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| 調査の対象: | 長野県,岐阜県及び北海道の教員31名。 ※抽出方法…英語の発音や聞き取りの学力について判断できる教員を対象としたいため,各地の大学教員から 教員を推薦していただいた。 |
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| 回収率 : | 100%(31名中31名が回答) |
| 調査方法 : | アンケート。多肢選択と自由記述の質問に,郵送にて回答を依頼。 |
| 調査内容 : | 【調査@】 a 従前の生徒よりかなり良くなっている
b 多少良くなっている c あまり変わっていない (1)英語を聞いて理解する力について 【調査A】 |
調査@(英語を聞いて理解する力/習った英語を使って話す力/英語の発音について)
英語の使用という点で,下記の3点に絞って検証しました。
(1) 英語を聞いて理解する力について
(2) 習った英語を使って話す力について
(3) 英語の発音について
結果は次のグラフです。

a 従前の生徒よりかなり良くなっている
b 多少良くなっている
c あまり変わっていない
(1) 英語を聞いて理解する力について
英語を聞いて理解する力については,「a 従前の生徒よりかなり良くなっている」と評価した教員は40%近くに達し,「b 多少良くなっている」と評価した教員を含めると,「良くなっている」と評価した教員は90%を超えています。
(2) 習った英語を使って話す力について
話す力については,従前の生徒よりも向上している傾向は明確ですが,「a 従前の生徒よりかなり良くなっている」と評価した教員は20%以下で,話す力を過大評価できないことを表しています。
(3) 英語の発音について
英語らしい発音については,英語の使用という点の中で,最も厳しい評価が与えられています。
しかし,小学校の外国語活動では,基本的な英語に慣れ親しむことが大きな目標となっているので,中学校教員の評価によると,この点について外国語活動はある程度目標を達成していると言っていいでしょう。
一方で,外国語活動が週1時間であることや正確な発音の修得までは目標に含まれない点を考慮すると,(2)の話す力(発話力)や(3)の正しく発音する力については,この程度の結果は想定内と考えて良いと思います。むしろこのような素地力を修得して入学した生徒の英語使用力をいかにして飛躍的に向上させるか,中学校の英語教員に課せられた責任は重いと思います。
調査A(中学校入学時における英語力の受け止め/中学校の英語教育の改善について)
(1) 中学校入学時における英語力の受け止めについて
中学校教員の受け止め方については,下記のように整理できると思います。
総じて中学校の教員は,新入生の実態を的確に把握されていると思いました。従って,新入生の学力を過大評価されることはないと思いますが,学力の個人差や出身小学校の学校差などについては,十分意識された方が良いと思います。この点については,小学校教員の方がむしろ強く心配されているようです。
中学校入学当初の有効な手法として外国語活動で頻繁に活用されているTPRを,少なくとも最初のうちは頻繁に使われることをお勧めします。これにより生徒は,中学校英語教育へ比較的スムーズに溶け込むことができるでしょう。一方で生徒はspoken Englishになじんでいることから,従来の生徒以上にwritten Englishに抵抗を示すようです。しかし,だからと言って,最初からフォニックスのルールなどについて強調しない方がよろしいと思います。フォニックスは,written Englishに慣れてきた頃を見計らって徐々に導入したらいかがでしょうか。
(2) 外国語活動の成果を活かした,中学校の英語教育の改善点について
この質問については,次のようなお願いをしました。
外国語活動が中学校の英語教育と(4月段階で)うまく接続されるだけでなく,外国語活動が導入された成果として,中学校の英語教育が従前よりも質的に高い水準を維持するためには,幾つかの点で従来の指導を変えなければならないと思います。どのような指導を心がけたら良いか。現実的で効果的な新しい指導の在り方を幾つか述べてください。できるだけ沢山お願いします。
外国語活動の成果を活かし,今後の英語教育を改善については,下記の通り整理できると思います。
外国語活動の成果を踏まえた中学校英語教育の方向性が具体的に提案されていると思います。この方向性につきましては筆者も全く同感です
そこで,筆者は,次の a 〜 h の内容が重要になると思いました。今後は,このような発想を日常的な授業の場面でどう具体化させるかが,課題になっていると思います。
今回の中学校教員の発想を次のように簡潔にまとめることができると思います。
教員自身が意味のあるmessageを英語で語り,書く機会を現在よりも格段に増やすことが,英語教育の質的向上にとって,必要条件である。
英語教育の枠組みが変わるこのタイミングを逃したら,我が国の英語教育は永久に変わらないと思います。総力を挙げて,頑張りましょう。
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