
教科書の内容と関連していながら,全く同じ英文ではない,しかも新しい情報を含んだものを,考査では読ませたり聞かせたりして,必要な情報を読みとったり聞きとったりするスキルを見るべきだと思います。このような問題を作成するにはかなりの時間と労力を要しますが,生徒に“Be creative!”と奨励している以上,私たちもその姿勢を示さなければなりません。 EXCEEDは確かにやさしめの教科書かもしれません。だからこそ,生徒も教師もcreativityを発揮し,「楽しい」授業を可能にしてくれる教科書だと思います。 山内 悟 (やまうち さとる) 1987年〜 福井県立羽水高等学校 教諭 Copyright (C) SANSEIDO publishing co.,ltd. All Rights Reserved. |