三省堂 発行書籍
若手教師のための 英語授業70のツボ

国立大学の附属小学校・中学校に長く勤務し、指導と研究を重ねてきた著者が、若手教師に向けて英語の授業づくりのツボを紹介する。豊富な指導の実践例に加え、それを支える理論的な背景をわかりやすく解説。

  • 後藤信義
  • 2015年 5月 1日 発行
  • 定価 2,640円(本体2,400円+税10%)
  • A5  224頁  ISBNコード 978-4-385-36560-2

著者紹介

後藤 信義 (ごとう のぶよし)

1951 年,岐阜に生まれる。岐阜大学英文科卒業,兵庫教育大学大学院修了。 岐阜県公立中学校及び岐阜大学附属中学校等に勤務。その後,英語指導主事, 教頭,公立小学校長,県教育委員会の教育主管,課長を歴任。岐阜大学附属 小,附属中学校の副校長を経て,現在,岐阜大学教育学部教職大学院特任教 授。岐阜県小・中学校英語研究会元会長。『英語授業実例事典Ⅰ,Ⅱ』(大修 館書店)『英語科言語活動』(教育出版)『これからの小学校英語教育の発展』 (アプリコット)等に分担執筆多数。 趣味は,陸上競技(アジアマスターズ陸上2014 走幅跳M60 第7 位)。仏像 愛好家でもある。

目次

はじめに

●英語教育
01 言語を学ぶとは
02 英語を学ぶとは
03 国際社会を生きる人材の育成

●小学校英語
04 これからの小学校英語
05 小・中学校のシラバスの相違点
06 小・中学校の連携の前提
07 小・中学校の指導の相違点
08 学習指導要領の背景となる理論
09 「外国語活動」と「教科としての英語」の区別

●語彙指導
10 コミュニケーションを志向した語彙指導
11 ことばの文化性を生かした色の学習
12 チャンクで習得する
13 チャンクで活用する
14 表現力を高める語彙指導

●文法指導
15 文生成を意図した小学校の外国語活動
16 文の機能の導入
17 無生物主語に慣れる
18 機械的な練習から脱した文法指導
19 五感の動詞で感情表現を豊かに
20 現在完了形(完了)の指導
21 誤答を表現活動につなげる後置修飾の指導
22 コミュニカティブな関係代名詞の指導

●音声指導/文字指導
23 音声指導から文字指導へ
24 ローマ字からはじめる文字指導
25 フォニックスを取り入れた発音と綴りの指導

●言語活動 基礎編
26 情報格差を活用したコミュニケーション活動
27 訳を超えた内容理解の手段
28 教科書の内容を膨らませる指導
29 類推して読む指導
30 理解能力を育てる「通訳活動」
31 会話読みで表現力を高める
32 オリジナル辞書で自己表現力を高める
33 3~4 行の文章で表現する
34 個に応じた「書くこと」の指導
35 まとまりのある文章を「書く」指導
36 「書くこと」の考え方

●言語活動 応用編
37 カレーライスのつくり方
38 「おおきなかぶ」の指導
39 英語劇の指導
40 英語の詩や短い手紙を書いて創造性を磨く
41 説明書を作る
42 自己表現としての英字新聞づくり
43 ディベートのテーマを決める
44 ディベートの指導
45 スピーチコンテストの指導

●指導改善
46 Communicative level の指導を目指す
47 言語に含まれる文化性の指導
48 算数を英語で表現する活動
49 伝統文化を発信する活動の意味
50 Total Physical Response(TPR)を活用した授業
51 スクランブル活動で授業を充実させる
52 帯活動の工夫
53 英語教育におけるジャンル別指導
54 音楽を流しながらの外国語活動
55 言語活動のレベルを意識した授業
56 授業を理論的・分析的に省察する
57 質問と発問の使い分け
58 T-P 対話からP-T 対話へ
59 S-T 分析を活用した授業改善

●評価
60 コミュニケーションへの関心・意欲・態度の評価
61 パフォーマンス課題と評価
62 Cloze test の活用
63 C-Test を取り入れた授業

