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フーンコラム 第50回 後関正明

第50回 黙読について考えてみましょう

 年末のせいか,先生方がご多忙で時間が取れなかったらしく,質問やご意見が寄せられませんでした。そこで,今回は私が日ごろその大切さを考えている「黙読」について述べてみたいと思います。「黙読」については,第44回のコラムで「音読」と対比して少しばかり説明しましたが,ここではもう少し詳しく述べてみることにします。

 一口に黙読といってもその基礎は音読にあると以前に述べました。ようするに,生徒が黙読の正しい技術を身につける前には,やはり「正しい音読」が必要なのです。「正しい音読」とは,単語のアクセントはもちろんのこと,文全体のイントネーションやリズムなどが英語らしく読まれているということです。しかし,発音・発声のみにエネルギーを費やしていると文意の理解がおろそかになり,文全体が発するメッセージを読み取れなくなります。したがって,音読の短所を補うためにも徐々に黙読の仕方を教えていく必要があります。なお,その時に黙読のメリットを教え,実感させることも大切です。「読んだ文の意味内容が本当にすーっと頭の中に入ってきた」「読むそばからどんどん分かった」という実感ですね。そういう生徒の顔には「やったぁ」という満足感があふれています。

 小生の経験からすると,黙読はnarrativeの文章の方がしやすいようです。narrativeの文章が出てきたあたり(NEW CROWNでは1年L 5)から黙読の練習を入れていったらどうでしょうか。こつは,初めのうちは,1文読んだあとに自分の指で机をポンとたたかせることです。なぜ1文終わるごとに机をたたかせるかというと,1文の区切りをしっかり意識させ,その区切りでまとまった意味を頭の中に入れさせたいからです。生徒は自分の体の一部を使った動作でリズムを感じるのが得意です。特に1年生は喜んでこの動作を繰り返します。こうして黙読の練習を続けていくと,学年が進むにつれて指の運動はしなくても,区切りごとにまとまった意味を読み取る力が自然に身についていきます。

 なお,2年,3年と学年があがるにつれ,1文の長さが長くなっていきます。1文の長さが長くなったら,意味の切れ目ごとに斜線を入れて1文を区切るとよいでしょう。例えば,3年L 4“Sadako and the Thousand Paper Cranes”の@は,次のように文を区切ります。

  Have you heard about Sasaki Sadako? /
  Sadako was two years old / when the atomic bomb was dropped over Hiroshima. / She suddenly became sick / at the age of twelve. / She had hope. / She believed, / “It is possible for me / to get well. / I’ll make a thousand paper cranes.” /
  Sadako died, / but many people remember her. / They make cranes / for her and for peace.

このようにして文を区切り,切れ目ごとの意味,文全体の意味を理解させたあと,黙読に移ります。1〜2回黙読させたら,指名をして個人の音読をさせてもいいでしょう。ここでの音読の目的は,文の区切り,意味の切れ目がきちんと理解できているかをみるためです。もちろん,他の生徒の見本にもなるしリスニングの訓練にもなります。この黙読の時間はわずか5〜6分ですみます。

 また,「決して後戻りして訳さないこと」とは,一般によく言われることですが,これは普段の授業の中で,習慣的にそのような読みの指導をしてこそできるものです。この技術は音読技術とも重なるものですが,これを確実なものにしておくことが黙読技術も上達させることはいうまでもありません。

 授業中にやみくもに「はい,黙読!」と言っても,黙読の指導を受けていないと,ただ黙って活字を追うだけの作業になりかねません。また,しっかりとした黙読を習慣的に続けることで,長めの文も上手に黙読できるようになり,高校入試の長文読解問題にも十分対応できるようになると思います。1年生のうちから授業中にたった5分でも時間をとってこの作業にあててみてはいかがでしょうか。

 

後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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