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フーンコラム 第31回 後関正明

第31回 文法をわかりやすく教えるには−現在完了形(継続)

 現在完了形を先生方はどんなふうに教えていらっしゃるのかなと考えていたところ、都内H中学校のK先生から、ちょうどそれと同じような質問がありました。

K先生: 今、3年生のLESSON 2からLESSON 3にかけて「現在完了形」を教えているのですが、いまひとつ生徒の反応が芳しくないので、どうしようかと悩んでいるのですが。
私: 具体的にはどんな状態ですか。
K先生: 教室の雰囲気が暗いというか、ちょっと白け気味なのです。特に文法の説明になると、生徒たちは極端におもしろくない顔をします。
私: それでは教えていても張り合いがありませんね。やはりこちらのいうことがきちんと相手に届かないと、よい授業にはなりません。ところで、LESSON 2を扱ったとき、oral introduction(口頭導入)の後、すぐに文法の説明に入りませんでしたか。
K先生: そういえば、そうでした。私はふだん、英語中心で本文の内容を説明して、その後のタスクも英語で指示します。でも、現在完了のようなちょっと難しい言語材料のときは、英語での説明の後、日本語でかなり詳しく説明します。今回もそうしましたが、文法の説明が難しくて時間がかかるとの先入観があり、導入の部分で少し急ぎすぎたと思います。
私: なるほど…。まあ、普通はそういう手順をとりますが、いきなり文法の説明に入ると、生徒にとってはかなりの重荷になると思いますね。
K先生: そうだと思います。だから途端に雰囲気が悪くなったんですね。そういう場合には、どんな手順にしたらいいのでしょう。
私:

一般的には、次のような手順をとりますね。現在完了の「継続」がポイントですから、黒板に横線を一本引いて、「ここが過去、こちらが現在で…」と言いながら、次の例文を書きます。

板書例 <1>

そして「過去のある時点の出来事を、現在のことと関係させて述べる」などと言って、上の2つの英文を説明しますね。でも私だったらその前に、こんなふうにやってみます。

教師:「あれ?! あそこに知らない人が、さっきから行ったり来たりしてウロウロしてるけど、何だろうな」
生徒:窓の外を一斉に見る。
教師:「さっきから、ずーっといるんだ。ほら見えるだろ」
生徒:「そんな人いないよ」と言ってワイワイガヤガヤ…。
教師:「確かにいたんだ。さっきから今までずーっと」

上のようなことを2、3回くり返し、生徒に光景を印象付けます。「ずーっとだ。ずーっとだぞ」と。この「ずーっと」が実はミソなのです。要するに「継続」のポイントです。このニュアンスを教え込んでしまえば、「過去のある時点の出来事を…」などと言って、実態の伴わない抽象的な言葉を羅列するよりも、ずっと理解されやすいのではないでしょうか。

板書例 <2>

「知らない人がウロウロ」などという例えは悪いかも知れませんが、このくらいインパクトの強い例を出さないと、難しいと思われている文法はなかなか生徒たちの頭に定着しません。インパクトを与えたところで、私たちがふだん使っている「ずーっと…している」という意味を表すのが、「現在完了形」の「継続」なんだよと説明すれば、「なーんだ、そうかぁ」と、大抵は納得してくれるわけです。

K先生: ウーン、お上手ですね。でも私が同じようなことを言っても、どうでしょう、なんだかクラスの収拾がつかなくなるような気がして…。
私: 「案ずるより生むが易し」ですよ。でも必ずしもこの例がいいとは限りません。生徒の実態、クラスの雰囲気などを考慮して、いろいろなアイディアを考えてみてください。
K先生:

今回は「継続」の導入でしたが、「完了」の導入方法にも頭を悩ませています。

私: では、次回は「完了」についてお話ししましょう。「完了」にも、生徒たちがふだん使っている卑近な例がありますよ。
K先生: ぜひよろしくお願い致します。

 

後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。

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