●その他
64 CAN-DO リストの作成
65 協同学習の必要性
66 「英語で授業」の実践
67 単元構想図の作成
68 他教科と外国語活動の相違
69 入試を視野に入れた授業改善
70 脳科学の知見を英語教育へ

あとがき

はじめに

How old are you? I’m eleven years old.
 これは,小学校の外国語活動や中学校1 年生で学習することで,年齢を尋ねる表現としてhow old を覚えている。
 以前,この年齢のたずね方を教えた後,「学校の創立」や「新幹線がいつ開通したか」といったことも“How old ~ ?” で表現できることを教えたことがある。しばらくして,生徒が家族の写真をペアに見せながら家族紹介をしていると,パートナーの生徒が,次のような質問をするのである。
 How old is this picture? Your mother looks very young.
 これには,大変驚いた。生徒は,教師の予想を乗り越えたHow old~ ? の使い方をしているのである。我々教師の発想では,When was thispicture taken? というような英語を使うところだが,how old を実にうまく使い表現しているのである。生徒の柔軟性や創造性に「子どもはすごい」と思わず叫んでしまった。
 小学校の5,6 年生に外国語活動の授業が導入された。文部科学省発行の『Hi, friends!』を活用した授業実践や学校独自のシラバスでの授業実践が行われている。そのことを受け,小中連携の問題や評価の問題が注目されている。さらに,小学校から高校まで「児童・生徒にコミュニケーション能力を育成する」という基本的な理念のもとに,それぞれの段階での指導の充実が求められている。
 長年,英語教育に携わってきた教師として,今の英語の授業を眺めていると,すばらしい実践がある一方で教材研究の仕方,授業の仕組み方,slow learner との能力差への配慮,グループ活動のさせ方など課題も目につく。また,実践の背景となる理論をもう少し知っていれば多様で柔軟な授業展開ができるのに残念であると思うこともしばしばである。
 また,中学校段階ではコミュニケーション能力は表現(話すこと,書くこと)と理解(聞くこと,読むこと)の4 技能の調和のとれた統合的な能力であるのに,口頭での能力に傾斜しすぎたり,語彙,音韻,統語規則,意味の基礎的・基本的な力が軽視され,学力差が生じたりしている。
 課題が山積であるが,毎日の授業で悪戦苦闘している先生方に筆者の実践に基づくヒントを理解していただき,新たな実践を生み出すきっかけになって欲しいという思いで執筆した。
 本書は,小・中学校での実践を踏まえ,岐阜県教育委員会の英語指導主事として,また,管理職となってからは助言者として,様々な質問や課題に応えてきたものを文章化したものである。したがって,それぞれの課題に対する回答には長短があると同時に,課題間の整合性や一貫性はないことは理解していただきたい。なお,一部分は英語授業実例事典I,II(大修館書店)に掲載したものに加筆した。また,文部科学省の科学研究費補助金奨励研究B を参考に執筆した内容も含まれる。
 若手教員への指導の考え方や指導方法が中心であるが,ベテランの先生方にも経験知と理論知を統合した,実践知を提供できるものになったのではないかと思う。また,言語や英語教育に関心がある読者であれば,理解しやすい内容であると確信している。
 事例は基本的に小学校の外国語活動,中学校の英語科の活動であり,平易な文例であるため,英語が専門でない先生方にも充分理解していただける内容である。さらに,「母と子ども」という教育雑誌に掲載したものに加筆し,言語や文化についての記述も付加したので保護者の方々にも興味をもって読んでいただけるものと思う。
 この本の出版は岐阜県英語教育研究会や自主研究会のメンバー,長年勤務した岐阜大学附属中学校の同僚や生徒にお世話になったお礼の意味もある。心よりお礼を申し上げたい。
 最後に,刊行に際して,三省堂編集部の堀川真由美氏には本当にお世話になった。心から感謝申し上げる。

平成27 年 春  著者

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