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今回は珍しく,都内の小学校5年を担任する先生から質問を頂きました。質問の趣旨は… 最近ある雑誌の「会議でゆさぶりをかける」というタイトルの記事が目に留まった。「ゆさぶり」とは要約すると,「何の刺激もない退屈な会議で誰かが何でもいいから問題を提起し,会議そのものに変化をもたらしたり,また,さまざまな問いかけをして参加している社員の間に緊張を走らせるための意図的な行動」だということであった。なるほど,と納得した私はこれを授業に当てはめてみたらどうなるだろうかと考えた。私の授業,特に「英語活動」で少し行きづまりを感じていたから。このごろは英語活動が平板に流れ,子どもの興味も薄らいでいるような気がしてならない。雑誌でいわれている内容についてはよくわかるが,英語活動で「ゆさぶり」をかけるにはどうしたらいいか悩んでしまう。このことについて具体的に教えていただきたい …というものでした。 さて,5年生ともなると年度当初は英語活動に興味津々で楽しく遊んだり,学習したりするものですが,教える側でいろいろと工夫を凝らさないと活動がマンネリ化してきます。その子どもたちは4年生から英語活動を続けているそうですから,そろそろ飽きが来てもいいころです。したがって「ゆさぶり」をかけてもいいころかもしれません。 具体的には授業は,まず先生ご自身がおもしろい,ためになる,と思わなければ子どもたちもそう思いません。そこで活動内容を考えるときに創意工夫を凝らす必要がありますが,先生と気心が知れている2,3人の先生に教材作りから手伝ってもらうのはどうでしょうか。それと同時に,特に子どもたちへの問いかけの内容をよく吟味することも大切です。教材と問いかけが「ゆさぶり」のポイントになるのです。そこで,授業のシミュレーションをしてみるのです。模擬授業ですね。その過程で先生方と議論を重ねながら1時間の授業を構築していくわけです。手伝ってくれた先生方が全員これはおもしろいぞ,と感じれば,子どもたちも多分喜ぶと思います。もし喜ばなかったならばなぜかと検証し,その反省を次の授業に生かすことが大切です。要は1人で悩んだり,考え込んだりしないで同僚の先生方の協力を仰ぐことが必要です。特に英語活動は学年全体,または低・中・高学年がそれぞれグループをつくり,みんなでアイデアを持ち寄り教材をつくり,それを実践しその結果を確かめ合うことが大切です。そういう過程を通じて,授業の内容が総合的にレベルアップしていくのです。 このような同僚との念入りな準備段階を経た授業実践では,先生から子どもたちに対する働きかけが「ゆさぶり」となり,子どもたちの中に積極的にそれに応える行動が芽生えてきます。目の色が違って先生の一挙手一投足に食らいついてくるといっても過言ではありません。 私はゆさぶりをかける授業というのは教師自身がまず自分にゆさぶりをかけ,わくわくしたエキサイティングな気持ちをそのまま授業に持ち込むことだと思っています。何の授業でも同じですがこちらが熱くなれば受け取る子どもたちも自発的に何かを受け取ろうとするはずです。とりあえずは身近にいる先生方とのコラボレーションを心がけてください。とてもそんなことを頼める状況ではないと感じても,そこでひるまず積極的にこちらから働きかけ,雰囲気がよくなるように意を尽くせば相手の先生方も理解してくれて忙しいながらもいろいろとアドバイスをしてくれるようになるものです。このような職場の雰囲気作りは中学校でも同じように大切です。英語科だけでなく学年の先生方とのコミュニケーションが円滑に作用すれば,英語のみならず生徒指導全般にかなり効果があがるということは大方の先生方は経験済みだと思います。 さて小学校における英語活動の要点は巷ではいろいろといわれていますが,私は子どもたちがみんな「英語はおもしろい」「ためになりそう」,だから「英語は好きだ」と思うように仕向けることだと思っています。そして最終的には「担任の先生大好き」,までいけばもういうことはないですね。そして「英語は好きだ」という思いを抱いて中学校に行くと,まったく新しい気持ちで中学校の英語になじめるのです。もともと好きな英語活動ですから,教科としての英語の授業にスムーズに移行できるわけです。小学校でそのような子どもたちを育てていただければ中学校の先生方はとても喜ぶと思います。いま巷でいわれている「小・中の連携」の基本はそういうことだと思います。どうか中学校も視野に入れて目の前の英語活動の実践に励んでください。応援いたします。
後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。 ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。 Copyright (C) SANSEIDO publishing co.,ltd. All Rights Reserved. |