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フーンコラム 第58回 後関正明

英作文指導の一工夫

  夏休み中にB先生からいただいた暑中見舞いに次のようなことが書き添えられていました。

 9月から2年生にライティングを徹底して教えようと思っています。従来,私が行ってきた和文英訳や英作文と一味違った方法で実践してみたいのですが,生徒たちが意欲的に取り組むような方法があったら教えてください。

 このコラムの24回でライティング指導について扱っているので,それをまずご覧くださいとお返事を差し上げましたが,今回は,別の角度から,「ライティング指導の実践と評価」について述べ,参考にしていただこうと思います。

 ライティングの究極の目標は,生徒が習った語彙を駆使して,思ったこと,感じたことを誰か特定の人 ― 「誰でもいいから」ではなく,「自分で決めた『あの人』」― に伝えたいという気持ちを素直に紙の上に表すことだと思います。そのためには,まず,教科書中の英文に十分慣れ,基礎・基本を身につける必要があります。具体的には,どの課でも,@英文のおおまかな意味を説明し,A各文を日本語に訳させ(口頭もしくはメモ),B日本語に訳した文を再び英語に直させ(口頭もしくはメモ),Cその英語を教科書の文と比べさせ,どこがどのように間違っているか,あるいは合っているかを確かめさせ,D音読をさせるという順序で英文に慣れさせるとよいと思います。

 では,NEW CROWN 2 LESSON 4 Section Bを例にとって考えてみましょう。まずは,先ほど述べた練習を1〜2回繰り返して本文に慣れさせます。まとめとして,本文をノートに書かせれば,このセクションはほぼ理解できると思います。

 本文が終わると,p.36には,USE IT 3で自分の意見を言う課題があります。これも,自分が言ったことをノートに書きとめさせれば,英作文の練習になります。さらに,THINK ABOUT ITでは,LESSON 4で学んだことを書く課題があります。これができれば,LESSON 4全体は,ほぼ理解されたことになると思います。このように,いろいろな角度から本文を扱ったり,活動したりしながら,言語材料を深めることができるわけです。

 p.49には,「将来つきたい仕事について書く」DO IT WRITE 1があります。ここでも,先ほどの手順でモデル文をじっくり読み,内容をしっかりつかませることが大切です。その上で,巻末の付録にある「いろいろな職業」を参考に,生徒に作文させます。意欲的な生徒には,和英辞典を使わせてもいいですね。なお,DO IT WRITEを使った活動では,モデル文のリスニング,音読,(TRYにあるような)発表活動もあり,他の3領域(読む,聞く,話す)と関わりをもった活動になっていますが,和文英訳や課題を与えての自由英作文でも,ただ単に英作文をさせるだけではなく,生徒に口頭で発表をさせたりするなど,他の3領域(読む,話す,聞く)と関わりをもたせて活動をさせるとよいでしょう。

 さて,さらにここでは,各生徒の作文を教師がどう評価するかが問題となります。B先生の場合は,多ければ90人ほどの生徒の作文に目を通すことになるでしょう。これは大変な作業です。この作業をできるだけ効率よく行うにあたっての留意点をいくつか挙げてみたいと思います。

  1. 時間をあまりかけないように工夫する。念入りに評価したいと思うと,時間と労力がかかり長続きしない。
  2. 生徒が英作文に慣れるまでは,4〜5文程度で書かせることが望ましい。英語が得意な生徒は多く書きたがるが,評価が大変なのである程度制限した方がよい。
  3. 大きな間違い(large error)は訂正するが,小さな間違い(small mistake)には寛大な態度でのぞむ。
  4. 注意することよりも褒めることにつとめ,以後の英作文が意欲的で楽しくなるように励ます(言葉を添える)。
  5. 評価規準や方法は,生徒にあらかじめ伝えておく。例えば,4〜5文書けていれば,必ずB以上の評価になり,逆に少ないと,内容がともなっていてもB以下,など。
  6. 答案の返却は早ければ早い方がよい。生徒は評価を早く見たがっている(小生は必ず次時に返却した)。

 先生方,このコラムを読まれたご感想はいかがでしょうか。9月以降,先生方の実践の結果もぜひお聞かせください。実際に教えてみると,理屈どおりにはいかないことはあります。「週3時間の授業では無理,無理!」とおっしゃる声も聞こえてきそうな気がしますが,このコラムをお読みになった先生方の創意工夫の一助にでもなれば幸いです。頑張ってください。

 

後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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