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先月号(4月号)のコラム,「毒か薬か授業中の和訳」では,授業中の和訳の取り扱いについて,3人の先生方との話し合いを載せました。まとめとして「言語活動重視の授業は,何といっても教科書本文の深い内容理解が必要であり,そのために,時には題材について日本語で説明したり,和訳をうまく使いこなしたりすることも必要になってくる」と述べました。「日本語説明」,「和訳」というと,一見,言語活動やコミュニケーション活動とはほど遠い,一文一文を逐語訳しながら進める指導のように思われがちです。しかしながら,私の意図する日本語説明や和訳は,本文内容をもとにした「聞く」「話す」「読む」「書く」活動を目標にしているものです。そして,そのような活動は,本文を使った授業の最終目標の1つと考えられます。授業時間は50分と限られていますから,目標どおりには進まないこともあるでしょう。そこは臨機応変に考え,補助的なワークシートを使って生徒が理解しやすいように手助けをしたり,次の時間に,もう1度,繰り返し学習で本文内容の定着を図ったりすればよいと思います。 さて,それでは実際に教科書のある課を俎上に載せて,本文を使った言語活動の例を紹介します。例はNEW CROWN 3 Lesson 6 “I Have a Dream” Section 1からとりましょう。 I 導入生徒の興味をひくような写真(ここでは,課の冒頭(p.51)の写真)を使いながら,この課についての興味づけやスキーマづくりを英語で行います。本文理解に大事な部分については,生徒の反応を見ながら,日本語で説明を加えるとよいでしょう。 II 展開
III まとめ
ワークシート1では,( )の穴埋めをすることで,大事な単語について,書くことによる確認ができます。 ワークシート2は,日本語を使って自分なりにまとめさせるものです。本文の内容によっては,中学生が身につけている英語だけを使って,内容をまとめるのは難しいことがあります。そこで,日本語を使ってまとめさせます。日本語によるまとめは,本文理解の確認には,十分に有益な言語活動といえます。また,ここで「語・句・表現の解説」時に行った「日本語説明」や「和訳」も役にたちます。限られた時間の中で,本文をまとめさせたり,感じたことを表現させたりする活動までもっていくために,日本語の解説や和訳を使うことは,効果的だと思います。 教科書本文を基本にして,さらにそれを先生方の考えや好みに応じて発展させていく方法はまだまだたくさんあると思います。授業に厚みを持たせる意味で,先生方の腕の見せどころかもしれませんね。
後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。 ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。 Copyright (C) SANSEIDO publishing co.,ltd. All Rights Reserved. |