毎日の授業で,先生方はいろいろと創意工夫されて生徒たちに興味と関心を持たせ,それをずっと持続させることに苦心しておられることと思います。時には自分のパターンから抜け出して,少しばかり「脱線」してみるのも面白いと思います。先生自身がまず楽しんで,その楽しみを生徒と分かち合い,生徒を英語の世界へ引き込んでいきましょう。
その「脱線」の一つに「通訳ごっこ」はいかがですか。取り上げるレッスンとしては,NEW CROWN 2のSpeech―‘My
Dream’(登場人物の健が,将来,保育士になりたい,とスピーチをする内容)を取り上げるとやりやすいでしょう。そんなに難しいことではありません。簡単に言うと,生徒同士のペアを作り,一方の生徒が英語でスピーチをします。そして,もう一方の生徒は発表者の横につき,発表者が英文を一文発話したらすぐにその英文を日本語に直し,話していくわけです。この時,事前に生徒同士で打ち合わせをさせ,話す内容を共有させておくと,スムーズにいきます。生徒はいっぱしの通訳になったつもりで喜んでやります。生徒の習熟度によって事前に内容を知らせないで行うこともできます。
では「通訳ごっこ」の一例をお目にかけましょう。私と女性のALTのペアです。
私とALTとの「通訳ごっこ」で,私はALTに自己紹介を2回してもらいました。(「通訳ごっこ」と言っても,初めてのALT紹介のときですから通訳は当然なのですが…)1回目はnatural
speedです。生徒は分からないので私が通訳します。2回目は生徒にも分かるようにslow speedです。
ALT |
: |
Hello, everyone. My name is Grace Bertagnole. I’m from Vancouver,
Canada. |
私 |
: |
皆さん,こんにちは。私はグレース・バータグノールといいます。私はカナダのバンクーバー出身です。 |
ALT |
: |
I’m very happy to be here and to teach English to you all. I like
Japan, Tokyo, your school and you. |
私 |
: |
私はここでみなさんに英語を教えられるのが幸せです。私は日本,東京,あなた達の学校,あなたたちが好きです。 |
ALT |
: |
I’m interested in Japanese language, history, and culture, especially
Japanese traditional dolls. I like sports too. I play ice hockey. |
私 |
: |
私は日本語,日本の歴史や文化,特に日本人形に興味があります。私はスポーツも好きです。私はアイスホッケーをします。
(アイスホッケーは,英語の発音では,(「『ハッキー』というような発音だったため」)生徒にはほとんど分からなかったようで,私が通訳すると一斉に「オー」とどよめきました。彼女もその雰囲気を察し…) |
ALT |
: |
Ice hockey is very popular in my country. Some girls like to play
ice hockey in Canada. |
私 |
: |
私の国ではアイスホッケーは,とても人気があります。カナダでは,アイスホッケーをすることが好きな女子もいるんです。
(ここでまた「オー」の声。) |
ALT |
: |
I’m a member of an ice hockey team in Vancouver. My team is strong.
Do you have any ice hockey teams in Japan? |
私 |
: |
私は,バンクーバーのアイスホッケーチームに入っています。私のチームは強いです。日本にもアイスホッケーのチームはあるのですか?
(私は,日本にもアイスホッケーのチームがいくつかあって,リーグ戦も行われていることを彼女に伝えます。) |
ALT |
: |
If you watch the ice hockey game on TV, you will become familiar
with it soon. I love ice hockey. |
私 |
: |
テレビでアイスホッケーの試合を見れば,みんなアイスホッケーが好きになりますよ。私はあなたを愛してます。
(そう言ったとたん,生徒は「ウッソー」「なんでぇー,ねぇー」と一斉にブーブー。彼ら,彼女らは,わざと間違えて通訳したのが冗談と分かってブーイングをしたのか,ALTが本当にそう言ったと思い込み,「どうしてこんな人を!」(ホントに失礼な!)と言ったのかは分かりません。ただ一人,モントリオールからの帰国生の女の子だけがつつましくにこにこと笑っていました。) |
このあと,改めてゆっくりと,slow speedでALTに自己紹介をしてもらいました。スピーチ(自己紹介)の内容を別に書きとめておいてもらったわけではないので,少しはセンテンスが変わっていましたが,生徒たちはだいたい理解していたようで,納得しているように見えました。このように先生が生徒にモデルを見せてから,簡単な文章から始めると,生徒たちは喜んで参加します。ちょっとだけ時間をとって試してみてはいかがでしょう。今回は,NEW
CROWN 2のSpeechをお勧めしましたが,実は慣れてくるとどの課でもできますよ。
後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。
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