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フーンコラム 第6回 後関正明

こんな物でも立派な教材 その4

スーパーの紙袋・・・アメリカ・オレゴン州

 交換留学生3人を連れてオレゴン州・ポートランドを訪問したことがあります。ポートランドはアメリカ西海岸にある大都市ですが,サンフランシスコやロサンゼルスのような有名な観光都市ではありません。一見とても地味な街ですが,観光名所は市内・郊外ともに結構たくさんあります。でも日本の航空会社の路線がないこともあって日本人が非常に少ないのです。一日中,街を歩いていても日本人に遭いません。ですから留学するには都合がいい場所です。日本語が使えませんから……。それに街が清潔で犯罪が少なく,他の大都市に比べたら格段に住みやすいので安心してホームステイもできるわけです。ホームレスやストリートチルドレンなど全然見かけないので聞いてみると,夏でも涼しいところですから冬場などとても外で生活できないのでそういう人たちはいないのだ,ということでした。

 ある一日,現地姉妹校の先生が私たち一行を市内や郊外の観光に連れて行ってくれました。郊外のモールへ行き大きなスーパーへ入りました。品物の種類と多さは日本のスーパーと変わりありません。何が違うかといえば,買う品物の「かさ」というか「量」というか─それが大きいのです。例えば牛乳や食用油などのパックの量の単位が違うのです。とにかく,大きい量のパックなのです。街の人たちはそんなものをカートに一杯積んでレジに並びますが,当然時間がかかります。でもよくしたもので10品目以下用のレジのコースがあって,チョコレート1つ買うときでも延々と並んで待つことはありません。そのへんは合理的にできています。感心なのはそのコースがいくら空いていてもカート満載のお客さんが並んでいる脇からすっと入り込むこともなく,じっと普通のコースに並んで辛抱強く順番を待っているのです。日本だったらどうでしょう?──我先にどどっと……?

 さて買い物をしてホテルに戻り荷物の整理をしていたら先程のスーパーの買い物袋に印刷されている英語が目に留まりました。

 これはオレゴン州の「市」が8月27日から9月7日まで州都・セイラムで開催されるという内容です。実際には行くことはできなかったのですが,話しによるとオレゴン州特産の農産物が売られたり,家畜などの品評会,その他いろいろなアトラクションがある楽しい催し物のようです。絵に巨大かぼちゃがワゴンに載せられていますが,まんざら大袈裟でもないようです。前述したスーパーにも両手でやっと抱えられるような大きなかぼちゃが並んでいました。

 さてわが国でも何か催し物があるとたいてい「前売り券」が少し割引で売り出されますね。その「前売り券」は“Advance Price"と出ていますね。では「当日券」は何というのかと思ったら“Gate Price" と書いてありました。……ウーン,なーるほどねぇ……と,うなってしまいました。簡単な単語でぴたっと言い当てていますね。私が調べた辞書には“Gate Price”は出ていませんでした。(Gateには「入場料総額」の意味はあります。)でもこの広告の文面から見る限り「当日券」がぴったりですね。

 そのほかの単語もやさしいものばかりなのでちょっと説明すれば生徒もすぐわかってくれます。私はスーパーの紙袋の実物,オレゴン州の地図,大きなかぼちゃの写真などを見せながら英語で説明しましたが,実際に目で見ながら聞く説明はよくわかったようです。

 ちょっと教科書から離れた「遊び」でしたが,生徒たちは興味深々でした。こんなことででも生徒たちの興味・関心が少しでも高められ,意欲が増していけば,教える側としてはまさに「万歳」です。

 

後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。

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