  
       
       今回の質問は,千葉県の中学校で1年生を担当されているD先生から寄せられたものです。D先生は教師歴7年で,今年度よりNEW CROWNの教科書を初めて使用されています。教科書のWe’re Talkingのコーナーについて,次のようなご質問をいただきました。 
       「本課(LESSON)のGETの本文の多くはdialogですが,さらに各レッスン後に会話表現を扱うWe’re Talkingがあるのはなぜでしょうか。またWe’re Talkingはどのように授業を進めたらよいでしょうか。」 
       以下が私の回答です。 
      
         始めに『新学習指導要領』についてふれますと,この改定のポイントの一つとして,コミュニケーションを支える文法をきちんと身につけさせることが求められています。すなわち「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を基盤にした総合的・統合的コミュニケーション活動を活発に行うためには「文法」が重要だということが強調されています。「文法指導」は常に「言語活動と一体化した指導」へ結びつけていく必要があるのです。 
         さらにWe’re Talkingは,『新学習指導要領』の中の「言語活動の取り扱い」の「(ウ)言語活動を行うに当たり,主として次に示すような言語の使用場面や言語の働きを取り上げるようにすること」に対応したものです。ここには,電話や買い物などの場面や,コミュニケーションを円滑にする,気持ちを伝える,などの働きが例示されています。 
         GETの本文も当然使用場面や働きがあるわけですが,GETは一義的には文法の指導を意識しているのに対し,We’re Talkingは場面,働きの指導を重視している,ということです。そのために,We’re Talkingのタイトル下には,「交通手段をたずねる・説明する」「提案する」など,とりあげるべき場面と働きが示されています。 
       
       以上のことを基本として捉えた上で,We’re Talkingのねらいと扱い方について改めて考えてみたいと思います。 
      1.ねらい 
      
        (1)このWe’re Talkingはレッスンごとに,1ページずつ使って提示されています。ここでは,一つの重要なレッスンが終わりホッと一息ついたところで,目先を変え,ふだん何気なく使う身近な場面での会話文が,平易な文章で表現されています。これらを学習することで,実生活に結びついた各々の場面における最適な表現を身につけることができます。(本課本文の中にも会話文のセクションがありますが,これは本課のnarrativeの部分,すなわち文法などの言語材料や題材をより確実に理解させるためであり,同時にコミュニケーション活動を活発にさせるのが目的です。) 
        (2)We’re Talkingの会話文には,既習の文法事項や語彙,または無理のない程度での文法の応用や新語などが含まれています。本課本文とは異なった雰囲気の中で,繰り返し学ぶことも目的の一つであり,対話の中で自然に文法の力が身につくように配慮されています。 
        (3)「買い物」「電話」「道案内」などは3年間を通してスパイラルに扱い,繰り返し学びます。これらの題材は,本課本文の題材とは直接には関係していないように思えますが,実際は文法事項・語彙・表現などがどこかで必ず関連しています。 
        (4)配当時間は標準的には1時間ですが,生徒や学校の実態により,また先生のお考えにより「伸び縮み」が可能な内容になっています。 
        では,こうした考えに基づいた実際の扱い方についてお話しましょう。 
       
      2.扱い方 
      
        (1)「標準的な1時間」の場合 
        @ウォームアップ(前時の復習) ⇒A本文の内容の英語による導入(概要が分かれば可とする) ⇒BTalking Pointの「理解と練習」から「暗唱」へ ⇒C本文について「聞く・読む」から「暗唱」まで ⇒DTryに挑戦(2年次より) ⇒Eまとめ(上位,中位,下位のそれぞれの生徒に合わせたQ&A活動) 
        (2)「2時間」使用した場合 
        上記の@〜Bを前半の1時間,C〜Eを後半の1時間とする。Cを拡大し「聞く」「読む」「暗唱」をコーラス,グループ,ペアで行わせる。できればクラス全員が発表できるように配慮することが望ましい。 
        (3)観点別の評価基準 
        ◎コミュニケーションへの関心・意欲・態度 
          間違うことを恐れずに学んだ表現などを使い,積極的・意欲的に(理解してもらえるように)会話をしている。 
          ◎表現の能力 
          場面によって語句や表現を選び,聞き手に伝えたい内容を正確に伝えることができる。 
          ◎言語や文化についての知識・理解 
          場面や状況にあった表現・強勢・イントネーション,また日常の生活や習慣について理解している。 
       
      3.実践例 
      
         例)NEW CROWN ENGLISH BOOK 1  We’re Talking 8 公園へ行こう(p.102) 
        (1)ねらい 
        @交通手段の質問と応え方 A提案の表現 
        (2)指導のポイント 
        @ Talking Point の説明 “How 〜 ?”について 
          〈STEP 1〉下記の既習項目を一通り復習する。 
          How many 〜 ? (p.46)/How about 〜 ? (p.52)/How much 〜 ? (p.52) 
          /How are you  ? (p.54)/How often 〜 ? (p.97) 
          〈STEP 2〉このページ(We’re  Talking p.102)で扱っている内容について確認。 
          How can we go to Midori Park?  ――― We can go by bike or bus. 
          How far is the park? ――― Only about five  kilometers. 
          How 〜 ?とその答え方を学習し,How 〜 ?を使った質問文が沢山あることを確認します。 
          A サブテーマ “let’s”の復習 
          〈STEP 1〉既習内容を確認。 
          Let’s clean up. (p.48) 
          〈STEP 2〉このページ(We’re  Talking p.102)で扱っている内容について確認。 
          Then today let’s take a bus.を学習します。 
        (3)Exerciseの扱い方 
        教科書のイラストの他に先生が絵や写真を持参し,それらをペアごとに配り対話練習をさせます。または生徒たちにそれぞれ絵や写真準備させると対話練習にも張り合いが出て生徒たちは喜んで活動に参加します。 
        (4)その他 
        教科書本文を基本に,いくつかの文を追加して対話を膨らませる工夫も生徒には興味深いと思われます。また追加の文は生徒たちにグループ等で創作させるとさらに興味を持ち自学自習の習慣がつく基にもなるでしょう。 
       
      終わりに 
      
        教科書はそれを使う先生の考えで,基本の食材(言語材料等)をいろいろな種類の料理(創作料理)につくりあげることができるし,味付けも自由にできるわけです。先生の個性を大いに発揮されて多くのレシピを考案してみてください。ご健闘をお祈りします。 
       
       
 
      
	  後関 正明 (ごせき まさあき) 先生 
        東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。 
         
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